実務・指導・研究力 3つの能力から考える実務家教員の定義

我が国の高等教育機関の様々な場面で、実務家教員が求められる。実務家教員の3つの能力から実務家教員の定義を考えてみたい。

実務家教員は、企業やその他の組織などで実務経験をもち、実務上で成果を出すことができる実践的な知識やスキルを学生に指導することが期待されている。そのため、実務家教員は筆者が繰り返し述べているように3つの能力が重要である。

実務経験・実務能力

まず、実務家教員の能力のうちの一つは実務経験・実務能力である。実務家教員は、現場での実務経験を持つことで、理論だけではなく実際の現場での問題解決や仕事の進め方などの知見を有していると考える。それらの知識を学生に指導することが期待されている。そのため、豊富な実務経験が求められる。また、実務能力についても高いレベルで持ち合わせる必要がある。現代社会は常に変化しており、最新の動向や技術を常に習得していくことが不可欠だ。実務家教員は自己研鑽を怠らず、最新の技術やトレンドを常に把握し、学生に伝えることが要請される。

教育指導力

次に、実務家教員の能力として教育指導力をあげる。実務家教員は、学生たちが実務に携わっていくうえで必要なスキルや知識を伝える役割を担うことになる。そのため、授業を行うだけではなく、学生たちが問題解決に取り組むための手法やアプローチ、実務での規範などを実践的に教えることになる。さらに、学生たちの個別の相談やキャリア支援などを期待している教育機関は実際に多い。そのため、とりわけコミュニケーション能力や授業科目を超えた教育指導力が求められるだろう。

研究能力

最後に、実務家教員の研究能力をあげよう。実務家教員は、自身の実務経験や知識にもとづき、研究活動をおこなうことが望ましい。最新の実務動向や知見を取り入れながら、研究と教育指導の両輪をまわすことが重要である。しかし、いわゆる研究者教員のような研究発表や論文執筆だけが求められているわけではない。今後課題になるであろう実務研究によって、学生たちに対して高度な実務スキルや知識を伝えることが可能となる。

 

以上のように、実務家教員に求められる能力は、実務経験・実務能力、教育指導力、研究能力の3つである。これらの能力を高いレベルで持ち合わせることが求められるが、それだけでは不十分なのである。先に言及したように実務家教員は、学生たちとのコミュニケーションを通じて、学生たちの能力を引き出すことが要求される。そのために、実務家教員は学生たちのキャリアパスや将来のキャリアプランを考慮しながら、個別の相談にも対応することが期待されている。さらに、学生たちとの対話を通じて、学生たちがどのような実務スキルや知識を持ち、何に興味を持っているのかを把握し、それに応じた教育指導を行うことが必要なのだ。

実務家教員は、学生たちにとって理論だけではなく、実践的な知識やスキルがどのように組み合わされているのか教えることが求められる。そのためには、自身が持つ実務経験や能力を高め、学生たちに最新のトレンドや技術を伝えることが必要だ。また、教育指導力や研究能力も必要ではあるが、それだけではなく、学生たちとのコミュニケーションを通じて、学生たちのキャリアアップやスキルアップをサポートすることもまた役割として求められる。

実務家教員には広範な能力が求められている。(写真はイメージ)