イタイイタイ病 公害地域の再生

かつて有害物質に汚染された地域は、現在、どうなっているのか。900ヘクタールの泥を入れ替える作業を30年以上も続け、すでに土壌復元事業のメイン工事は終了。企業誘致が進み、賑わいを取り戻している。

多くの車や人が行き来する婦中大橋。この橋の開通により空港や市内へのアクセスが改善し、企業誘致につながった

かつて富山県婦中町(現・富山市)において、骨がもろくなり、身体のあちこちが骨折する病気が多発した。患者が「痛い、痛い」と叫ぶことから、「イタイイタイ病」と名付けられたこの公害病は、四大公害の一つに数えられる。

原因は、岐阜県神岡町にある企業がカドミウムを含んだ排水を神通川に流したことによる水質・土壌汚染であり、厚生省(現・厚生労働省)が公害認定をしたのは1968年のこと。72年、患者・遺族が裁判で全面勝訴をおさめて以来、婦中町は再生に取り組んできた。四大公害の中で最も再生が進んでいる地域である。

地権者ととことん話し合う

カドミウムは、そこにある限り、濃度が下がることはない。婦中町では、人体への侵入防止を最大の目的に、農地として使う場所を特定して復元し、農地として使わない場所は転用するといった計画書をまとめた。

清水昌昭 元・婦中総合行政センター所長

「農地の転用には全地権者の合意が必要ですが、地権者は被害者です。健康被害を抱えながらも、主体的に財産処理をしなければ前には進めません。地権者ととことん話し合うしか手立てはなく、毎晩集まっては利害調整を進めていきました」

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