2014年12月号

地方創生 2つの輪

地方創生・実現に向けた提言 「仕事創造と観光創造」が重要に

東英弥(事業構想大学院大学理事長)

4
​ ​ ​

安倍内閣は今国会を「地方創生国会」と位置付け、地域から日本の活性化に挑む。開学当初から、地域の担い手の育成と地域活性に取り組む事業構想大学院大学・東英弥理事長が考える、政府の方針を実現するためのアイデアとコンテンツとは。

地域政策の問題点を整理する

 

――東理事長は、マーケティングコミュニケーション、地域等も含むブランドの研究者として、また地域活性学会理事として、かねてから地域の課題に向き合ってきました。「地方創生」の早期実現には、何が必要でしょうか。

東英弥 事業構想大学院大学理事長

まずは、地方創生に関して、地域の抱える問題の根本をとらえることが大切です。施策は、すぐ行うべきことと、時間をかけて行うべきことに分かれます。その中で、すぐ行うべきことの一つが、地域に人がいないことに対する解決策です。

人口減少、すなわち若者の都市部への流出による将来問題という側面に焦点が当たっていますが、現時点では、地域に長くお住まいの高齢者がいて、中高年をはじめ、健康で働ける人がいることが大切です。

しかし、過疎の村は高齢者中心の人口構成で、そこには介護の問題と仕事の問題が起きています。高齢者と介護、高齢者と仕事について、地域に即した対応策を講じることが重要だと考えます。

農業、漁業など一次産業を中心とする高齢者の仕事を、今後継承して成立させていくのであれば、収入や労働のシステムの検討を行い、もし若い人材が担うのであれば、キャリアプランを描けるようにする必要があります。現在すでに様々な対策や取り組みが各地にありますが、あと一歩、あと一段のアイデアを出して動くことが、今まさに待たれていると感じます。

「地方創生 2つの輪」の各記事で、東理事長のアイデアをコラムで紹介 ©H.AZUMA

「趣味の街」構想、交通の無料化

――政府は特色ある地域づくりを標榜し、全国の自治体から要望や企画を募る体制だと聞きます。

地域の中でどこの活性化をするか。

考えの整理が必要だと思います。都市の規模や性格は多様ですし、あらゆる基軸で分析することも大切です。地方の大都市と過疎地は別問題であり、異なる対策になります。現在においては、地方都市およびその周辺都市から手がけるべきではないかと思います。

これらの地域に対してすぐ手を打つべきは、人を動かすことです。人が動くには、動きたくなる意欲をいかに出してもらうかを考えなくてはいけません。

その一つとして私が考えるアイデアは、「趣味の街」構想です。誰でも好きなことには夢中になれます。全国の市町村の独自の魅力や知財、地域の風土や地形、伝統を活かして、鉄道の街、陶芸の街、テニスの街、読書の街、アニメの街など、無限にコンセプトをつくることができます。

作家のファンは多数いますから、「司馬遼太郎が好きな人が集まる趣味の街」をつくり、それを街の個性として打ち出していくことも考えられます。

美しい海岸線を誇る街も、昨今では過疎化が進み、治安の問題も生じています。そのような街を「武道の街」として、力強い人たちが海岸線の道を走ったり、年中、稽古や試合をしていたら、安全で活気が出ることは間違いありません。

例えば、神奈川県川崎市は漫画家の藤子・F・不二雄氏が長年住み続けた地ですが、2011年にオープンした「藤子・F・不二雄ミュージアム」は、年間50万人が訪れる人気施設となっています。

川崎市の「藤子・F・不二雄ミュージアム」には、年間50万人が訪れる。特色のあるまちづくりを行うことで、数多くの人を呼び込むことができる Photo by Aimaimyi,Stealth3327

 

B級グルメや、ゆるキャラも活性化にはとても貢献しましたが、定期的な人の訪問や定着に結びつけるのは難しいと感じています。各市町村が持っている地域の資源を活用し、自分の地域に合致する「趣味の街」コンセプトを提案する。今、必要なのは、移住者に対して助成金を出す施策のみならず、このような楽しいアイデアや工夫なのです。

もう一つは、公共交通の戦略的無料化構想です。人はじっとしているよりも、知らない土地、まだ見ぬ場所、思い出の地域を訪れるために動くほうが楽しく、幸せだと思います。人を動かすには交通手段が要りますが、決まって動いている鉄道や航空など公共交通の空席を無料にして、それを活用することができれば、経済的理由だけで移動をしていない若者層が地域と出会う機会になります。

私は仕事でもプライベートでも頻繁に地域に行きますが、座席が空いたままの特急などがたくさんあります。

ITソリューションを活用し、空席の場合は無料で乗れるシステムを開発すれば、乗客が増え、人の移動を促すことができます。

まずは地域を知る、見る、体験することから始まり、その先に定着してもらうには、生活が首都圏より良く、自分に適した仕事があり、そこに暮らしたいと思う要素の提供が必要です。ここに対応するのはどのような層であるかを見極めて手を打つことが大事ですが、流れをつくれば確実に動く層がいると思われます。

Photo by Aimaimyi,Stealth3327

仕事が増えれば人は増える

――今回、地方創生を実現するための具体策を提言されるとのことですが。

以上のような背景をふまえ、地域創生2つの輪として、(1)仕事創造と(2)観光創造を提案します。

先ほどの「趣味の街」に暮らせば、好きなことに囲まれながらも、1日のうちの数時間は地域のために必要な介護や環境の仕事をしてもよい、と思う人が出てくるのではないでしょうか。首都圏の企業を分散させて、新しいかたちの「企業城下町」をつくる構想も考えられます。

仕事創造には、地域の一翼を担う新しい事業構想が不可欠です。主要産物の活性化、出身人材の活用、税制優遇と規制緩和、地場ビジネスコンテスト等の仕掛けなどを立体的に考える必要があります。

観光創造においては、誰を呼ぶのかという観点から、国内と国外に分けられます。国内からの集客・観光で有効なのは、まさしく趣味の提案です。そして、来訪者には地域の窓口としてのきちんとした対応が期待されます。観光案内所から始まり、タクシー、商店街などすべてをまとめて考えないと根本的な解決はできません。

また、地域との接点をつくる面から、例えば先祖三代前までさかのぼり、縁のある人には土地を優先的に取得できるというルールをつくってはどうでしょうか。そうすれば1年に何日かは滞在することになります。

国外に向けては、美しい日本の訴求です。明治時代に日本を訪れた外国人は、日本人の礼節や親切さ、清潔な日本の環境に感銘を受けたといいます。現在も、成田空港等で外国人にインタビューをする映像を見ていると、皆さんが「日本は礼儀正しく親切で、安全できれい」だと答えています。中国・韓国の方も、政治とは別問題で、観光地として日本は魅力があり、好きだと話しています。一部かもしれませんが、これが世論であろうと感じます。

大学を分散し、地方に「知の集積」

――理事長のアイデアを受けて、地域の方も動くことができそうです。

構想は、こうなりたいという理想を掲げることで、多くの人が参加をして共につくっていく点に意味があると考えます。その後に、問題点が露呈されることになります。地域のインフラとしての医療、安全、教育の問題など、これらを一緒に話すと混乱します。

地元が受け入れないとそこで止まってしまいますから、この先は一層のコミュニケーションが必要になってきます。これらの問題を考えていくと、大学の分散は重要です。若者が首都圏をはじめとした大都市に出て行ってしまうのは、学歴のあり方の問題があり、有名大学に行けば一生安泰で生活できるとなっていますが、実際は違います。生きていくために本当に役立つことを教えていないケースも見受けられますし、ブランド化のもとでおかしくなっているケースもあります。内容やレベルがわからず、遠方だと見えないことを可能性に置き換え、安心して行かせてしまっている保護者もいるのではないでしょうか。

これらを解決するには、大学で教える内容を、スキルや取組姿勢を重視したものにするなど、実務と学問のつながりを冷静かつ丁寧に見極めて対応していかなければなりません。特に若者層に対しては最優先課題だと考えます。

――今後、どのような展開をお考えですか。

事業構想大学院大学は今年から、土地の知の拠点である日本各地の大学と提携をしたり、プロジェクト研究を開始しています。地域構想に必要な人材の派遣やアイデア・ノウハウ提供、場の設定をはじめ、日本中に共創の舞台をつくり、ネットワーク化をしていこうとしています。すべての分野において日本のビジョンを先に考えることが大切です。日本の未来に対する仕事は、農業や漁業の重要性をふまえ、食の自給を考え、産業として考えていくことです。

政府の構想と方針が、県や市町村の方針に落とし込まれ、実現していくように、また優秀で誠実な官庁公務員の方たちが活躍できるような流れをつくり出すことが有効だと感じます。行政、官庁の方たちが民間との間をもち、見える構想をつくり、その構想に基づいて共創していく。今こそ知を集積し、課題を整理しながら時間軸と数値目標を掲げ、それに基づいて動けば、地方創生の新しい流れが大きなものになっていくはずです。

私自身も近いところから着手しますが、事業構想大学院大学では、特色ある地域をつくる担い手の方々と連携して、本気の取り組みで成果を出していきたいと願っています。

東 英弥(あずま ひでや)
事業構想大学院大学理事長

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

4
​ ​ ​

バックナンバー

社風が変わる、イノベーターが育つ

地方創生・イノベーションにつながるアイデアと思考に注目!

志高い、ビジネスパーソン・行政・NPO職員・起業家が理想の事業を構想し、それを実現していくのに役立つ情報を提供する、実践的メディア。

メルマガで記事を受け取る

メルマガ会員限定で、
ピックアップしたオンライン記事を
毎日お届けします。

メルマガの設定・解除はいつでも簡単

事業構想セミナー・説明会

バックナンバー検索

売り切れ続出注目のバックナンバーはこちら


最新情報をチェック。

会員になると 最新「事業構想」が読み放題。さらに

会員の特典をもっとみる