MetaのARスマートグラス「Orion」はiPhone並みの発明か 専門家が解説
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年9月27日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
MetaのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏は、毎年恒例の開発者向けイベントMeta Connect 2024で、新たな拡張現実(AR)プロトタイプのスマートグラス「Orion(オリオン)」を公開した。このプロジェクトは10年かけて開発されており、2027年まで一般市場に登場する予定はないが、現実世界とデジタル世界を融合させる新たな方法を提供するものとなる。このグラスは、目と指を使って操作し、手首に装着された神経インターフェースを通じて指でコントロールできる仕組みだ。
では、これがARウェアラブル技術やコンピューターとのインターフェースの未来にどのような影響を与えるのだろうか?バンガー大学のテクノロジー専門家であるピーター・ブッチャー氏、リール・アプ・セニス氏、パナギオティス・リツォス氏に話を聞いた。
Orionの技術的な課題は何か?
これほど高度な技術を、これほどコンパクトなデバイスに詰め込むことは、技術的に非常に難しい。ホログラフィックディスプレー技術、手と目の動きの追跡、デバイス外での処理機能、カメラ、スピーカー、マイクといった機能を持ちつつ、デバイスが美観を保ち、十分なバッテリー寿命を確保する必要がある。
Metaの最高技術責任者であるアンドリュー・ボズワース氏は、この課題の大きさを次のように表現している。「消費者向け電子機器の分野では、人類がこれまでに作り出した中で最も高度かもしれない」
光学設計も大きな課題だ。MetaのQuest 3やApple Vision Proのような複合現実ヘッドセットは、「パススルー」技術に依存している。これは、外部カメラがユーザーの周囲をリアルタイムで映し出し、デジタル要素を重ねて表示するという仕組みだ。
これに対して、Orionはホログラフィック投影を利用して、透明なレンズ越しに直接周囲を見ながら、その上に映像が投影される。この技術には多大な研究が必要だった。
他に注目すべき革新点はあるか?
複合現実ヘッドセットの没入感を左右する重要な要素の一つが視野角、つまり視野の範囲だ。これは、ヘッドセット越しにユーザーが見られる角度範囲を指す。現在、最先端のものはMagic Leap 2の70°の視野角だ。これは主にビジネス向けに設計された高価格帯のホログラフィックARグラスで、価格は3000ドル以上(約45万円)に設定されている。Magic Leap社は、GoogleやAT&T(米国の情報通信大手)などの出資を受けた企業だ。
Metaは、Magic Leap 2と同じ70°の視野角を、はるかに小型のOrionで実現している。これは大きな革新であり、ザッカーバーグ氏が目指す「目立たないウェアラブルデバイス」というビジョンに不可欠なものだ。
続きは無料会員登録後、ログインしてご覧いただけます。
-
記事本文残り71%
月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!
初月無料トライアル!
- 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
- バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
- フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待
※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。