実践の理論、実務家教員の知識生成についてのまとめ

リアルタイムノレッジの役割

本稿では、実務家教員の知識生成について、リアルタイムノレッジと実践の理論という2つの観点から考えた。リアルタイムノレッジは、実務家教員が実践現場で直面する課題や問題に対応するために、自らの経験や知見、あるいは他者から得た情報やアイデアを組み合わせて作り出す知識である。リアルタイムノレッジは、実務家教員の実践能力や効率性を向上させるという価値を持つが、同時に、科学的な根拠や検証が不十分であったり、時代や環境の変化によって陳腐化したりするという課題も持つ。実践の理論は、実務家教員が自分の実務領域を構造化して取り出した知識である。実践の理論は、実務家教員の実務領域における本質的な問いや原理を明らかにするという価値を持つが、同時に、実践現場での検証や改善が必要であるという課題も持つ。リアルタイムノレッジと実践の理論は、実務家教員の知識生成において、相互に影響し、相補する関係にある。実務家教員は、自分のリアルタイムノレッジを実践の理論に昇華させ、自分の実践の理論をリアルタイムノレッジに落とし込むことによって、自らの知識を深めることができる。このような知識生成のプロセスは、実務家教員の専門性や資質を高めるだけでなく、社会や学問にも貢献する可能性を秘めている。

まとめ

1、リアルタイムノレッジ

・生成: リアルタイムノレッジは、実務家教員が自分の実践現場で直接生成する知識である。これは、日々の経験、実践、問題解決、洞察などから生じる。
・共有: 実務家教員は、自分のリアルタイムノレッジを他の実務家教員と共有できる。これにより、知識の可視化、整理、再利用が可能となる。同じ実務領域の仲間や異なる実務領域のパートナーとの交流を通じて、フィードバックやアドバイスを得ることもできる。この点で、実務者同士の人的ネットワークが重要となる。

2、実践の理論

・理解のための知識: 実践の理論は、実務家教員が自分の実務領域を理解するために必要な知識である。これは、学術的な研究、専門的な文献、モデル、フレームワークなどから示唆を得ることができる。
・リアルタイムノレッジの源泉: 実践の理論は、リアルタイムノレッジの基盤となる。他方で実践の理論によって、リアルタイムノレッジは構造化され、分析され、評価される。

3、相互作用と相補性

・リアルタイムノレッジは、実践の理論の源泉となるが、実践の理論はリアルタイムノレッジの枠組みになる。リアルタイムノレッジは実践の理論によって検証され、修正され、発展することになる。
・実務家教員は、自分のリアルタイムノレッジを実践の理論として抽出し、整理し、表現することで、本質的な問いや原理を明らかにすることができるはずである。また、実践の理論をリアルタイムノレッジとして実践し、検証し、改善することで、有効な方法や技術を発見することが可能である。

このように、リアルタイムノレッジと実践の理論は、実務家教員の知識生成において重要な役割を果たしていると言える。

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