2020年に誕生した称号 社会教育士を知っていますか
社会教育⼠とは
「社会教育士」という言葉を聞いたことがあるだろうか。社会教育士とは、令和2(2020)年に誕生した称号である。これまでは社会教育主事しか存在せず、社会教育の専門家を名乗ることはできなかった。社会教育主事は都道府県や市町村の教育委員会に必ず配置されなければならない職員の名称に過ぎず、社会教育主事任用資格を持っているだけでは「社会教育の専門家」と呼べなかったのである。そこで、社会教育の専門性を高めるため、新たに「社会教育士」の称号が設けられた。生涯学習社会と称され、リカレント教育・リスキリングの必要性が叫ばれる現代社会にとって、不可欠な専門職であると言えるだろう。
社会教育士には高い専門性と幅広い総合力が求められる。質の高い学習機会の設計力、受講者とのコミュニケーション力、地域課題の分析力と解決力が必要不可欠となる。理論と実践の両面から、地域社会の発展に寄与する、やりがいのある専門的な称号である。
社会教育士になるには、大学や短期大学に設置されている社会教育主事養成課程、受講にいくつかの条件があるが「社会教育主事講習」を受講し修了することができれば、社会教育士の称号を取得することができる。
そもそも社会教育とは
そもそも社会教育とは何だろうか。社会教育とは、学校教育課程の外で、自主的な意思に基づいて行う組織的な教育活動すべてを指す。学校教育とは異なり、個人の主体的な選択によって、生涯にわたり自由に学習できることが大きな特徴である。
年齢、性別、経歴、目的を問わず、誰もが参加できるのが社会教育の利点である。社会教育の対象は高齢者から子ども、専業主婦から会社員まで、多様な人々が交流し合いながら学べる場を提供しているのが社会教育である。また、習得内容も趣味の教室から資格講座、市民活動まで、多岐にわたる。
具体的な社会教育の機会としては、公民館や生涯学習センター、図書館などの社会教育施設の講座に参加することが一般的である。その他にも、学校外での学童・塾、職場の研修プログラム、スポーツ教室、文化サークル活動なども社会教育の一環と位置付けられている。つまり、学校教育以外のすべての学びが社会教育に含まれるといえる。
このように生涯を通じて自由に学び続けられる機会が用意されているのが、社会教育の最大の魅力だ。知的好奇心を満たし、生きがいを見出し、新しいスキルを身につけるなど、多様な目的のための学習が可能となる。さらには、地域の課題解決に参加することで、活力ある地域社会づくりにも寄与できる。
社会教育⼠に必要な能⼒
社会教育士には幅広い知識と専門性が求められる。それだけでなく、企画立案力・コミュニケーション力・課題発見力など、バランスの取れた総合力も不可欠だ。文部科学省では、社会教育士を説明するなかで、①ファシリテーション能力②コーディネート能力③プレゼンテーション能力が不可欠であるとしている。もちろん、社会教育・生涯学習に関する専門知識も土台として必要である。
さらに、地域が抱える現状や課題を正しく分析する力と、その解決に向けて適切な学習機会を企画できる構想力も社会教育士に求められる。地域調査を行い、状況を把握した上で、学習プログラムによる課題解決の方策を提案し、住民と協力して実践していく必要がある。社会教育の現場では、専門家として高度な知識が問われる一方で、受講者や地域社会に深く寄り添い、温かく接することも求められる。理論と実践を行き来する総合的な能力が要求される、やりがいのある仕事で、称号取得後の活躍が期待される分野だ。