NTTコミュニケーションズが提案するDXを活用した防災ソリューション

月刊事業構想が、全国の首長を対象に実施した「第3回自治体DXに関するアンケート調査」のなかで、今後注力したい分野として多く挙げられたのが「防災・減災」だ。そこで、NTTコミュニケーションズが自治体と実施した、5Gを活用した除雪車の遠隔操作実験と河川・ため池監視ソリューションを紹介する。

NTTコミュニケーションズの朝倉由香子氏

伴走支援し
最適なソリューションを提案

NTTコミュニケーションズは7月、地域共創の強化をねらいにソリューションコンサルティング部を新設し、各地の支社、支店の担当者が地方自治体を通じて、地域住民に対して行っていた社会課題解決の取り組みを、本社側から伴走支援する体制を整備した。

同社ソリューション&マーケティング本部東北支社 ソリューション営業部門 第七グループの朝倉由香子氏は「支店の営業担当者は従来、自分の経験の範囲でしかソリューション提案の取捨選択ができませんでしたが、ソリューションコンサルティング部ができたこと、また、NTTドコモと一緒になったことで事例の情報量が格段に増え、本社、支社、支店が一体となって最適なソリューションを営業担当者に落とし込んでいけるようになります」と新たな体制に期待を寄せる。

除雪車両の遠隔操作で、
担い手不足や事故リスクを解消

東北支社で手掛けた防災・減災の事例の1つが、福島県昭和村における5Gを活用した除雪車両の遠隔運転の取り組みだ。

図 除雪車両の遠隔操作の概念図

昭和村は、豪雪地帯対策特別措置法に定める特別豪雪地帯に指定されている。積雪時の除雪作業は24時間体制で行われるが、「過疎化による除雪車両のオペレーターの担い手不足が進んでいるだけでなく、オペレーターの高齢化が進んでいます。特に夜間の除雪作業は視界不良となるだけでなく、積雪により埋もれた建物や側溝などの位置が把握しにくいことから、精神的、肉体的な負担が増えており、事故や器物損壊が発生するリスクも高まっています」と語る。

今回導入したソリューションは2つ。1つ目は、除雪車両と、遠隔の操縦室のオペレーターを5Gでつなぎ、アクセルやブレーキ、ハンドル操作などの運転を可能にしたことだ。5Gの特長である大容量伝送により、一度に送信できるカメラ映像の範囲が広がり死角を減らすことができたという。「運転する前には30分ほど暖機運転させる必要があるのですが、それも含めて遠隔で操作できるようにしました」。

2つ目が、除雪車両と除雪区間の道路上の対象物の位置情報を遠隔の操縦室から把握できるシステム「VRガイダンス」の導入だ。GNSSサービス(測位衛星システムGNSSからの測位情報を補正し、数センチメートルの誤差で位置補正情報を提供するサービス)を利用し、走行中の除雪車両や、周辺の建物や消火栓などの対象物、道路のセンターラインや路肩などの道路情報を仮想空間上に表示することができる。

「遠隔操作は基本的にはカメラを見ながら行うのですが、雪が降る中では視界不良となることがあるためカメラを補うかたちで使用するものです。これにより、豪雪時など視界不良時の遠隔運転で路肩に落ちる事故を防げるなど、安全性向上への効果が見込めることを確認しました。また、除雪車両の位置を正確に把握できるため、オペレーターの感覚に頼らない除雪作業が可能となり、ムラを防ぐことが期待できます」。

実証運転ではベテランの運転手が操作を担当した。これまで経験したことないソリューションの活用は不安になるものだが、違和感なく使うことができていたという。過疎地の通信環境が整備されていないエリアでの導入については、既存の基地局から電波を飛ばして通信エリアを構築するソリューションでカバーすることが可能だ。また、「同様の課題を抱える近隣の自治体と共同で運用することで、より効率的かつ導入コスト抑えた運用が可能になる。本社と連携を取りながら、今回の導入事例を他の豪雪地域を抱えるエリアに展開する準備も整えている」と話す。

仮想水位計を活用
適切な避難行動を促す

防災・減災ソリューションの2つ目が、AI を活用した河川・ため池水位監視ソリューションだ。「近年、気候変動により台風や集中豪雨などに起因する河川の水害が激甚化していてその現場の状態をいち早く把握することは、地域住民の早い段階での避難行動や的確な防災活動に貢献できます。一方で対策に必要な河川の水位を把握する水位計の導入には高額な費用や大規模な設置工事が伴うほか、メンテナンスなど人の稼働がかかるという課題があります。これに対応する、導入コストを抑え、設置、サポートしやすいソリューションが求められていました。」とプラットフォームサービス本部5G&IoTサービス部IoTサービス部門の大芝 慎一郎氏は開発に至った背景を語る。

ソリューションの特長は、AI技術を活用し、物理的な水位計を必要としない水位監視を可能にしたことで、あらかじめ設定した水位を超えると自動的に河川管理を行う担当者へ通知することだ。「従来の電波式、水圧式のセンサーは川の中や付近に設置するケースが多く、氾濫時に流されてしまい、検知ができない、データが取れないという自治体様からの声をお聞きしていました。水位の影響を受けづらい高い支柱などに簡単に機器を設置でき、AI技術で水位を割り出すことで破損等のリスクを低減させられます」。

また、従来のシステムでは通信コストを抑える観点から数分ごとに静止画を撮影して状況を判断する仕組みになっていたが、「管理サイト上で現場のリアルタイム映像や水位グラフを確認することが可能です。また動画配信サイトへのライブ配信を通じ適切な避難行動につなげることもできます。6月から実施しているトライアルを通して、サービス化する上で必要な機能や実際の環境での検証を進め、サービスとしてブラッシュアップを図っていきたい」と語る。同ソリューションは2024年3月の販売開始を目指している。

大芝氏は今後について「本ソリューションをきっかけに、自治体向けに防災だけでなく観光や生活の安心安全に資するDXを活用したソリューションへと展開を広げていきたい」と展望を語る。

 

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