未来技術人財の育成へ、産官学連携で進化するこれからの高専教育

2023年12月25日~26日、広島市で高等専門学校の教職員のためのFaculty Development研修が開催され、全国から約40名が参加した。産業界や行政からのゲストも招き、Society5.0の未来社会を支える人材の育成へ向けた産官学連携の在り方や、教育カリキュラムについて議論し、学びを深めた。

デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に向け、あらゆる産業においてITのさらなる活用が求められている。また、持続的な経済成長を支えるため、AIやサイバーセキュリティ、ロボット、IoT、半導体、蓄電池などを組み合わせた実装力を身につけた人材や、ビッグデータをAIで分析活用できる人材の必要性が高まっている。こうしたなか、独立行政法人国立高等専門学校機構が設置・運営する国立高等専門学校(50校55キャンパス)では、2020年度より、高専発!「Society5.0型未来技術人財」育成事業の1つとして、COMPASS5.0事業(次世代基盤技術教育のカリキュラム化)をスタートした。

Society5.0時代をリードする人材に必要な知識、技能は日々進化している。COMPASS5.0事業では、AI・数理データサイエンスやサイバーセキュリティ、ロボット、IoT、半導体、蓄電池の分野を、これからの技術の高度化に関する羅針盤(COMPASS)と位置付けて高専教育に組み込むことで、未来技術の社会実装教育の高度化を目指している。

イノベーション教育の構築へ
高専教職員のFD研修に注力

COMPASS5.0事業のIoT分野の拠点校である仙台高等専門学校と広島商船高等専門学校は、IoTを活用したサービス構築ができるエンジニアの育成を全国の高専に波及させるべく、教職員のためのFaculty Development(FD)研修を積極的に実施している。目指すのは、アントレプレナーシップ能力の涵養とデジタル技術の掛け合わせによる、社会課題を解決できる人材の輩出に向けたイノベーション教育の構築だ。

FD研修はこれまでに計4回実施。全学生対象のアントレプレナーシップ教育(アントレ教育)をテーマにした第1回と第2回は、2023年に仙台高等専門学校で実施された。参加者はIoT教育やアントレ教育を実践している教員や、今後取り組もうとしている教員、若手教員などである。研修の目的は、IoT・アントレ教育導入に積極的な高専が全国の高専に状況を発信し意見交換することで、教材や授業のブラッシュアップを共に行う環境を作ること、そしてIoT・アントレ教育を担う若手教員の育成とネットワーク作りだ。

アントレ教育をテーマにした第2回FD研修

具体的には、拠点校で開発した高校世代向けアントレ教育教材や、各校でのアントレ教育の実施方法・カリキュラムについて検討を行った。また、IoT教育やアントレ教育に関する各高専の教育実践報告と、各種教材導入のためのワークショップも開催。各校が教育教材や事例を持ち寄り、“高専版アントレ教育プログラム”を作成した。

第3回のFD研修は、2023年11月に沖縄で実施。それまでのワークショップを振り返るとともに、各高専が実施してきたアントレ教育の経験を持ち寄り、現状認識と将来に向けた教育の在り方についてより深い議論を交わし、体系的で実践的な教育プログラムの実現に必要な情報の共有を行った。

開催地の沖縄は、水産・観光などの特色ある産業が集積する。研修では、沖縄地域の特色的な課題とその解決についての事例を学び、沖縄科学技術大学院大学(OIST)において、イノベーション創出やベンチャー育成の促進動向を視察した。また、高専生のキャリアパスに関する講演も行った。

強力なメンター陣とともに
産官学連携教育を学ぶ

2023年12月には広島市において、第4回FD研修の「各高専の伸長深化・産官学連携教育の整理と推進のためのWS」を実施した。「DX教育や産官学連携教育を始めたいがなかなか難しい」という各校の声をもとに、実際に産官学連携を実施してきたメンターや地方自治体、官公庁に相談できるワークショップを開催した。函館工業高等専門学校、釧路工業高等専門学校、鶴岡工業高等専門学校、奈良工業高等専門学校、高知工業高等専門学、徳山工業高等専門学校、佐世保工業高等専門学校の7校が参加した。

第4回FD研修として実施した「各高専の伸長深化・産官学連携教育の整理と推進のためのWS」

企業からのメンターとしては、株式会社エル・ティー・エスの星山雄史氏、尾上正幸氏、鈴木稔氏、株式会社ナッカサンの仲正人氏、ビットリバー株式会社の秦直輝氏、株式会社広島銀行の栗栖徹氏が参加した。官公庁からのメンターとしては、中国経済産業局製造・情報産業課の平山智康課長をはじめとする中国経済産業局、広島県商工労働局イノベーション推進チーム、長岡市役所が参画した。

各校は、COMPASS5.0のIoT分野拠点校と株式会社エル・ティー・エスで開発した「産学連携を行うためのカリキュラムまとめシート」を活用して、メンター陣とともに各校の実情や魅力を整理し、連携できる産官とのつながりや施策を模索した。学校で実践するための工夫を考え、発表を行った。

研修を終え、新たな取り組みへ
前向きな姿勢を見せた各校

第4回のFD研修終え、参加した各校のコメントを以下にまとめる。

「問いを立てること、課題探求の思考の習慣化を行いたい。実務家教員による教育やVCなどの参画の重要性を感じた。実務家教員だけなく、全校の教員と連携することが課題であり、必要と感じた」(函館高専)

「現在、学校としては産業界との連携がないため、まず自分の考えを整理するワークを取り入れ、人間力向上プログラムに力を入れたい」(釧路高専)

「疑似的に企業側の運営と労働者側からの売り込みを経験する、就活から始める人生ゲームのようなものを実施し、人生設計をしてもらう。その際に産業側のPRができるようにしたい」(鶴岡高専)

「課題発見ができる外部の土壌や、スキームをつくりたい。そのために、奈良の地場産業や行政へのアプローチ、課題における粒度の調整をどうしていくべきかなど、さらに情報交換をして意見を伺いたい」(奈良高専)

「地域協働演習の授業のブラッシュアップをし、企業の困りごとについて、学生と一緒に課題発見をしていきたい。学生・教員の専門性と企業課題とのマッチングや、県内就職率の向上を図りながら、資金面の解決も考えていきたい」(高知高専)

「周南まるごと高専in山口のような教育を実現し、地域の人と学生が一緒に課題に取り組む体制を整えたい。コミュニケーションスキル、合意形成、情報取集・活用・発信力、課題発見、論理的思考、主体性、自己管理能力、責任感、チームワーク力、リーダーシップの涵養を目指したい。4年生のインターンシップ、5年生以降の共同研究へつながる企業との関わりを広げる活動に力を入れていく」(徳山高専)

「2年生で地域課題を発掘し、3年生で解決の筋道を立て、5年生で具体的な解決策を提案する。短い授業時間で、フィールドワークを通じて課題を見ることを大切にしたい。学校側と産官側で何を役割分担していくのか、議論が必要」(佐世保高専)

今後も各校の事例共有、横展開によるイノベーション教育実装に向けた取り組みを進めていく。

 

お問い合わせ先


独立行政法人国立高等専門学校機構
広島商船高等専門学校

COMPASS 5.0 IoT拠点校問合せ担当
連絡先:0846-67-3022
メールアドレス:kyoumu@hiroshima-cmt.ac.jp
(メールタイトルにてCOMPASS5.0産学教育と入力ください)
取り組み関するHP:COMPASS 5.0 | 次世代基盤技術教育のカリキュラム化 IoT分野(https://www.sendai-nct.ac.jp/compass5/)

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