成否のカギは「支援の本気度」
一口に「社内ベンチャー」といっても、企業によって取り組み方は異なる。始動時や評価において何が重要なのか。社内ベンチャー研究の第一人者、上智大学経済学部長の山田幸三教授に話を聞いた。
社内ベンチャーを始める前に重要なのは、「何のためにその事業をやるのか」というミッションをはっきりさせることです。
社内で起業する場合は、資金、人材、顧客の情報や技術があります。そのメリットを活かして事業の新しい柱を作るのか、組織の技術・技能を試すのか、組織を活性化するのか、あるいは人員の再配置という人の受け皿づくりなのか。明確なミッションなく始めると、社内ベンチャーの位置づけが曖昧になってしまい、失敗の要因になるでしょう。
問われる支援体制
社内ベンチャーには、新規事業開発部など専門の担当部署がアイデアを公募して応募者の中から選抜する場合と、トップが指名してチームを作るトップ主導型があります。
どちらの場合でも、企業本体における支援と管理の責任主体をはっきりさせなくてはいけません。日本の会社組織には「本流」、「傍流」という考え方があります。社内ベンチャーは「傍流」に見られがちなので、メンバーも「傍流」扱いされかねません。
また、「傍流」に多くの予算がつけば、「本流」の社員から敵視される可能性もあります。社内ベンチャーを始動させる前に、誰が、あるいはどの部署がフォローし、責任を持つのか、バックアップする組織や人を決めなくてはいけません。
かつてワコールは、創業者塚本幸一会長の発案により、社内ベンチャー的な位置付けで「スタディオファイブ」という別働隊を作りました。この時、「何をやっても良い。ただしアンチ・ワコールでやってくれ。ワコールの社員をアッと驚かせて欲しい」という指示を出したそうです。
そして、ワコールの本社は京都にあるのですが、スタディオファイブの拠点を東京の新宿に置きました。本社では傍流に見られるので、本社から離すことで独自性を守って新機軸を出しやすいようにしたのです。1981年に8人でスタートしたスタディオファイブはヒット商品を生み出し、4年目で売上げ15億円を達成し、期待に応えました。
スタディオファイブは成功事例ですが、私が調査した結果では、新規事業の成功確率は10個のうち1つか2つ。
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