営業情報を「使えるデータ」に サンロードが進めるデジタル変革

(※本記事は「協働日本」に2026年7月30日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

株式会社サンロード 鈴木友広氏 システム導入を、組織変革の起点に。「全員参加」のデジタル経営へ

協働日本で生まれた協働事例を紹介する記事コラム「STORY」。

本連載では、協働日本とプロジェクトに取り組むパートナー企業の方をお招きし、どのように意思決定し、プロジェクトを推進しているのかをインタビューを通じて伺っていきます。

記事サマリー

奈良県橿原市で、食品工場向けの衛生キャップやフィルターを企画・開発・製造する株式会社サンロードが抱えていたのは、営業日報と顧客情報が分散し、展示会で得た700枚を超える名刺も手作業で入力しているという課題でした。協働プロとともに営業支援システムや名刺管理・メール配信の仕組みを整えたことで、顧客情報を横断的に確認し、潜在顧客への営業活動につなげられる環境を構築。新規売上も前年から10%を超えて伸びています。

さらに、取り組みを担った鈴木友広さんは、2026年4月に新設されたDX推進室の室長に就任。変わったのは業務の進め方だけではありません。社員の中にも、デジタルを使って自ら仕事を変えていこうとする意識が芽生え、全社変革への土台が生まれ始めています。

この取り組みは、株式会社協働日本のAI・デジタル活用伴走支援「デジコーチ」による支援事例です。

今回は、食品工場向けの衛生キャップやフィルターを中心に、衛生対策製品の企画・開発・製造・販売を手がける株式会社サンロード DX推進室 室長の鈴木友広さんにお話を伺いました。

同社は奈良県橿原市に本社を構え、福島県いわき市、中国・青島市にも製造拠点を展開。食品への毛髪混入を防ぐ衛生キャップや、工場内へのほこり、虫、細菌、カビなどの侵入を抑えるフィルターを通じて、食品製造の現場を支えてきました。

2027年には50期を迎える同社が、次の成長に向けて掲げているのが、デジタルやAIを活用した業務と事業の変革です。その第一歩として取り組んだのが、営業情報の一元化と、展示会で生まれた顧客接点の活用でした。

しかし、システムを導入しただけで会社が変わるわけではありません。必要なのは、デジタルを使う人と、社内を動かしていく推進者の存在です。奈良県の「デジタル×経営実践」プログラムを通じて協働日本と出会い、総務部に所属しながらプロジェクトを担った鈴木さん。その後、社内に新設されたDX推進室の室長へ。協働を通じて、何が変わったのでしょうか。

営業支援システムや名刺管理の導入、その裏側で進んだ社員の意識変化、そして全社を巻き込むDXへの展望について、率直に語っていただきました。

(取材・文=郡司弘明)

製品検査

食品工場の衛生環境を支える、ものづくり企業

──本日はよろしくお願いいたします!まずは、サンロードさんの沿革と現在の事業について教えてください。

鈴木友広氏(以下、鈴木):はい、よろしくお願いします。

当社は1978年に創業し、食品工場などで使用される衛生用品の企画・開発・製造・販売を行っています。

主力製品は、食品工場で働く方が毛髪混入対策のために着用する衛生キャップと、工場内へのほこりや虫、細菌、カビなどの侵入を防ぐ衛生用フィルターです。この2つのカテゴリーが、売上の大半を占めています。奈良県橿原市に本社と工場があり、福島県いわき市にも国内工場を構えています。国内2拠点で働く従業員は約100名。海外では、中国の青島市にも製造拠点があります。

そのほか、一般のお客様向けのマスクや家庭用フィルターも展開しています。お客様が抱える衛生面の困りごとを的確に捉え、製品として形にしていくことが私たちの仕事です。

──食品工場の衛生環境を支える製品が、事業の中心なのですね。

鈴木:そうですね。特に衛生キャップとフィルターが中心です。衛生キャップの中には、電荷を保持する特徴的な生地を使い、毛髪を吸着して落下を防ぐ製品もあります。フィルターについても、外気からのほこりや虫の侵入を防ぐものや、空調を通じて広がる細菌、カビなどを捕集するものを扱っています。

目立つ製品ではないかもしれませんが、食品工場のクリーンな環境を守るためには欠かせない製品です。

出荷の様子

「中小企業だからこそ、取り組まなければ生き残れない」

──今回、協働日本と取り組むことになったきっかけを教えてください。

鈴木:奈良県が実施していた「デジタル×経営実践」という支援事業がきっかけです。社長が事業のチラシを入手して持ち帰り、私に申し込むようにと声をかけていただいたところから始まりました。

社長は以前から、デジタルや生成AI、DXに力を入れていかなければならないという危機感を強く持っていました。大企業であれば、デジタルを専門に扱う部署があり、知見を持った人材もいると思います。一方で、中小企業では専門部署も人材も限られている。当社も生産現場を中心とした会社で、デジタルとはどちらかといえば縁遠い環境でした。

中小企業だからといって何もしなくてもよいとは、私も思えません。デジタルやAIを活用していかなければ、今後は生き残っていけない。その危機感が、経営側にも現場にもありました。

──それまでも、デジタル化に向けた動きはあったのでしょうか。

鈴木:セミナーに参加して情報を集めることはありました。ただ、具体的な実行まで進められていたわけではありませんでした。

生成AIを新商品開発に活用したい。社内に蓄積された情報やノウハウを整理したい。議事録作成のような日常業務も効率化したい。大きなものから小さなものまで、解決したい課題はいくつもありました。とはいえ、何から着手すればよいのか、どのような手段を選ぶべきなのかが分からない・・。そんな状況でした。

──課題は見えているものの、実行までの道筋を描けていなかったのですね。例えばシステム会社ではなく、協働日本のような伴走者を求めたのはなぜでしょうか。

鈴木:システム会社に相談すると、どうしてもその会社が提供する商品を前提に話が進んでいきます。自分たちが必要なものを、十分に理解したうえで選ぶのであれば問題ありません。ただ、情報収集の段階では、提案された商品に引っ張られてしまうことがありますよね。

私たちが求めていたのは、特定の商品を売る立場ではなく、フラットな視点で課題を整理し、どのような手段が適切なのかを一緒に考えてくれる存在でした。

中小企業では、何を選べばよいのか、どの順番で取り組むべきなのかを判断する知識そのものが不足しています。ツール選定の前段階から相談できることに、協働日本との取り組みの価値を感じました。

──今回の協働プロジェクトには、どなたが参加されたのでしょうか。

鈴木:昨年度のプロジェクトでは、協働プロの横町暢洋さんを中心に伴走していただき、一緒に先山毅さんにもサポートに入っていただきました。横町さんは、大企業でエンジニアやマネジメントを経験されている方です。私自身も前職がエンジニアだったため、考え方や話の進め方に共通する部分がありました。こちらの状況を理解していただきやすく、私にとっても話がかみ合いやすい方だったと思います。

奈良県の支援事業が終了した後も協働日本との取り組みを継続しており、今年度は横町暢洋さんと、新たに黄瀬真理さんに伴走していただいています。

──昨年度の横町さんたちとのプロジェクトでは、具体的にどのような課題から着手したのでしょうか。

鈴木:一つ目は、営業日報と顧客情報の連携です。

営業業務風景

営業日報と顧客情報をつなぎ、「探せるデータ」へ

──以前の営業日報は、どのように管理されていたのでしょうか。

鈴木:以前から営業担当者は、Excelを使って日報を記入していました。ただ、日報は週ごとのファイルに分かれており、過去の情報を探すには、一つずつ開いて確認しなければなりません。

直近の出来事は把握できても、「1カ月前に、このお客様とどのような話をしていたか」を振り返るには時間がかかります。管理者にとっても、営業活動や商談の状況を横断的につかみにくい状態でした。

──日報は書かれているものの、蓄積された情報を十分に活用できていなかった、と。

鈴木:その通りです。顧客情報や商談情報を別のデータベースへ入力してもらう方法もあります。しかし、それでは日報との二重入力になり、営業担当者の負担が増えてしまいます。管理者としては情報を整理してほしい。一方、現場に新しい入力作業を増やせば、拒絶反応が起きるかもしれない。そこが難しいところでした。

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