Salesforceの観光CRMの仕組みづくり 「つながる」サービスで売上向上

観光CRM(顧客関係管理)で売上を向上させる仕組みづくりでは、旅前から旅後までの「つながる」施策が重要になる。Salesforceはワンプラットフォームの「つながる」サービスで、顧客に一貫性のある体験を提供すると共に、地域における稼ぐ力の強化に貢献する。

井上 司 Salesforce
ソリューション営業本部
Service Cloud第二営業部 担当マネージャー

米サンフランシスコに本社を置き、日本でもビジネスを展開するSalesforceは、クラウドアプリケーションやクラウドプラットフォームを提供。特に売上や顧客サービスを向上させる仕組みづくりで、高い評価を得ている。

アフターコロナに向けた観光CRMで売上を向上させる仕組みづくりでは、「インバウンド需要の回復はまだ数年先と予想され、まずは国内観光客にフォーカスしていく必要があります」と、Salesforceソリューション営業本部Service Cloud第二営業部担当マネージャーの井上司氏は指摘する。

今後は国が観光需要を喚起するための施策を打っていくことが予想され、そのチャンスを確実に掴んで誘客し、リピートを促すことや、旅中や旅後の消費を増やすことが重要になる。このタイミングで観光客をしっかりフォローするための仕組みづくりをすれば、国内需要を掴み、来たるインバウンド需要の回復にも備えられる。

Salesforceで実現する観光ソリューションの全体像

Salesforceは地域観光を支えるソリューションをワンストップで提供する

 

各施策が分断されずに
「つながる」ことが重要

「観光客への最初の情報発信や情報収集は、ウェブサイトがメインになるでしょう。しかし、実際に観光地へ来た人が、その後もウェブサイトをずっと見ている訳ではありません。その後も観光客と接点を持ち続け、そこで得た情報が1つのデータベースに入っていれば、データを利活用できます」。

Salesforceエンタープライズ金融&地域DX営業統括本部金融&地域DX営業本部 統括部長の井口統律子氏は、こう語る。観光CRMで売上を向上させる仕組みでは、旅行に出る前には見込観光客を逃さず誘客し、まずは来てもらうことが必要になる。このため、見込観光客の興味や好みを把握し、データを蓄積した上で、一人ひとりの興味に応じたイベント情報やクーポンなどを配信する。そして旅への期待を高め、スムーズに予約へとつなげる。

井口 統律子 Salesforce
エンタープライズ金融&地域DX営業統括本部
金融&地域DX営業本部 統括部長

次に旅行中は、滞在地域や日程に合わせ、1 人ひとりの興味に応じた情報を配信する。例えば、地元の知る人ぞ知るグルメやお土産の情報を提供すれば、特別な体験を求める観光客は値段が高くても選ぶ可能性がある。また、顧客が旅先で困った時には蓄積されたデータを使い、デジタルとアナログの両面から手厚いサポートを提供する。顧客の不安がスムーズに解消されれば、その体験は感動に変わる。

そして旅行後には、顧客がSNSにアップした旅の感想などが、貴重な資産として蓄積されていく。それを旅行前や旅行中の行動データと合わせれば、興味や関心の精度が高まり、地産品の情報を配信して購買を促したり、次回のおすすめ観光スポットを提供してリピートを増やすこともできる。

「このような仕組みづくりでは、各施策が分断されずに、つながることが重要です。旅に出る前から旅行後までの仕組みや施策をワンプラットフォームで行うことで情報は資産となり、お客様に一貫性のある体験を提供できます。また、個別の施策の効果だけでなく、全体を見渡した時の効果も把握でき、データに基づく施策の立案や見直しが可能になります」(井上氏)。

顧客接点の改革で
地域の稼ぐ力を強化

観光CRMのこのような仕組みは、Salesforceの「Salesforce Cus tomer 360」によって実現できる。Salesforce Customer 360は、「まちのコンシェルジュ」としてデジタルを活用した観光客とのエンゲージメント強化や、データを活用した観光地域マーケティングを可能にする。

まず観光客が旅の計画を立てる際には、マイページで好みに合わせたおすすめ情報やイベントを案内する。最初にアンケートに答えてもらうことで、旅の目的や行き先に合わせた、きめ細かいサポートが可能になる。

例えば、旅行中の要望にもチャットボットが対応し、地域ならではの情報を案内する。デジタルが苦手な顧客には、電話での問い合わせ先を案内する。電話を受けた担当者は顧客の情報や好みを素早く把握し、人工知能(AI)が推奨した顧客の好みに合わせたおすすめ情報を案内する。顧客が道に迷った際など電話での解決が難しい場合は、顧客の現在地を把握し、スマートフォンのカメラを使って手厚くわかりやすいサポートをする。

旅行後には、心地良い体験に満足した顧客はソーシャルメディアでその体験をコメントする。そのコメントはSalesforce Customer 360に取り込まれ、担当者がお礼のメッセージを送る。顧客とのすべてのやり取りはセールスフォースに蓄積され、分析用のデータとして活用できる。

顧客の興味・関心や行動に関するデータを積み重ねていけば、施策に対する効果を検証でき、データに基づいた計画の立案や新たなサービスの企画にも役立つ。

「Salesforce Customer 360の顧客情報管理基盤は、お客さま情報や行動履歴、お客様の声などのデータを蓄積し、お客様へのサービス提供、サービス対応のプラットフォームとなります。そして外部とのポータルサイトによって、観光客や事業者と相互につながる仕組みを提供します」(井上氏)。

また、デジタルマーケティングによって、一人ひとりに適切な情報を配信し、その反応を基に興味や関心を蓄積していく。LINEでの情報配信やコミュニケーションも可能になっている。さらにビジネスインテリジェンス(BI)ツールでデータを分析し、資産として活用することもできる。他には、地域の特産物を販売するECサイトも提供できる。これらすべてを一度に導入するのが難しい場合は、まず個別に導入し、段階的に利用範囲を増やしていくこともできる。

「顧客接点を改革すれば、地域の稼ぐ力を強化できます。そのためには局所的な施策や個別最適ではなく、つながるサービスの提供が必要です。ですから、Salesforceはワンプラットフォームでつながるサービスを皆様に提供していきます」(井上氏)。

まず1つ目は、COVID-19が落ち着くことで、流行前のような状態に戻りつつあるものの、社会は新しくなっている、価値観は変わっているということです。一見同じように見えても、「ニューノーマル」の世界になっています。例えば、活動の場所ではオンラインという選択肢が増えていて、対面だけでなくオンラインでの会議も引き続き行われるでしょう。また、時間の使い方も変わりました。筆者はコロナが落ち着いたとはいえ、オフィスへの出社は依然少ないままで、こうした方は多いでしょう。移動もビフォーコロナのときに比べるとやはり少ないままで、可処分時間の取り合いだったビフォーコロナに比べれば、時間ができているのではないかと考えられます。

このようなニューノーマル下では、新たな需要が生まれていることを意識する必要があります。すなわち、新規事業を考えるこれ以上ないタイミングなのだということです。もちろんCOVID-19が流行していたときも、例えばマスクや消毒の機材、オンラインツール、PCR検査などの新たな需要が生まれ、それが新規事業となりえました。ただ、これは感染が流行中であるときのみの需要も多く含まれています。今こそ、コロナが落ち着いた後の、ある程度安定した社会(まだ流行が終わっているかはわかりませんが)の需要に対して事業を考えていくべきです。

例えば、オンラインツールであっても家だけでなく出先でも活用できるようなものが求められるかもしれません。移動中にオンライン会議に参加する場面も増えてくるように思われます。このように、「新たな社会には新たな需要がある」という視点をもっていただきたいと思います。

本社や経営層だけで
新規事業を考えない

2つ目に、「新たな社会での新たな需要」は、何も東京の本社だけで、経営陣だけで考える必要はありません。例えば、全社から新しい需要に対応する会社の新事業・サービス案を募集するのもよいタイミングかもしれません。もちろん、ビジネスとして収益が上がるものが出てくる割合というのは新規事業の多くは失敗するのと同じく低いですが、現場で顧客や課題のリアリティをもった仮説が上がってくる可能性があります。また、以前の本連載でも触れましたが、新規事業を行う際には、事業のアイデアはもちろんのこと、「なぜ今か」というタイミング、そして、これが一番の要素だと筆者は考えていますが、その課題解決に情熱をもった「人」の存在が重要です。

企業内に新規事業室を設けたものの、うまくいかなかったという話を聞くことも多々あります。筆者が事業相談を受けたときによく見る光景は、コンサルタントに課題を見つけてもらい、それに対し何らかの解決方法を考えて実行するものの、事業担当者にまったく熱意がないというケースです。既存事業の売上が何十倍、もしくは何百倍もあり、既存事業の売り上げには迷惑をかけるななどと言われる中、新規事業を行う。業務として新規事業を行い、熱がないからだけが要因ではないのですが、新規事業は困難がもちろんつきもので、そのため事業をやりきれないという事態につながります。

これが大企業で全国の支社などからアイデアを募集したりするような形式だと、少なくともその課題解決に対して熱意をもった「人」を見出すことができます。課題と人を見つけることができ、解決や収益モデルなどは他のメンバーがサポートすることでブラッシュアップも可能です。新規事業を行うときに多くの社員から課題に対する熱をもった人を見つけられるのは、人材を豊富に抱える大企業にとって大きなメリットであるといえます。さらに英断だと、新規事業のアイデアを出した人を新規事業室などに異動するということもできたらなおいいでしょう。

今こそ地方で
ヘルスケアビジネスを

さらに医療・ヘルスケア領域に限った話をすれば、地方こそ「課題先進」であり、事業チャンスの宝庫です。

東京などの都会に比べて地方の方が高齢化が先に進んでおり、医療・ヘルスケア関連の課題が顕在化している場面は多くあります。サービスは何も東京で、それも、港区や千代田区のような都会のど真ん中の考えだけで行うものではありません。むしろ、テクノロジーをプラットフォームとすることで、全国に通用するサービスを作り上げることも可能になるのです。

テクノロジーは最初に東京で使われることが多いですが、地方を都市圏と同じようにするインフラでもあるのです。今は当たり前ですが、Amazonで物が買えたり、YouTubeやNetflixで動画を観ることできたり、なによりiPhoneも日本全国どこでも使えます。筆者は福井県出身なのですが、高校生のときはテレビがNHKの他に2チャンネル(フジと日テレ。テレ朝やTBSは福井では見られない)しか見られませんでしたから、テクノロジーが生活レベルを上げてくれているといえます。

重ねてお伝えしたいのは、「今こそ新規事業のタイミング」だということです。新たな様式・価値観が普及しつつある新しい社会で求められる需要と解決すべき課題、とりわけ地方の課題の解決を今こそ考えていくべきでしょう。

 

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