社会教育士・社会教育主事が担う専門性と展望・その2
インクルーシブな学びを
実現する調整力
不登校・ひきこもり状態にある方、障害のある方、多文化背景の方など、学びへのアクセスに困難を抱える人々へ学習機会を届けるためには、支援者同士のネットワーク形成や制度的配慮が不可欠である。社会教育士や社会教育主事は、そのための調整役として中核的な働きが期待されている。
教育現場と地域現場を
つなぐ橋渡し役
学校教育で得た学力や基礎スキルを地域のボランティアや職業体験に繋げる一方で、地域で学ばれた成果を学校教育へ還元するような双方向の橋渡しが急務である。こうした役割こそが、社会教育士や社会教育主事の存在意義であり、理論と実践を融合させる技量が求められる。
これからの展望
私たちが暮らす社会は、少子高齢化やグローバル化、情報化の急速な進展など、多面的な課題に直面している。そのような中で、人々が学びを通じて生涯にわたって自らの知識やスキルを更新し、多様な人々と協力し合いながら人生を豊かにしていくためには、社会教育の果たすべき役割はますます大きくなっていると考えられる。そして、その役割を推進する「社会教育士」や「社会教育主事」の存在は、教育行政のみならず地域社会全体にとって欠かせないものといえる。
資料で示される「社会教育の定義」や「家庭教育・生涯学習との関係性」は、私たちが社会教育のあり方を再考する上で示唆に富むと筆者は考えている。こうした視点を踏まえ、学校・家庭・地域が互いに補完し合う枠組みをより強固に築き、多層的かつ柔軟な学習環境を整えることが、地域創生や社会活性化にも結びついていくものだ。社会教育士や社会教育主事が担う“学びの未来づくり”は、単なる教育政策の一部ではなく、人々の暮らしや人生そのものを支える壮大なプロジェクトといえる。
社会教育は、学校教育や家庭教育と同じく、あるいはそれ以上に、人生を形づくる中核的な学びの場であり、その可能性は無限大だ。だからこそ、社会教育の専門職である社会教育士や社会教育主事は、弛まぬ探求と地域への深い洞察をもって、人々の「学びたい」という意欲の芽を丁寧に育てる支援者として活躍していくべきだろう。本稿で取り上げる社会教育の理念や枠組み、そして家庭教育・学校教育との連動の要点を手がかりに、多様性と連帯を同時に尊重し得る学びの社会を共につくり上げていきたい。そうした取組みの先には、あらゆる世代や背景をもつ人々が学習の成果を存分に活かし、新しい価値を創出していく未来が広がっていると考える。
社会教育・生涯学習と教育の関係図
