自治体DXと文書管理のデジタル化 PDFの文書公開を便利で安全に
人自治体の業務システム改革で重要になる行政手続きのオンライン化では、内部事務といわれる文書管理のデジタル化を進め、業務を効率化することが必要になる。文書のデジタル化で多く持ち入れられるPDFファイルの利便性向上やセキュリティ対策では、アドビが様々なツールを提供している。
内部事務のデジタル化で
業務の効率化実現を
総務省が2020年に策定した「自治体DX推進計画」では、目指すべきデジタル社会のビジョンとして「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を掲げている。「このビジョンを達成するためには、自治体の力が必要とされています」と東京都豊島区の元最高情報セキュリティ責任者(CISO)で、KUコンサルティング代表の髙橋邦夫氏は言う。
「住民がデジタル化の恩恵を実感するためには、自治体がデジタル化を進め、新しいサービスを提供していく必要があります。さらに今後は人口減少が進む中、デジタル化によってスマートな働き方を実現しなければいけないという背景もあります」(髙橋氏)。
髙橋氏は現在、12自治体においてCIO補佐官を務める他、総務省地域情報化アドバイザーなどの立場でデジタルトランスフォーメーション(DX)をサポートしている。総務省は自治体DX推進計画で、6つの重点取組事項を提示している。この中では先ずは行政手続きのオンライン化が重要なポイントとなるが、その前に内部事務のデジタル化を進めて文書管理や財務会計などを有効活用し、DXに取り組むための時間を生み出すことが大切だ。
例えば、行政手続きのオンライン化で申請データが届いても、データを職員が紙に印字して上層部の意思決定を仰ぐのでは意味がない。申請データを有効活用して審査業務がロボットや人工知能(AI)でできるようになれば、職員は時間を生み出し、本来やらなければならない業務にも取り組める。
「自治体DXは従来の業務改革とは大きく異なり、経営層を巻き込み、すべての管理職員や職員が自分ごととして考えなければいけません。デジタル推進担当者を置いてデジタル化を進めれば、従来とは異なる働き方や様々な業務の悩み事解決も可能になります」(髙橋氏)。
アドビ・Teamsとの連携で
申請業務の利便性を向上
自治体DXでは、手順書や報告書、議事録など様々な文書を外部に公開することになるが、その際、PDFファイルが用いられることが多い。PDFは元々、アドビが開発したフォーマットだが、現在はその仕様が完全に公開され、国際標準化機構のISO3200-1として標準化されている。アドビではISOの要件に完全に準拠したAdobe Acrobatや、閲覧要件に完全準拠した閲覧ツールのAdobe Acrobat Readerを提供している。
一方、自治体が公開する文書のPDFファイルは、パソコン画面での閲覧を前提とした細かい文字になっているのが一般的だ。しかし、「近年はスマートフォンで文書を閲覧する人が多く、パソコン画面用のPDFファイルでは参照性が悪くなってしまいます」と、アドビ株式会社デジタルメディア事業統括本部営業戦略部ビジネスデベロップメントマネージャーの岩松健史氏は指摘する。
この問題に対し、アドビではAcrobat Liquid Modeの機能を開発し、モバイルデバイスでの参照性を画期的に向上させている。Acrobat Liquid Modeは、目次の自動生成、文章の段落の折りたたみや拡張、文字検索機能、フォントサイズ・文字や行間のスペースをより読みやすいものに変更、文字サイズやレイアウトの変更、といった機能を備える。モバイル用のAcrobat Readerのうち、日本語版ではまだ完全な対応はされていないが、英語版では既に実装されている。
また、コロナ禍を機に自治体では、申請業務のオンライン化も進んでいる。この点に関してアドビでは、電子サインを使って本人性や非改ざん性の証明を行えるPDFファイル出力の仕組みも提供している。既存の書類を読み込んで簡単に出力できるため、職員に専門的なスキルやトレーニングは必要ない。Acrobat ProのSign機能では、申請回数が無制限となり低コスト化できるライセンスも提供している。
このほか、アドビでは現在、申請業務に関してマイクロソフトと提携し、コミュニケーションツールのTeamsとAdobe Acrobat Signの連携で利便性向上を図っている。「連携を通じ、オンラインで面談を行い、提出する申請書に署名するといった機能を提供します。現在は、英語などの対応となっており、日本語の対応はできておりませんが、現在日本語の対応を進めている最中です」(岩松氏)。
PDFの文書公開では事前の
セキュリティ対策も重要
自治体DXの最終的な判断は自治体職員が行うが、国では自治体DXで外部人材も活用すべきとしている。「外部人材には推進役を担っていただき、最後は自治体職員が自ら意識改革するという気持ちで取り組んでいただくのが良いと思います」(髙橋氏)。
また、情報公開請求に伴う外部への文書公開では、紙の場合は非公開にする部分を黒塗りすれば、その内容が漏れることはなかった。しかし、デジタル化を進める際は、黒塗りした部分が読み取られたり、公開した文書が改ざんされるといった事態へのセキュリティ対策も重要だ。
AcrobatのエディションにはProとStandardがあるが、この点では特にProで、文書公開の際に必要となるセキュリティ対策が簡単かつ確実に行える。「PDFファイルについては『変更や改ざんはできない』と誤解している人も多いですが、そうではありません。また、文書がコピーされてあちこちに出回る可能性もあり、ファイル作成時にそれらを防止するセキュリティ対策を取ることが重要です」(岩松氏)。
このように、行政手続きのオンライン化では様々な課題も存在するが、そのメリットは大きい。「届出のオンライン化は非常に便利で、特に事業者や団体向けで効果が大きいと思います。ある自治体では年間1、2件だった届出が、オンライン化によって全国からなされるようになり、年間10件程度に増えたそうです。申請のオンライン化を進める際は、まずは内部事務といわれる文書管理から見直していただくのが良いでしょう」(髙橋氏)。
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