時事テーマから斬る自治体経営 「観光振興」の注意点

多くの地方自治体が観光振興に取り組んでいる。観光に関連する産業は幅広く、経済効果が高いとされる。観光振興による果実を確実に得るためには、いくつかポイントがある。今回は『「観光振興」の注意点』というテーマで議論を深めたい。問題提起の意味もある。

「観光消費額」という数字の根拠

観光庁は観光振興の効果は大きいと指摘している。筆者も、そのとおりだと考える。しかし、いくつか注意点がある。自治体の議会会議録を確認すると、議員が「観光振興の効果にどのようなことがあるか」や「定住人口が減少していく中で、観光に活路を見出したらどうか」という趣旨で質問するケースが多い。

これらの質問に対して、首長や幹部職員は観光庁が発表するデータを提示している。それは「定住人口1人当たりの年間消費額は、旅行者の消費に換算すると外国人旅行者【A】人分、国内旅行者(宿泊)【B】人分、国内旅行者(日帰り)【C】人分にあたる」である。読者に質問である。A~Cに入る数字は何だと思われるか。

発表年により、多少数字は異なる。2019年の数字を紹介する。Aが「8」であり、Bが「23」、Cが「75」である(観光庁(令和5年1月30日)「観光行政の動向について」)。すなわち、外国人旅行者8人、国内旅行者(日帰り)75人分は定住人口1人分の消費額に該当する。これらの観光客数を集めれば、人口減を補う可能性があると回答している。

この説明(数字)に注意する必要があるだろう。定住人口1人当たりの「年間消費額」がポイントである。観光庁の資料を確認すると、1人当たり年間消費額を「130万円」としている。再び読者に質問である。読者の1年間の消費額は130万円だろうか。少なくとも筆者は130万円ではない。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り77%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。