高知の魚に新しい付加価値を

鮮度落ちの速い魚である「鰹」の鮮度を保ったまま、よりおいしい状態で全国に届けようと挑戦を続ける町がある。「鰹乃国」と呼ばれる小さな港町、中土佐町久礼だ。

高知県を代表する郷土料理といえば「鰹のタタキ」。その「鰹」は鮮度落ちが速い魚として知られている。高知へ直接訪れて食べるおいしさに限りなく近づける方法を模索し、そこに町の主産業である漁業の活路を見出そうと奮闘している人がいる。「中土佐町地域振興公社」の中越竜夫さんだ。

高知が生んだ革命的スラリーアイス

スラリーアイス(カツオ)とカツオのタタキ(料理盛り付け)

中越さんの肩書きは「スラリーアイス事業部事務局長」。この「スラリーアイス」とは、微少な氷粒子と塩水などが混ざり合った、非常に細かく流動性のある氷のことで、「魚を急速冷却できる」「魚体が傷つかない」といった利点がある。しかし、「以前のスラリーアイスは、塩分濃度が高すぎて鰹が凍ってしまっていたんです」と中越さんは言う。

その課題を解消したのが、高知工科大学、県東部の室戸市にある「株式会社 泉井鐵工所」、大阪市にある「日新興業株式会社」が共同開発した新しいスラリーアイス製氷機だ。塩分濃度1%の塩水からも製氷が可能となったことで、魚が凍らない「-1℃」という温度を生み出すことに成功。実用化の話を聞きつけた中土佐町の池田洋光町長はいち早く新しいスラリーアイス製氷装置の導入を決め、2009年中土佐町地域振興公社(現在の中土佐町地域振興公社)内に「スラリーアイス事業部」を立ち上げた。同時に中越さんの挑戦もスタートした。

中土佐町地域振興公社
スラリーアイス事業部 事務局長 中越竜夫さん

「中土佐町の漁師は高齢化が進んでおり、他の漁港と比べると規模も小さく漁獲量も限られている。そんな状況の中、町の漁業の未来を拓いていくには、魚の単価を上げる、つまり付加価値を付けることでより高く売っていく仕組みが必要です。この新しいスラリーアイスを活用し、町を訪れて食べた時と同じぐらいのおいしさをお届けすることで付加価値が高まり、漁業者へ資することに繋がっていくんです」

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