コロナ禍の保健所業務を大幅に効率化、川口市の取り組み

コロナ禍で喫緊の課題となった自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)。さまざまな業務支援クラウドパッケージが開発されているが、埼玉県川口市ではセールスフォースの〈新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージ〉を導入。業務の大幅な効率化を実現した。

キックオフから2週間で稼働

昨年から保健行政の現場業務に大きな影響を与えている新型コロナウイルス感染症。川口市保健所では、自宅療養中の陽性者・濃厚接触者への対応を行う「健康観察チーム」、PCR検査の受診調整を行う「受診調整チーム」、陽性者の疫学調査やホテル療養・入院の調整にあたる「陽性者対応チーム」の3つのコロナ対応チームを組織。保健師と応援職員からなる約30人の体制で業務にあたっている。

第1波の後、感染者が増加していた2020年7月、2つのテーマが早急に解決すべき課題として挙がっていた。1つ目が、患者情報がバラバラに管理されていたことだ。「陽性者一覧、PCR検査の一覧などが別々のエクセルで管理されていたほか、問い合わせや相談内容、症状経過なども個人ごとに紙やワードで管理されていました。このため、必要な情報を探すのに時間がかかる、同時に編集できない、集計に時間がかかるといった問題が生じていました」と、川⼝市企画財政部情報政策課の会⽥氏。2つ目は、健康観察のため自宅待機の陽性者・濃厚接触者全員に対し毎⽇の電話業務に追われていたことだ。「昨年7月の時点では対象者が毎日200人おり、このままでは第2波がやってきたときに乗り切れないという危機感を持っていました」と当時の状況を振り返る。

会田 裕貴 川口市役所 企画財政部 情報政策課

その頃、千葉市がセールスフォース・ドットコムの〈新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージ〉を導入したという情報を報道で知りヒアリングしたところ、業務改善につながるという手ごたえが得られ、採用を決めたという。「情報の一元管理・可視化・分析ができること。また、柔軟性・拡張性に優れ、早期に現場に合ったシステムがつくれること。そして一番大切だったのは、システム操作が簡単なこと。現場にシステムを導入するには負荷がかかりますが、この簡単さなら素早く浸透できると考えました」

2020年8月7日にシステムの説明をデロイト トーマツ コンサルティングから受け、17日には導入に向けてキックオフ。約2週間後の9月1日には稼働にこぎつけた。クラウドパッケージ導入に際しては、デロイト トーマツ コンサルティングに導入支援、利用方法のサポート、追加機能の対応などを委託。川口市情報政策課が移行データの作成などにあたった。

個人ごとに情報を集約、
事務作業を大幅削減

導入後、課題はどのように解決されたのか。まず、患者情報の管理については「人を起点に、相談管理、症状経過、検査、入院・療養、接触者といった情報を紐づけることで患者情報を集約。名前、施設名などで検索すれば、ほしい情報がすぐ見つかるようになりました。外国人の名前が聞き取れない場合も電話番号等で検索することが可能になりました」。このほか、最新の検査数、陽性者数、入院・療養者数などが一覧で表示されるダッシュボード機能により、全体状況も可視化された。また、蓄積した情報はマウス操作のみで抽出、集計して表やグラフにすることができるため分析も容易になり、事務作業が大幅に削減されたという。

また、陽性者・濃厚接触者に対しては毎朝メールを送信し、メール内のURLから体温や症状などを入力してもらう仕組みを導入。一人ひとりに電話確認する作業が大幅に軽減された。体調がすぐれないと入力した人や、入力のない人に対してのみ電話確認を行い、2020年12月の第3波では最大1200人の健康観察を要したが乗り切れた。2021年7月時点では、1⽇約500件の健康観察のうち約280件をWebで確認できているという。

研修受講で
簡単な改修が可能に

一方、導入後に疑似症患者、ワクチン接種者など新たに入力したい情報が加わったほか、項目やレイアウトを変更したいという要望も出てきた。また、同じ作業の繰り返しによる入力漏れや間違いも多くみられた。これらに伴い、稼働後に80項目について設定変更の必要があったという。このうち、プログラミングが必要な26項目についてはデロイト トーマツ コンサルティングが対応を行ったが、残り54項目についてはコードが不要であったり、必要であったとしても簡便なノーコード、ローコードの作業であったため、市の情報政策課で対応できた。

「項⽬追加や画⾯レイアウト変更などの小さな改修は職員自身が担うことで、迅速な対応が可能となりました」

こうした対応を可能にしたのが、セールスフォース・ドットコムとデロイト トーマツ コンサルティングが共同で行っている研修『Pathfinderプログラム』だ。会田氏も2020年10月から21年2月にかけて本プログラムを受講し、認定資格を取得した。「導入当初はキーワードについていくのに必死でしたが、簡単な改修ができるようになったことで現場のニーズに迅速に対応できた。また、理解が深まったことでベンダーとの調整もしやすくなった」という。今後は検査結果のメール通知や、疫学調査におけるスマホ活用など、さらなる活用を進めていく。

デロイト トーマツ コンサルティングの⼭下桂史氏は自治体でのクラウドサービス導入にあたり、目的意識の重要性を強調する。川口市のケースでは、「2つの課題を解決したいという目的がはっきりしており、進めやすかった」と話す。

山下 桂史 デロイト トーマツ コンサルティング
Customer & Marketing Technologyディレクター

また、セールスフォース・ドットコムの井口氏は、行政DXにおける3要素として「スマート行政、事業者支援、人材育成」を挙げ、「まち・ひと・しごとの観点、特にスマート行政やデジタル人材育成の点で当社がサポートさせていただくことで、地域の活性化にもつながれば」と話す。

井口 統律子 セールスフォース・ドットコム
エンタープライズ金融・地域DX営業統括本部
金融&地域 DX営業本部 統括部長

さらに、セールスフォース・ドットコムでカスタマーサクセスを担当する山下靖二氏は「DXではデジタル技術を用いて顧客に新たな体験価値をもたらすことが重要」と指摘。行政においては市民や職員にどのような体験を提供するかが鍵であり、推進にはトップのコミットメントの下、組織横断的な体制が必要となるが、セールスフォース・ドットコムもパートナーとして伴走していくと語った。

山下 靖二 セールスフォース・ドットコム
カスタマーサクセス統括本部アドバイザリー本部
インプリメンテーション・アーキテクト部長
兼 スペシャリスト・アーキテクト部長

コロナ禍という大きなピンチに際し、DXを進めることで市民・職員双方の負担軽減に取り組む川口市の事例から、新たな行政サービスのあり方が見えてくる。

本記事内容の詳細は下記オンデマンドセミナーで視聴可能です
https://sfdc.oatnd.com/webinar-0720?csrc=sfdc1

 

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