ハイデガーの哲学から、事業構想において「つくる」とは何かを考える
人口減少や地球環境への負荷に直面する現代、「つくる」を拡張の論理だけで捉えることはできない。ハイデガーは「制作」を、世界に何かを付加する行為ではなく、真理を顕わにする営為と捉えた。その思想を手がかりに、「適正規模」をつくるという事業構想の新たな「つくる」の在り方を考える。

20世紀のドイツを代表する哲学者、マルティン・ハイデガー
Landesarchiv Baden-Württemberg, Staatsarchiv Freiburg W 134 Nr. 023740f / Fotograf: Willy Pragher, CC BY 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由
「アディショナル」ではない
「つくる」という営為
何かを「つくる」ということは、世の中に新たに事物を付け加えるという意味で、「アディショナル」な行為である。作家や芸術家は、オリジナリティを追求するために、「まだない」作品を生み出そうと苦心する。国家や企業は、経済規模の拡大を目指して、「まだない」市場を開拓しようと躍起になる。創作であれ、製造であれ、建設であれ、何かを「つくる」ことは基本的には拡張的である。当然、事業構想の場合も、社会課題を解決し、未来を切り拓くような、「まだない」事業を作り出していくという意味で、同様であろう。
ただ一方で、現代は「つくる」を、拡張のベクトルで漫然と捉えていればよい時代ではなくなっている。人口減少社会を突き進む我が国の現状に照らしても、経済においての「つくる」を経済規模の拡張と同義に考えることはできないし、地球環境や資源の観点からも、人間の「つくる」ものが「アディショナル」に増加し続ける事態は看過できるものではない。だとすれば、問われるべきは「つくる」ということそれ自体だということになるのだが、果たして「アディショナル」でない「つくる」とはどのような営為であろうか。本稿ではそれについて考察してみたい。
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