ドコモビジネスが地域に根差したプラットフォームで地域課題を解決

NTTドコモは群馬県長野原町と「ICTの活用による地域課題解決に向けた連携協定」を締結、「ドコモビジネス」主導のもと、長野原町公式アプリを包括した独自のプラットフォームの提供を始めた。国のデジタル田園都市国家構想にも採択され、全国の自治体から注目される、地域活性化の姿とは。

NTTコミュニケーションズ株式会社
地域協創推進部門主査の堀谷順平氏と、前橋市情報政策課主任の白根大輔氏

群馬県長野原町の3つの課題

NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアは、新ドコモグループとして3社統一の法人事業ブランド「ドコモビジネス」を2021年にスタートした。ICTやDXといったデジタルの力を活用し、地域に根差した全国の中小企業や地方自治体が抱える課題の解決に取り組んでいる。

その舞台の1つとなっているのが、群馬県長野原町だ。人口約5000人、北軽井沢の別荘地を持つこの町は、過疎化や高齢化など、いまの時代の典型的な地域課題を抱える地方自治体と言える。長野原町DXアドバイザーに2023年4月に就任したNTTコミュニケーションズ 地域共創推進部門主査の堀谷順平氏は、「ドコモビジネス」の中心的人物として、現在この町で地域密着型の課題解決に取り組んでいる。

「今回長野原町で地域独自のプラットフォームを構築するに至った背景にある地域課題は、平時有事双方での情報格差の解消、健康福祉・地域構想に関する環境整備、地域事業者支援の仕組み強化の3つがあり、特に深刻なのは情報格差でした」

行政情報や防災情報など全ての住民に届けるべき情報が届いておらず、独居老人や空き家問題、少子高齢化の進む山間地では隣の家まで歩いて30分といった地域もあり、回覧版を回すことさえ難しい。毎月の広報紙は閲覧したかどうか確認できない。ホームページからの情報収集はスマホを利用できない高齢者にはハードルが高く、いわゆるデジタルデバイドの問題もある。さらに、別荘地のある地域では、訪れる観光客向けに向けて災害情報を届ける仕組みも必要になる。

「ドコモビジネスには、データ蓄積・データ分析・活用ができる基盤があり、地域の課題に合わせてアプリやダッシュボードの提供機能をカスタマイズすることで地域に根差した地域プラットフォームが提供できます。

役場や地域からの情報が届く長野原町アプリ

長野原町の課題に広くアプローチできる対策として長野原町独自の地域プラットフォーム(以下、地域PF)の構築と、情報発信を担う公式アプリの開発を提案しました。高齢者にはスマホ教室なども行いサポートをすることで、アプリさえ落としておけば誰でも鮮度の高い広報情報や防災情報を手にいれることができるように考えました。住民だけでなく、長野原町に関係する観光客のような交流人口に対しても情報格差を解消できる仕組みとして提案し、採用していただきました」

行政のお知らせのみでは退屈
事業者のクーポンが閲覧の動機に

長野原町で使用されているプラットフォームは、地域住民および観光客向けの長野原町公式アプリと、長野原町(行政)・事業者向けの運用管理システムダッシュボードで構成される。「地域PFの構築には、自治体職員をはじめ、地域事業者や住民など、地域を支える全てのステークホルダーの声を反映しています。地域の課題やニーズを起点にカスタマイズして実装できるのがこの地域PFの特徴で、長野原町の場合も、プラットフォームありき、アプリありきの提案は一切していません」と堀谷氏。

公式アプリでは、地域の情報の住民や観光客に向けた発信を通じて、情報格差の解消を目指している。アプリから得られる情報は、行政情報、防災情報、有事の避難経路、地域の飲食店の営業時間、地域で使えるクーポン、健康マイレージなど様々だ。必要に応じてデジタルサービスを柔軟に追加できる点も特徴になっている。2022年11月にリリースした長野原町公式アプリのダウンロード数は現在3000~3500と、リリースから約1年間で、人口比で60~70%がダウンロードした計算になる。

地域の事業者がアプリを通じて配信する特典やクーポンなどは、ユーザーを増やす原動力になった。「現在、約40事業者がこの仕組みを活用しています。この規模の町でこれだけの事業者が発信していると、住民が日々の生活圏で自然とアプリの存在を知り、特典や情報の恩恵を受ける機会が非常に多くなるので、行政が伝えたい情報が自然に広がっていくというメリットがあります」(堀谷氏)。

群馬県内で同じくドコモと協定を結び、ICTを活用したまちづくりやDXを推進している前橋市情報政策課主任の白根大輔氏に長野原町の取り組みについて自治体職員の目線からの印象を聞くと「行政だけの情報だとなかなか見てもらえませんが住民がほしい情報があれば見てもらえます。それにより行政側も、情報発信のモチベーション上がります」と話す。

ユーザーへの浸透と同時に、誰もが使える環境づくりにも積極的に取り組んでいる。「スマホ教室だけでなく、高齢者向けに町で契約したスマホの貸出事業なども行っています。コンテンツを準備し、日用使いの特典も用意し、スマホを持っていない人には環境自体も作る。この3つの合わせ技で普及が進んだと感じますし、これくらいやらないと、デジタルデバイドの解消とは言えないか思っています」(堀谷氏)。

地域の課題・ニーズを踏まえ
地域PFをカスタマイズ

運用管理システムのダッシュボードではプラットフォーム上で得た「情報の分析・可視化」がされ、事業者が、地域の来訪者分析やアプリなどへのユーザーアクセス分析などができる。

「長野原町における取り組みの成果はいくつかあります。情報配信ポータルを整備したことにより閲覧率などがわかるようになり、情報コミュニケーションのPDCAを回せるようになったことが1つ。そして、事業者がこれまで単体で担っていた情報発信に地域で取り組めるようになり、町の魅力をより大きなボリュームで伝えられるようになったことです」(堀谷氏)。

長野原町はデジタル田園都市国家構想の補助金を活用して事業を開始しており、現在は公費で事業を運営している。今後は地域金融機関を含む様々な事業者の参加を促し、補助金に頼らないモデルも構築していく予定だ。ドコモビジネスでは地域PFの横展開を進めており、既に群馬県草津町での導入が決まっている。人口や産業の規模を問わず、様々な自治体での活用できると期待している。

堀谷氏は地域PFの強みを次のように分析する。「ドコモビジネスは全都道府県に支社・支店があり、地域の課題・ニーズを直接ヒアリングしながら必要とされる独自のプラットフォームを地域密着型で構築していけることですね」。

地域PFを実際に体験した白根氏は「自治体によってそれぞれ抱えている課題が異なるので、カスタマイズできる、解決策となるサービスを追加できるのは魅力だと思っています」と話す。

地域PFは、多様な地域課題に対するソリューションとして、今後もますます発展を遂げていく。

 

お問い合わせ


NTTコミュニケーションズ株式会社
ソリューション&マーケティング本部
ソリューションコンサルティング部
  地域協創推進部門
連絡先:support-municipal-sales@ml.ntt.com

 

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。