JINGS、シスメックスの診断薬製造現場でAIによる生産計画作成を検証 熟練者の判断を業務ルールへ
現場伴走型のAI活用支援を手がける株式会社JINGSは、シスメックス株式会社の診断薬製造現場で、AIを活用した生産設備利用計画の自動作成に向けた検証を実施した。実施期間は2025年8月から2026年2月までの約半年間。
対象となったのは、「タンク回し表」と呼ばれる複数のタンク設備の利用順序を決める計画づくりだ。従来は日程計画案からタンク回し表へ約400セルを手作業で転記し、原料在庫や洗浄・採水を加味した充填順、人員といった複数の制約条件を担当者が頭の中で照合していた。立案ロジックが熟練者に依存するため、再現や継承が難しいことが課題となっていた。
JINGSでは「AIを導入する」のではなく「AIが使える業務に変えていく」ことを軸に、現場担当者の業務フローを理解したうえで判断基準やノウハウを言語化し、暗黙知を自動化が可能な「業務要件」へと変換。設備利用順序の決定条件や、複数の条件が競合する際の優先順位を整理し、ルール化できる判断と人的判断を残すべき部分を切り分けた。
検証は、シスメックスの製造現場メンバーがAI活用を主導し、判断基準の言語化に取り組む形で進められた。JINGSは現場に深く関与し、複雑な判断ロジックの整理や要件化を支援した。JINGSは課題整理から検証・実装までを一貫して支援するサービスを提供しており、熟練者の経験に依存する業務については、AIを適用する前段階の整理を重視している。
約半年の伴走を通じて、タンク回し表を作成する際の考え方が整理され、日程計画案とタンク回し表の自動生成に必要な要件が明確になった。将来的には、担当者が例外的な判断に集中できる状態を目指すという。シスメックスは今後、海外の複数の診断薬工場でも同様の課題への展開を検討する。
熟練者の経験に根ざした暗黙知を言語化し、条件と優先順位という再現できる形に整理することで、担当者個人に閉じない手順として残すことができる。JINGSはこの検証を、LLMとルールベースを組み合わせて熟練者の判断を構造化する取り組みと位置づけている。実際にシスメックスが海外工場への横展開を検討していることは、特定の作業に固有の自動化ではなく、対象を替えても応用しうる枠組みとして整理されたことを示している。
製造現場では技術やノウハウの継承が共通の課題となっている。暗黙知を言語化・可視化して業務ルールへと落とし込む今回のアプローチは、生成AIを単発のツール導入で終わらせず、現場の判断そのものを次世代の生産基盤へと引き継ぐ試みと位置づけられる。