奈良市×大和ハウス工業×事業構想大 「共創」を通じて事業構想を策定
事業構想大学院大学は2023年度より、奈良市、大和ハウス工業との共同プロジェクト「奈良市みらい価値共創プロジェクト研究」を実施している。大和ハウス工業の担当者や、プロジェクト研究に参加した元研究員らに、そこでの共創活動や策定した事業構想について話を聞いた。
「大和ハウスグループ みらい価値共創センター(愛称:コトクリエ)」の前で。
左より、事業構想大学院大学の河村昌美教授、asuworksの田代敦士氏、
エヌ・アイ・プランニングの椿野唯仁氏、大和ハウス工業の川島英彦氏
「奈良市みらい価値共創プロジェクト研究」は、公募により参画した研究員が新たな事業構想計画を構築する9カ月の研究会で、2023~2025年度の3年間、毎年度実施。大阪・関西万博のコンセプトの「共創」をキーワードに、産官学の共創を通じ、奈良市の経済活性化や地域課題を解決する事業構想人材の育成に取り組んでいる。大和ハウス工業みらい価値共創センター長の川島英彦氏は、その会場である「大和ハウスグループ みらい価値共創センター(愛称:コトクリエ)」で様々な共創プロジェクトを担当。エヌ・アイ・プランニングの椿野唯仁氏とasuworksの田代敦士氏は、それぞれ第1期生、第2期生として同研究会に参加した。
コトクリエで地域の人々と
社員教育・共育・共創を推進
── 川島さんは「コトクリエ」で、様々な共創プロジェクトに従事されています。その活動について教えてください。
川島 コトクリエは2021年に開所し、「社員教育・共育・共創」の3つを推進するのが取り組みの柱ですが、社員の研修だけに留まらず、地域に開かれた施設です。「共育」では地域の子どもたちや中高生が主な対象ですが、大人が子どもに教えるという一方通行でなく、その道のプロや大人も一緒に学び合う場を提供しています。「共創」では今回のプロジェクト研究のように外部専門家の力もお借りし、地域で働く方々や課題解決に向けて頑張っている方々のような、人・組織・課題をつなぎます。そして、個人や1つの組織だけでは解決できない課題も乗り越えられるような共創活動を目指しています。

大和ハウス工業 みらい価値共創センター
センター長 川島英彦氏
今後は、奈良を中心とするこの地域で「コトクリエに行けば本物の体験ができる」、「今まで気づかなかったことに気づける」、「普段の仕事や生活ではつながれない人たちとつながれる」と言われる聖地のような場所にしていきたいと考えています。
自分と同じ志を持つ
仲間と空間や時間を共有
── 椿野さんと田代さんは「奈良市みらい価値共創プロジェクト研究」で学び、策定した事業構想を現在、実践されています。まず、プロジェクト研究に参加したきっかけを教えてください。
椿野 参加したきっかけは2つあります。1つ目は、私は1期生で2年前のことですが、当時は今の会社で後継ぎ候補者になっており、会社の事業を再構築しなければと考えていました。当時は中間管理職で日々の業務に追われていましたが、新しいビジネスを作るために必要なことを体系的に学びたいと思っていました。2つ目は、そのような課題を抱えて悩み、葛藤する中で、同じように葛藤している仲間がいればつながりたいと考えていました。そして、このプロジェクト研究ならこれら2つを同時に実現できると感じ、参加しました。

エヌ・アイ・プランニング
メディア事業部 部長 椿野唯仁氏
田代 私は奈良市のホームページでこのプロジェクト研究を知りました。その後、ワークショップを体験する機会があって参加したところ、すごく面白い内容で、プロジェクト研究にも参加したくなりました。私自身は2022年に独立し、勉強しながらプロダクトを作っていましたが、どちらかというとプロダクトアウトで自分が作りたいものを作っていました。しかし、そうではなく、ロジカルにきちんと事業を作る必要があると感じたのも受講のきっかけです。

asuworks
代表 田代敦士氏
── プロジェクト研究に参加して得たものや印象に残ったことは何ですか。
田代 自分と同じ志を持ち、共創やエフェクチュエーションを皆でやっていきたいという思いがある仲間と一緒に、同じ空間と時間を共有できたのが特に印象に残りました。また、先生方の経験や知見は素晴らしく、たくさんのことを学びました。
椿野 プロダクトアウトでは自分が作りたいものに偏ってしまいますが、やはり、他の方がなぜ悩んでいるのかを知らなければビジネスはできません。その点に関して学ぶことが多く、アイデアを出す楽しさも知りました。不確実性が高い状態で、自分自身で意思決定していかないといけない中、背中を押していただけて、自信というか、自分の中で何か別の感情が芽生えましたね。
会社の強みや海外経験を
活かして新規事業を構想
── プロジェクト研究で策定した事業構想はどのようなものですか。
椿野 私の会社は「ぱーぷる」という地域に根差したタウン情報誌を発刊してきました。地域の方々との広域なつながりは私たちの誇りですが、できれば県外や海外の方々にも、もっと奈良のことを伝えたいと思っていました。奈良では幸いインバウンドが徐々に増えていて、会社の強みや自分の海外経験を活かし、海外の方々をターゲットにしたツアーを作りたいと考えました。構想して実際にやっていく中で、何回もピボットし、現在はオプショナルツアーに特化してやっています。行政からの依頼もあり、少しずつ軌道に乗っています。
田代 私が進めている事業構想は、伝統工芸や職人の方々の技術をアウトドアと掛け合わせて世界に売るというものです。奈良の職人の方々に商品を作っていただき、国内外のクラウドファンディングに向けた準備をしています。
近年はものづくりの技術を持つ職人や技術者、事業者の方々が廃業することが多く、それらの方々がもっと日の目を見ないと技術が残らず、日本のものづくりは衰退すると感じています。アーティストになって一緒に頑張り、世界に向けて商品を販売したり、技術を広めて事業を継承していただきたいという私の想いに賛同してくださった方が仲間になっています。現在は商品を作って販売を始めており、最終的には、職人の方々がもっと輝ける世界を作るプラットフォームを構築したいです。
お問い合わせ
「奈良市みらい価値共創プロジェクト研究」第3期の詳細はこちらでもご確認いただけます
https://www.mpd.ac.jp/events/naraPJ3
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