マルハニチロvsニッスイ 漁業不振の中、養殖・加工に活路

かつて世界一の漁獲量を誇った日本の漁業は今、顕著な衰退傾向にある。そのなかで、大手水産業会社は、漁業・養殖事業と食品加工を柱に未来を探る。コロナ禍という試練もつきつけられた、2大水産会社の現状を見る。

養殖事業の高度化に活路

日本の漁獲量は1970年代には世界の漁獲量のうちの約17%を占め、世界一を誇っていたが、1980年代以降は急激に減少し、近年は3%程度にまで下がっている。諸外国との水産資源獲得競争の激化や漁業規制の厳格化などを背景に、国内水産会社は大きな変革を迫られている。

2021年3月期売上高は、水産最大手のマルハニチロは8626億円、2位の日本水産は6546億円となり、どちらも前年同期比で約5%の減少となった。コロナ禍に伴い水産物の飲食店需要が激減したことから、鮮魚や養殖魚、高級商材の取扱いが低調となり、減産や価格低迷も響いた。一方、冷凍食品をはじめとする家庭用商品は好調だ。

2社の戦略で共通しているのは、水産資源の持続的な利用に向けた、養殖事業の高度化への取り組みである。マルハニチロは2010年に民間初のクロマグロ完全養殖に成功、2015年に完全養殖マグロの商業出荷を開始し、2019年からは欧州への出荷も始めた。2020年には東工大発ベンチャーのTokyo Artisan IntelligenceとAIを用いた養殖魚の尾数自動計数システムを開発、ブリ・カンパチ等を養殖するグループ会社で運用している。

日本水産も2014年にホンマグロの完全養殖に成功、2018年から「喜鮪」ブランドでの出荷を開始した。水中カメラとAIで養殖魚の体長や体重を自動計測するシステムをNECと共同開発したほか、給餌制御システムや健康・養殖環境のモニタリングシステムなども実用化しており、漁業分野でのIoT・AI活用を牽引している。

世界の養殖業生産量は大幅に増加し、2013年には漁船漁業生産量を上回った。養殖の生産性向上や省人化は世界共通の課題であり、マルハニチロや日本水産のさらなる技術革新に期待が集まる。

両社概要

マルハニチロ

設立 1943年
本社 東京都江東区
代表 池見 賢 (代表取締役社長)
資本金 200億円
従業員数 11,107名(2020年3月)
事業概要 ●漁業、養殖、水産物の輸出入・加工・販売
●冷凍食品・レトルト食品・缶詰・練り製品・化成品・
 飲料の製造・加工・販売
●食肉・飼料原料の輸入
●食肉製造・加工・販売
グループ会社 ●国内:大洋エーアンドエフ(漁業・養殖)、広洋水産(水産商事)、大都魚類(荷受)、マルハニチロ九州(家庭用冷凍食品)、マルハニチロ北日本(家庭用加工食品)など44社
●海外:26社

出典:ホームページ、第76期有価証券報告書

出典:会社案内

 

日本水産

事業概要●水産(漁業・養殖・加工・販売)
●食品(冷凍食品、缶詰・瓶詰、練り製品、中食等)
●ファインケミカル(サプリメント等)
●物流(低温一貫物流等)
●海洋関連・エンジニアリング(船舶建造等)
設立 1943年(創業1911年)
本社 東京都港区
代表 的埜 明世(代表取締役社長執行役員)
資本金 306億円
従業員数 9,431名
グループ会社 ●国内:北海道日水(冷蔵倉庫・水産品製造販売等)、ホウスイ(水産品製造販売等)、ケイ低温フーズ(総合食品卸売)、北九州ニッスイ(食品製造・販売)、金子産業(養殖等)など41社
   ●海外:32社

出典:ホームページ、会社案内

出典:会社案内ほか

 

両社業績

マルハニチロ

出典:決算短信

 

日本水産

出典:決算短信

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