地域のデジタル化のかなめ 中小企業への支援、人材育成を強化

県内企業におけるDXの促進に取り組む栃木県。企業への導入支援や将来を見据えた人材育成について、産業労働観光部長 辻󠄀 真夫氏に話を聞いた。

※本講演は2021年12月15日に収録しています。

辻󠄀 真夫 栃木県 産業労働観光部長

専門家のアドバイスで
中小企業の生産性向上を支援

栃木県は県内総生産に占める製造業の割合が全国2位のものづくり県だ。そこで、県は県内中小企業のDXを推進するべく、工場においてAIやIoT等を用いて製造プロセスの改善や稼働の効率化を支援する「スマートファクトリー実証モデル事業」などを実施し、AI・IoTの活用に取り組む企業に対し、支援している。

まず、導入を希望する企業には専門家によるアドバイスを実施。そのうえで、導入計画策定やシステムの導入費用などを補助し、その後の成果発表会や工場見学会を通じて県内中小企業へ周知・普及を図っている。

事業を担当する栃木県 産業労働観光部長の辻󠄀氏は「参加された企業の皆さまからは、導入効果が見え、IoT活用によって人的負担が軽減したとの声をいただいております」と語る。

一方、県内総生産の約5割を占めるサービス産業のDXも大きな課題だ。

2021年度に策定した「新とちぎ産業成長戦略」では、サービス産業の生産性向上、高付加価値化を進めるための「サービス産業発展プロジェクト」を立ち上げている。現在、「とちぎビジネスAIセンター」にて導入効果が高いと想定されるソリューション群を展示しており、たとえば手書き伝票を読み取りデータ化するものや、飲食店でのセルフオーダーに関するものなど、中小企業の生産性向上につながるものを展示することで周知啓発していくこととしている。

「導入にはコストが伴うため、その前に実際にソリューションを見て、体験してもらい、導入の参考にしていただければ」と辻󠄀氏は語る。

デジタル人材の育成を多面的に実行

企業がDXを推進していく上で課題になっているのが、デジタル人材の不足だ。実際に支援を求める声は多く上がってきており、県としてはそういった要望に中長期的視点で施策を講じている。

まず1つ目が企業の従業員のスキルアップ。「とちぎビジネスAIセンター」では、AIの基礎を学べる「AI基礎研修」と、実際にAIの導入プロジェクトの主導役となり、AI導入計画の立案ができる人材を育成するための「エンジニア研修」の2つを開催している。製造業向けやサービス産業向けなど、産業に応じた研修が好評なほか、少人数できめ細かな指導が受けられる研修は満足度が高いという。

もう1つは学生への専門教育。2021年度から産業技術専門校でITエンジニア科を設置し、コンピュータ・ネットワークの通信技術やプログラミング技術を習得できるカリキュラムを開始した。

「卒業生が県内の各産業分野で就職し、生産性向上や業務改善を提案できるデジタル人材になっていただければ」と辻󠄀氏は期待を寄せる。

最後に県内中小企業の顧客を多く持つNTT東日本 栃木支店長の小林博文氏は、産業界のDXについて3つのポイントを示した。

 「1つ目は、自社の課題の明確化で、これは言い換えるとDXで何を実現していくのかを意識することが重要です。2つ目はスモールスタート。DXには色々なバリエーションがありますが、まずは小さくとも確実に成果を出し、現場と経営者が共有して次のステップにつなげていく。3つ目は人材育成。技術の目利きができるような人材を育てることが大事ですが、難しい場合は伴走してくれる外部のパートナーを確保する。例えばNTT東日本であれば、様々なDXを実現してきた知見・技術をスピーディにご提供することが可能です。幅広い業種のお客様にパートナーとして選ばれるよう、これからも努力してまいります」。

 

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