2014年4月号

地域未来構想 宮城県

防災・減災関連企業が集積

月刊事業構想 編集部

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震災で多くの産業が被災した宮城。災害の被害をできる限り少なくするために、ハード、ソフトの両面からの対策が行われるのと同時に、防災・減災産業の集積・育成にも力を入れている。

広域防災拠点の整備方針が打ち出された、宮城野原公園総合運動場

地の利を活かす広域防災拠点

東日本大震災では、早期に被災地に入った警察や消防の支援部隊が、情報不足で集結場所が定まらず、効率的な人員投下が難しかった。救援物資でも、県内には大規模な物資集積拠点がなく、全国から送られた大量の救援物資の取扱いが滞り、適切な集配ができなかった。県民を災害から守るための活動や物資の輸送中継など、県全域をカバーできる防災の中核拠点を整備する必要がある。県は、今年2月に「広域防災拠点の基本構想・計画」を公表した。仙台市宮城野原地区の宮城野原公園総合運動場一帯の合計約43ヘクタールの敷地に、広域防災拠点を整備する方針だ。

なぜここが計画地に選ばれたのか。そもそも広域防災拠点構想は、宮城野原地区にあるJR貨物の仙台貨物ターミナル駅(約17ヘクタール)の移転が前提にある。ここと隣接する宮城野原公園総合運動場(約21ヘクタール)は広域避難場所に指定されており、また県内唯一の基幹災害拠点病院である仙台医療センターが、宮城野原地区に2017年に移転新築することが決定した。

宮城野原地区は県のほぼ中央にあり、県庁や仙台駅、空港、港湾へのアクセス性に優れ、自衛隊駐屯地とも近い。この地の利を活かせば、救助・医療・輸送といった災害発生時に求められる機能を、県全域に速やかに提供することができる。広域防災拠点には、消防や医療チームなどの一時集結場所、災害支援部隊のベースキャンプ用地、緊急医療用のヘリポート、災害医療活動スペース、防災センターなどを整備する方針だ。

防災啓発を目的に宮城県が設置をしている津波浸水状況表示板

対処すべき災害としては地震、津波、風水害・火山、原子力の4分野を想定する。地域防災拠点では持つことが難しい(1)支援部隊などの一時集結、(2)大量物資の中継・配分、が主な役割となる。地震や津波などの広域被災から、ゲリラ豪雨などの局地被災まで、状況に応じてさまざまな機能を果たしていく。仙台貨物ターミナル駅の移転・撤去と用地引き渡しのあと、3-4年かけて拠点を整備する予定だ。村井嘉浩知事は「2020年までに整備を完了したい」と述べている。

減災技術を集積
多賀城市減災リサーチパーク構想

県内の市町村も独自の取り組みを始めている。

市域の3分の1が水没した多賀城市は、2013年10月に「減災都市戦略」を発表。戦略の一つとして掲げているのが、市内で減災技術や製品の集積・創出を目指す「減災リサーチパーク構想」だ。

中核となるのは、ソニー仙台テクノロジーセンター内の遊休施設を活用した、産学連携インキュベーション施設「みやぎ復興パーク」。地元大手企業や大学、被災企業のほか東京からパークに進出する企業も出始め、多種多様な技術とアイデアの宝庫となっている。ここに減災技術が集積する仕組みを作るのが多賀城市の構想だ。

ロボットや植物工場など、多賀城市は減災につながる技術を集積・育成する(みやぎ復興パーク内)

減災技術とは、例えば津波の威力を減らす土木技術、被災者の救援や探索に活用できるロボット技術、災害への意識を高める教育ツール、堅牢な情報通信システム、生存に不可欠な非常食(農林水産物)や医薬・漢方薬など。非常に幅広い技術や製品が関わる分野で、企業にとってチャンスが大きな市場と言える。

多賀城市は、パーク入居費用の助成や復興特区法を活用した課税特例の適用、共同研究の促進、産学による支援といったインセンティブで、減災関連企業を募っていく。仙台塩釜港に隣接し、工業の街として発展してきた多賀城市は、震災で多くの工場が被災し、工場地帯の事業所数は震災前から15%以上減っている。減災技術を新しい市の活力に育てていく。

多賀城市だけにとどまらず、宮城県内では防災・減災に関連する企業の振興と集積を目指して、さまざまな取り組みが始まっている。東北が防災技術のメッカと言われる日は、そう遠くないのかもしれない。

津波対策、ハードとソフトで

村井嘉浩知事が「最優先課題」と強調する、津波への備え。震災では県内で1万人以上が津波によって亡くなった。この悲劇を繰り返さないためには、高台移転や海岸堤防などのインフラ整備に加えて、避難誘導などのソフト面の仕組みを見直すことも大切だ。

県は、沿岸市町や各地域(自主防災組織や町内会単位等)が津波避難計画を作る際の指針となる、「宮城県津波対策ガイドライン」の見直し作業を行ってきた。まず2012年3月には、今後の復興まちづくりで、避難施設や避難路、誘導サインなどのハード面の整備に参考となるようにガイドラインを修正、「津波避難のための施設整備指針」にまとめた。

一方、ソフト面の対策強化も必要だ。2013年には、住民などが津波襲来時に円滑な避難ができるよう、津波避難計画の策定や津波防災意識の啓発、避難訓練の実施など、ソフト面からの見直しが行われた。

見直し案は、東日本大震災を教訓に、住民の避難誘導にあたる消防団員や自治体職員の安全確保や、最大クラスの津波を想定した避難計画の策定、お年寄りや外国人などの要援護者の避難計画など、新しい観点を盛り込んだ。一方で、現行のガイドラインでは否定的だった自動車による避難活動について、地域の実情に応じては容認するなど、より現実的・弾力的な視点を取り入れている。

今年1月には県津波対策連絡協議会で見直し案が承認された。県で指針としてとりまとめ、14年度以降、沿岸市町村などに活用してもらう。

津波被害者ゼロを目指して、自治体や住民の挑戦は続く。

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

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