医師からモルドバのおにぎり屋へ 「社会に何が必要か」を問い地域の未来をつくる

プロのバスケットボール選手を目指し、小学3年から22歳まで競技一筋だった長嶋友希。アフリカでのNGO活動を経て医師となり、ウクライナ難民の診療など人道支援に携わった。そこで自らに問うたのは、継続的な力につながる事業の形。長嶋は今、モルドバでおにぎり屋を営み、雇用と経済活動を生み出す新たな挑戦を続けている。

文・油井なおみ

 

長嶋 友希(医師・起業家)

社会の基盤を支える仕事を求め
医師として人道支援の現場へ

「22歳までバスケットボール以外の世界をまったく知らなかったんです」

バスケットボールの名門、筑波大学体育専門学群でバスケットボール選手を目指した長嶋友希は、「自分の価値と能力を高めるためだけ」にすべてを捧げていた。だが、限界を感じ、バスケットボール選手のキャリアを断念。そこで初めて立ち止まった。

バスケ一筋で、「筑波大は元教育大だというのに教員免許も取らず、就活もしていなかった」という長嶋は、社会学を学ぶべく大学院へ進学。在学中はバックパッカーとしてインドや南米などを旅した。

インドでは感染症にかかり、現地の診療所に入院。海外旅行保険に加入していた自分には個室が与えられた一方、別の部屋には大勢のインド人の患者が不衛生な環境で雑魚寝するのを目の当たりにした。

「僕はただの大学生で、数千円の海外旅行保険に入っていただけ。それだけでこんなに違うんだ。この格差はどこから来るんだ、と」。この経験から、長嶋の中に社会に対する問題意識が芽生えた。大学院で社会学を学んでいたことで、「学問的にも興味が深まったのは大きかった」といい、ここから人生の舵を大きく切ることになった。

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