AIが駆動する世界で存在感を示す国に 金融のデジタル化、データ化を推進
キャッシュレス社会のあるべき姿を探る研究会の2026年度成果報告会が、7月14日に衆議院議員第一会館で開催された。エージェンティックAIやステーブルコイン、中小企業の成長をテーマに3回重ねた議論を総括し、データ活用による地域経済活性化の今後の方向性を探った。
キャッシュレス社会のあるべき姿を議論する「キャッシュレスとデータ活用による地域経済活性化研究会」。2026年度の成果報告会は、東京・永田町の衆議院議員第一会館で実施した。2026年度に3回、開催された研究会の総括を行うとともに、今後の方向性について議論を深めた。
成果報告会の開始にあたり、自民党デジタル社会推進本部本部長で衆議院議員の平井卓也氏があいさつした。平井氏は、同本部で次世代AI・オンチェーン金融構想PTを立ち上げ、2026年5月に提言を取りまとめたことに言及。「この分野は変化が速く、さまざまな社会実験も始まっており、社会実装も進んでいる。今後イノベーションを後押しすべく、当研究会の成果を共有しながら責任あるアジャイル・ガバナンスで新しい政策づくりに取り組んでいきたい」と語った。
平井卓也 衆議院議員 自民党デジタル社会推進本部長
続いて、関孝則・事業構想大学院大学特任教授によるこれまでの3年間にわたる研究会の紹介と、今年度「エージェンティックAI」「ステーブルコイン」「中小企業の成長のための戦略とAX」のテーマで3回にわたって開催した研究会での議論の振り返り、概要が報告された。
個人データの扱い
相互扶助で理解促進へ
その後、研究会の各委員が今年度の3回の議論をふまえながら、今後の課題についてコメントした。まず、日本総合研究所創発戦略センターシニアスペシャリストの若目田光生氏が、個人データの取り扱いの観点からコメント。7月中旬の改正個人情報保護法の成立に触れ「同意を必要としない統計情報の作成と、AIの開発・学習に関して積極的にそれらを活用する道筋が開かれ、ビジネスモデルの変革につながる大切な局面を迎えました」と評価した。
そのうえで今後、データ活用の重要性を社会にさらに浸透させていくためには、事業者のガバナンスの取り組みが大切であるとの認識を示した。同時に、「一人一人のデータが、我が国が抱える社会課題の解決に不可欠であり、結果的に自身の生活を豊かにするという相互扶助の考えに立ってデータを共有いただけるようにしたい」と述べた。そして、データ活用への社会的信頼を得るため、AIや統計の活用に特化した認定個人情報保護団体をつくる活動を始める考えも明らかにした。
中小企業の成長に欠かせない
決済データの活用
次にQUICKデータソリューション事業本部データ分析G兼 ナレッジコンテンツ本部 シニアマネジャーの北村慎也氏が、中小企業がインフレ下で直面する困難を分析。従来の延長線上での経営を続けているだけでは、賃上げなどによるコスト上昇に成長が追い付かず、経営が厳しくなると予測した。
中小企業庁は、中小企業の成長支援制度「100億円宣言」を打ち出している。北村氏は、「売上を単に伸ばしていくというだけでなく、インフレのスピードと角度に経営をアジャストさせ成長を促すための政策とみています」と評価したうえで、それを実現するためには「経営者自身がリアルタイムの決済データなどの分析にAIを活用し、これを経営の意思決定のレベルアップに使う。そして生み出した利益を攻めの投資に充て、賃上げの原資を生み出していくことが欠かせない」と指摘した。
また、一般社団法人キャッシュレス推進協議会事務局長常務理事の福田好郎氏は、ステーブルコインや暗号通貨に対する一般の人の理解が進んでいない点を指摘したうえで、今後認知がどれだけ広がるかが普及のポイントになる、と話した。「ステーブルコインがバランスシートの資産の欄に載るようにするなど、AIの活用が当たり前になる時代に向けて、しっかりと準備を進める。日本の市場ではステーブルコインが使いやすいという認知の獲得が、グローバル競争で日本が勝ち抜くためのカギになる」と述べた。
デジタル金融インフラの普及は
認知度の拡大、リスク抑制がカギ
衆議院議員の神田潤一氏は、研究会の内容を踏まえ「AIによって決済のデータを活用していくインフラを中小企業の成長と地域活性化に生かし、このモデルをアジアに広げる。それをもって日本経済の影響力をさらに発揮できる、明るい未来が当研究会の議論を通じて共有できました」と将来への期待を表明した。そして質疑応答に移り、まず2025年10月に日本で初めて円建てステーブルコインを発行したJPYC代表取締役の岡部典孝氏が、ステーブルコインが急速に普及しつつある現状を紹介したうえで「まだ問題は山積みだが、ステーブルコインの金銭該当性についても整備が進んでいます。AIエージェントの社会実装を着実に進めていくべきです」と強調した。

神田潤一・衆議院議員、自民党金融調査会事務局長による金融デジタル化に関する説明。成果報告会は衆議院議員第一会館で開催された
続いて福田氏が「自民党が出したAIホワイトペーパー2.0では、ブロックチェーン上で金融取引や資産管理を一体的に処理する『オンチェーン金融』が一番大きなキーワードになっていると思うが、今後一般の人に使われるようにするためにはその概念について認知、理解を広げていかないといけない。それをどのように進めていこうとしているのか」と質問。これに対し神田氏は「オンチェーン金融はいろんな可能性を秘めており、大きなゲームチェンジャーになり得ると思っている」と応じた。ただし、これもあくまで道具の1つであり、いかに使いやすいUI、UXのインフラにできるかが重要だという。そこでのスタートアップの貢献に神田氏は期待している。
また、平井氏はエージェンティックAIの普及を踏まえ「最終的に人間がその意思決定を下すところをシステム的にどのように担保し、仕組み化していくかの検討が欠かせない」と指摘した。
最後に、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのアルトゥーロ・プラネル氏があいさつ。これまでのキャリアで赴任してきた国、特に東南アジアの政府、規制当局と対話を重ねた経験をもとに、「金融サービスのデジタル化は、経済発展のみならず金融包摂や信頼確保にも不可欠。現在、暗号通貨、ステーブルコイン、量子コンピューティング、エージェンティックコマースなど様々な新たな技術が収束する特別な瞬間に立っている中で、今後しっかりしたユースケースを確立していく必要がある。このような技術は経済の発展を加速させる一方で、さまざまなリスクも顕在化させてしまう可能性がある。ビザはテクノロジーのフロントラインにいる立場として、ユースケース創出により経済成長を支えることと、安全・信頼の確保を両立していきたい」と述べ、成果報告会を締めくくった。
アルトゥーロ・プラネル ビザ・ワールドワイド・ジャパン 代表取締役社長