アートの「哲学」でまちづくり

大道芸、ジャズ、クラシックなど、さまざまなジャンルのアート・パフォーマンスが、熊本市の中心市街地で繰り広げられる。市民・表現者・行政が一体となり、中心市街地を舞台に、多様で上質な文化を発信するプロジェクトが進んでいる。

2002年10月19日、熊本市の中心市街地であるアーケード街、およそ1.6㎞にわたってパーカッション、ジャンベといった楽器が響き始め、前衛舞踏家が舞い始めた。街をアートで盛り上げようというユニークな試み「ストリート・アートプレックス」(以下、S.A.P.)の、それが始まりだった。以来11年、多様なジャンルにおける"創造者"たちのパフォーマンスは今も続く。

集客だけではない「豊かさ」

S.A.P.が始まった2002年ごろ、相次ぐ郊外大型店舗の出店により中心市街地の落ち込みが懸念されていた。

葉山耕司
ストリート・アートプレックス熊本 実行委員長

S.A.P.を構想したのは、熊本市の中心的アーケード街である「下しもとおり通」で、下通繁栄会青年部長を務めていた葉山耕司氏(現ストリート・アートプレックス熊本実行委員長)だ。

「1週間、アーケードでアート活動をしよう、と提案しました」

そもそも、なぜ"アート"だったのか。「熊本市の顔として『文化の集積』という側面を見せたかったんです」と葉山氏は語る。

「単なる買い物客を増やしただけでは、本当の集客、本当の中心市街地活性化とはいえません。文化の側面を見せることで、『熊本って、いいね!』と思わせることが大切です。『いいね!』とは、つまり『住みたい!』と思わせること。アートには、モノだけではないプラスアルファの豊かさがあります。そこにみんな惹かれて、アートが熊本の魅力と受け取ってくれるのではと期待しました」

「アート活動をしよう」というのは簡単だが、実際には葉山氏ら実行委員のメンバーは開催日の半年前から、「具体的に何をするか? どんなコンセプトでやるのか?」を夜中まで議論し続けた。名称にしても、「初めは『ストリートアートフェスティバル』というのはどうかと意見が出ました。でも、これでは普通過ぎる。いろんなアートの複合体にしたい。『アートコンプレックス』は? いや、日本人は『コンプレックス】に、いいイメージを持たない。では、『アートプレックス』でいこう、と。造語です」。

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