コンカーの公共機関向けサービス 予算執行・旅費業務を変革

民間企業向けSaaS型経費精算ベンダーで国内シェア No.1のコンカーでは、公共機関向けサービス参入に向けた準備が進む。データ化による業務改善で大きな効果が見込まれる予算執行、旅費精算業務について、すでに20組織と実証実験を重ねてきた結果に基づき、業務効率化の先にある未来を考える。

コンカー公共営業部部長の長谷大吾氏

公共セクターの業務を再設計
データ活用を可能に

コンカーは2010年に日本法人を設立。旅費・予算執行業務ベンダーとして、国内時価総額トップ100のうちの67社の企業を含む1755企業グループの民間企業にクラウドサービスが採用されている。今後は公共機関領域への参入を図るべく2024年下半期に国内にデータセンターを設置するほか、政府機関等がクラウドサービスを調達する際のセキュリティ・信頼性を評価する制度として定着しているISMAPの登録準備も進めている。

公共機関向けで提供するのは、今なお紙・ハンコの文化が残る予算執行(支出負担行為・支出命令の業務処理の自動化と請求書管理)と旅費精算(近隣旅行および国内海外の旅行における旅費の精算)業務向けの2つのサービスだ。これら2業務は、見積(見積書)や請求(請求書)、旅費(領収書)などの情報を紙で受け取った後システムに手入力して伝票起票を行っている。伝票の内容が合っているかどうかを目視でチェックしなければならず、データ集計・分析についても手間がかかることから有効活用が難しい。コンカー公共営業部部長の長谷大吾氏は「予算執行と旅費精算業務をデジタルシフトすることにより、業務効率が大幅に向上し、さらにデータ活用への道が開けます」と話す。

これらの業務の電子化により、電子請求書・キャッシュレスデータによる入力作業の効率化、審査項目の棚卸、規則の自動チェック、分析レポートによるモニタリングによる審査項目の見直し、データを起点とした業務設計、重複業務の排除、決済フローの簡素化による業務フローの整理が実現できる。「デジタル活用を前提とした業務再設計を行い、データに働いてもらう環境を整えることによって、デジタルトランスフォーメーションを実現させることができるのです」と、長谷氏は導入後の効果を説く。

ただ、現場での実装に当たっては、紙やPDFで届いていたものを電子テキストで送ってもらうことが難しいケースもあるため、「当初は手入力したデジタルデータを使って審査自動化を目指すなど段階的な整備にも対応していきたい」と話す。また、「本サービスは、財務会計システム内の歳出管理機能を担うものであり、財務会計システム自体はコンカー導入後も引き続きご利用いただく必要があります」と注意点にも触れた。

45の目視対象のうち
41がシステムチェック可能に

コンカーは、公共機関向けビジネスに参入するにあたって、自治体での業務の実態について調査を行っている。その結果、予算執行業務の多くで紙が利用されていることが明らかになった(図1)。例えば、予算執行業務の中でも請求書の受領方法を尋ねたところ83.4%が「郵送により紙で受領している」という結果だった(図2)。また、予算執行業務のうち見積書・請求書管理、伝票起票や決済、審査や支払処理業務にひと月どれぐらいの時間をかけているかという問いに対しては「月に7日以上かけている」の回答が20%以上、「5日以上かけている」が35%以上だった(図3)。「アナログなオペレーションにならざるを得ず多くの時間が費やされている実態が見て取れます」。

図1 予算執行業務の運用

自治体における予算執行業務では、紙の利用が大半を占めていた

出典:コンカー

 

図2 請求書の受領方法

図3 予算執行業務の各プロセスでかかる時間

請求書は紙で受領している自治体がいまだに多い。業務負荷は大きく、月に1週間以上かけている人も少なくなかった

出典:コンカー

 

コンカーのクラウドサービスの中でも大きな特徴と言えるのが、システムのロジックを使った審査の自動化だ。事業者マスター、職員マスター、予算情報などのデータをさまざまな条件を初期設定と、財務会計規則・通達等の諸規定のロジックを組むことで、自動チェックを可能にする。支出の目的・用途が妥当かの判断、また専門性が高くシステムでの判断が困難な項目については目視にゆだね、メリハリをつけたチェックを行う。

予算執行業務についてA市で行った実証実験では、45項目の目視対象のうち、コンカーのサービス導入により41項目をシステムチェックで対応できることを確認した。「デジタルデータを活用することで審査工程を大幅に削減することができました」。様々な規模、地域の県、市町村を対象に実証実験を行い、予算執行業務の削減効果を測定したところ、平均して61%の業務削減効果が見込まれることがわかった。

旅費精算については、自治体における業務プロセスは、実費精算ではなく定額支給であることによる煩雑さがデジタル化の阻害要因になっている。これについては、事務手続きの簡素化・効率化の観点から、定額支給から実費支給への見直しが財務省で検討されているという。こうした動きを見据え、コンカーの旅費精算業務向けサービスでは交通系ICカードやQRコード、経路検索、グーグルマップ、旅行手配など様々なキャッシュレス決済サービス等の利用データを連携し、自動で旅費明細を作成する仕組みを提供できるようにした。また、規定のロジックや日当マスタ(地域×職位×国内外)などを初期設定し自動判定を行うことで、入力ミスを防ぎ、差し戻しの手間を減らすことができるという。

デジタル化の効果を
事前に検証可能に

実際にサービスを導入するにあたっては、デジタルシフトに向け、紙などの物理的制約をなくし、業務をシンプルにするための業務整理を事前に行う。具体的には、現場の業務プロセスをヒアリングして業務フローに起こし、デジタルシフトした後のあるべき業務フローとのギャップ箇所を特定して課題を整理。審査の自動化率をはじめとする業務削減効果が出るかを試算し、導入の判断材料として報告を行う仕組みを取っている。「デジタルの側面から内部事務の効率化を支援し、予算執行、旅費精算から業務変革をサポートしていきます」と長谷氏は語った。

 

 

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