第5回 地元密着こそが地域新電力の勝ち筋

地域経済のサステナビリティ確立の打ち手を探る本連載。今回は地域の脱炭素化の主力と目される新電力事業をいかに持続可能なビジネスにするか、地域での電力ビジネス支援を行う村谷氏に提案いただく。価格競争に陥らないためには、地域全体の経済循環を見据える視座が重要だ。

地域新電力の「勝てる」事業モデルとは

2021年6月の段階で、自治体が出資する「自治体新電力」の数は60程度まで増加した。現に電力小売りを行っている新電力の10%弱が自治体新電力だ。なお、これに特定の地域に密着して電力を販売するも自治体の出資を受けない「地域新電力」を合わせるとおよそ150社程度にまで達する。だが、残念なことに地域新電力の販売量は新電力全体の10%に満たないのが現状だ。多くの自治体電力、地域新電力は成長曲線を描けずに苦境に立たされている。以下、地域新電力、自治体新電力を合わせて地域新電力と呼称する。

地域新電力の目指す未来

地域新電力のモデルは図1の通り。地元の企業が新電力を設立する。複数企業が出資する場合もある。電力は、他の新電力から安定的な価格で調達をする。昨今はJEPXの市場価格が急騰することが見込まれるので、そのリスクを100%回避するために固定価格で調達するケースがほとんどだ。そして、自治体施設、自治体の民間法人施設、自治体住民に向けて電力を供給する。事業が進めば、自治体出身者や出身者が興した企業に供給する。地域新電力は、ふるさと納税のように当該地域の外部から、文字通り「外貨」を稼ぐことができる。そして、収益を活用して、事業利益を当該地域の課題解決や産業活性に役立てる形で再投資を行う。この循環を行い続けてこその、地域新電力だ。

図1 地域新電力のスキーム

出典:筆者作成

 

そのため、地域新電力は次の3大原則を守らねばならない。それは、好意的認知の獲得、利益の地域還元、電源への愛着である(図2)。新電力は、需要家の離脱防止、存在意義の確立、独自の電力調達先という3点セットが事業継続の鍵であることと、この3大原則は対応する。

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