2014年12月号

地方創生 2つの輪

地場産業をプロデュース 「売る」ために情報もデザイン

江副直樹(ブンボ代表)

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総合プロデューサーとして参画した「九州ちくご元気計画」など、数々の地域活性化のプロジェクトを手掛け、グッドデザイン賞など多数の賞を受賞。江副氏は、商品開発から広報・マーケティングまでを見直し、地域の活性化につなげる。

江副氏がプロデュースした、のこぎり付き弁当「日田きこりめし」。大分県日田市を中心とした林業の衰退に際し、林業への関心の喚起と、売上げの一部を山の手入れの費用に充てるために開発された。グッドデザイン賞、ADC賞を受賞

商品の企画・開発など始まりの段階から、広報・営業・マーケティングまでを手掛ける事業プロデューサー・江副直樹氏。江副氏は数多くの地域資源、特産品のプロデュースを手掛け、その成果は「グッドデザイン賞」、「ADC賞」など華々しい賞を受けている。

埋もれた地域資源を再構築

 

江副氏は、もともとはコピーライターだった。商品の良さを発信する仕事だが、「だんだん、商品自体をこうすればもっと売れるのに...と思うようになったんです」と語る。商品開発の段階、つまり「ゼロ」から関わりたい。それには開発の全体統括をするプロデューサーになるしかない。そして、「事業プロデューサー」の看板を掲げるようになった。江副氏、40歳の決意である。

江副直樹 ブンボ 代表

江副氏は現在、大分県日田市在住。以前は宝珠山村(現東峰村)という、福岡県の山間地に住んでいた。

 

「地域にはすばらしい専門技術があります。たとえば九州には、工場の海外進出が加速する以前、各地に縫製工場があった。しっかりした縫製技術があるのに、それが活用されていない。誰かが、こうした散在する技術を再構築し、広げていかなければと思い、地域のものづくりを支援しています」

販売のために情報もデザイン

 

では、特産品開発のために足りないものは何か。江副氏は、こう答える。

 

「デザインですね」

 

それを如実に示すのが、江副氏がプロデューサーとして初めて関わった佐賀県の建具活性化事業だ。

 

「建具は、建築の中で一番繊細な技術が必要とされます。そこで、プロダクトデザイナーと組んで家具をデザインしました」

 

消費者にとって心地いい家具は、必ずしも高度な技術を要しない。完成したデザインを見た職人たちは、「こんなに簡単なものでいいのか」と驚いたという。その後の戦略も江副氏らしい。

 

「メディアに取り上げられ、話題になることを目指しました」

 

この時はNHK佐賀の番組に取り上げてもらうことに成功した。商品のデザインとともに、情報のデザインも重要だと江副氏は言う。

 

「ウェブサイトやパンフレットをどうつくるかは大切。そしてメディアに取り上げられることで、情報が無料で拡散していく話題づくり、口コミづくりなど、戦略的な発信も必要です」

 

江副氏が次に手がけたのは、漆喰に熱を加えず圧力をかけて固めた「ライミックス」という建材だった。今でこそ、海外でも多くの引き合いがある商品だが、江副氏が関わったころは見向きもされていなかった。江副氏は、営業戦略の根本から見直しを図った。

 

「相談を受けた時、この商品を建材卸業者に売ろうとしていた。でも、売り先が違う。消費者は、できあがったものを見て、『ステキだ』と思う。家を造り建材を選ぶのは建築家。建築デザイナーに売ろう、と提案しました」

 

東京ビッグサイトでデザイナーを意識したブースを設置し、行列ができるほどの盛況に導くことに成功した。

「健全なえこひいき」で活性化

「九州ちくご元気計画」で行われた勉強会の風景。勉強会には常にその道の一流講師を招聘。商品に合わせてさまざまなデザイナーを起用し、数多くの売れる商品を生み出した

そして、「江副氏=地域づくりの達人」という名声を大きく高めた事業の一つが、「九州ちくご元気計画」である。厚生労働省の地域雇用創造推進事業で、2009年から進められてきた。

 

「この事業では、研究会という形でたくさんの商品が売れるための勉強会を続けました」

 

「九州ちくご元気計画」では、多いときは実に100もの「研究会」が開催された。内容は、マネジメント、デザイン、農業実務、ブログなどさまざまな場面で活用できる10の勉強会に加え、業種別のスキルアップ研修も実施した。いずれも講師陣は、その道の第一級のプロに依頼。中には有名店との取引が実現した商品も複数生まれ、着々と「売れる」ものが育ってきた。

 

「地域活性化にとって、最初に大切なのは、地域という『面』ではなく、意欲のある個々の事業者であり、その個々の商品。つまり『点』です。意欲のある『点』を支援して初めて地域は面として活性化します」

 

江副氏はこれを「健全なえこひいき」と呼ぶ。これからの地方創生に必要なのは、本当に意欲ある人とその商品を見いだし、個別に支援することなのだ。

 

営業力を強化し、強みを訴求

特産品の活性化に向けた課題は、営業力・マーケティング力にある。誰に、どのように売るのかをはっきりさせることが大切だ。

 

また、各地が、それぞれの資源を活かして専門の食品・食材に特化していくことも必要だ。たとえば、ネギが地元産品だったら、焼鳥店など特定の分野にターゲットを絞り、研究にも力を入れて、その強みを徹底して訴求していく。さらに、地域経済の振興のためには、商店街のあり方を、地元消費に対応した新しい市場(いちば)に考えていくことも考えられるだろう。

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

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