水田政策見直しの焦点は農村維持 作山明治大教授が所得補償の必要性を提言

(※本記事は「JAcom 農業協同組合新聞」に2026年1月13日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

2026本紙新年号は「食料安全保障と農業協同組合」をテーマにした。気候危機や不安定な世界情勢のなか、食料安全保障の確立がいっそう重要となるなか、地域に根ざした農協の役割は農業振興と食料の安定供給にとってますます重要になる。本紙新年号ではこのテーマを軸に政治、行政、学識者にJAトップ層が生産現場を踏まえて聞くインタビューを特集した。作山巧明治大学教授には田中均JA松本ハイランド代表理事組合長がインタビューした。

「選別ではなく農村全体の維持へ、発想を切り替える時」と説く作山巧明治大学教授
「選別ではなく農村全体の維持へ、発想を切り替える時」と説く作山巧明治大学教授

基本法が目指した「多面的機能」

田中 「令和の米騒動」では、表面的な議論に終始しがちでしたが、農政は長いスパンで考えねばなりません。まず4半世紀前の「食料・農業・農村基本法」制定の経緯からうかがえますか。

作山 私は農水省に25年勤めました。1997~99年には基本法制定を担当しました。今ではちょっと考えられませんが、当時は首相から諮問され首相に答申して、基本法の骨格ができました。諮問したのは橋本龍太郎首相で、答申を渡したのは小渕恵三首相です。私も首相官邸に2度行きました。「食料安全保障」という言葉は当時からあったのですが、基本法に位置付けるのは説得力がないという意見が大勢でした。バブルが崩壊したといっても日本は経済大国で、1995年にWTOができ自由貿易全盛期でした。食料は海外からいくらでも買えたのです。最初の基本法には、食料安保は条文の見出しに1つ入っていただけでした。代わりに私が担当したのは「多面的機能」でした。組合長の地元もそうでしょうが、中山間地の棚田が水を涵養し下流域を守っている。それを金額評価すると7兆円になると試算し、基本理念に位置付けました。

田中 1999年の基本法は、それまでの旧法と何が違ったのでしょうか。

作山 大きな転換が意識されていました。旧基本法のテーマは農業者の所得向上でした。高度経済成長で農村から都市に出た人は工場で働いて豊かになるのに、農村は取り残されました。そこで工業と農業との格差を埋め農村を豊かにすることがめざされたのです。ところが1999年になると表面上の格差はなくなっていました。兼業化が進み、農業所得と兼業所得とを併せると農家所得は非農業者の所得を上回ったからです。ガット・ウルグアイ・ラウンド合意の発効に対応する必要もあり、新しい基本法のテーマは「国民全体の利益」になりました。その理念は食料の安定的確保と多面的機能などです。

続きは無料会員登録後、ログインしてご覧いただけます。

  • 記事本文残り67%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。