NTT西日本グループ 「森林・林業DX」でつなぐ地域活性化

NTT西日本と地域創生Coデザイン研究所は、宮崎県で「森林・林業DX構想」を推進。森林情報のデジタル化とデータ活用により、幅広い森林・林業関係者をつなぎ、森林管理の効率化や木材の需給マッチングなどを実現することで、持続可能な林業と地域活性化をめざしていく。

桒畑 秀哉 NTT西日本 宮崎支店長

日本は国土面積の3分の2を森林が占め、その約4割が人工林で、これらの約半分は伐採適齢期を迎えている。森林は国土保全や水源かん養、CO2吸収等の多面的な機能を有しており、適切な管理が欠かせない。しかし、安価な輸入木材等に押され、国内林業の競争力が低下し、伐採や再造林が進まない負のスパイラルに陥っている。放置林は災害に弱く、CO2吸収源としても認められないため、地域の防災面や脱炭素の妨げとなる。政府が掲げる「2030年の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減」という目標も、適切な森林管理を行わなければ達成が難しいだろう。

こうした課題に対して、NTT西日本と地域創生Coデザイン研究所は、「森林・林業DX構想」を推進している。

「宮崎県はスギ素材生産量が30年連続日本一。地域に根ざすNTT西日本グループとして、地域産業の活性化は社会的使命であり、地域の皆様と森林・林業の課題や森林関係者のお困りごとを解決するためにプロジェクトを開始しました」と地域創生Coデザイン研究所担当部長の赤阪祐二氏は語る。

赤阪 祐二 地域創生Coデザイン研究所 担当部長

森林クラウドで
林業の川上から川下までをつなぐ

森林・林業DX構想は、膨大な森林情報をデジタル化し、地域固有の情報とかけ合わせて、自治体だけでなく、森林所有者・森林組合・製材所等の林業関係者に対して、新しい価値を提供することを目的としている。

具体的には、人工衛星やドローン、AI等を活用し、樹種、木の本数、材積、面積等の森林情報をデジタル化し、効率的な管理がしやすい環境をつくる。ここに、地域が管理する森林情報(境界線、林道、地番、所有者、林班等)をかけ合わせ、あらゆる森林・林業関係者をつなぎ新たな価値を提供する「森林クラウド」を構築する。

森林クラウド(実証中)の画面イメージ

「データをかけ合わせれば、森林の現在・将来の資産価値やCO2吸収量を推計することも可能になります。森林クラウドでは、林業の川上である森林所有者から、川下につながる流通事業者や製材所、バイオマス発電所等までをデータでつなぎ、新しいコミュニティを創造していきます。それにより、森林管理の委託や立木売買等の様々な取引が活性化し、国産材の活用促進につながる『需給マッチング』も実現できると考えています」(赤阪氏)

こうした取り組みで、理想の森林ライフサイクルを実現し、土砂災害防止や脱炭素社会の実現をめざす。さらに、需要に基づいた計画的な森林施業を行えるようになれば、国産材の安定供給や計画的・効率的な森林施業、ひいては林業従事者の担い手不足の改善が図れるだろう。

森林・林業DX構想による森林クラウドは民間利用に重点を置くが、自治体の利用メリットも大きい。「2019年に施行された森林経営管理法によって、適切な管理が行えない森林の経営管理は市町村が行うことになり、データベース活用が必須の状況です。森林地形情報を現場と共有・活用することで、市町村等は森林整備計画の策定・実行管理なども可能になるでしょう」とNTT西日本宮崎支店長の桒畑秀哉氏は話す。

図 森林・林業DX構想

出典:地域創生Coデザイン研究所

 

宮崎県諸塚村で産学官実証事業

NTT西日本グループは、宮崎県諸塚村をフィールドに森林クラウドの実証を進めている。「諸塚村は自治体として日本で初めてFSC認証(国際的な森林認証制度)を取得し、林業のICT活用にも非常に熱心な自治体です」(桒畑氏)。2021年4月に諸塚村、宮崎県森林組合連合会、耳川広域森林組合、宮崎県木材協同組合連合会、宮崎大学と協働で「諸塚村森林・林業DX推進協議会」を設立、産学官連携による効果検証やさらなる改善に向けた検討を進めている。

すでに森林情報のデジタル化や所有者への資産価値の可視化、需給マッチングの実証を進めており、協議会参画団体からの森林クラウドへの評価は高い。「これまでは林業従事者が実際に森林に入り、木々一本一本の調査と価値評価に10haあたり数人で約10日間を要し、情報の手入力も必要でしたが、ドローン活用やAIデータ解析によって、作業量は40分の1程度に削減できることが実証されました」(桒畑氏)

NTT西日本グループは、上述の実証を皮切りに、森林・林業の循環モデルの社会実装をめざしていく。「森林クラウドによって適切に整備・管理された山林は、資産価値が向上するという流れを生みます。今回の実証ではCO2吸収量の可視化も実現しており、将来炭素クレジットの流通によって人々の関心を高め、次世代につながる再造林の好循環を創りたいと考えています。さらに、林業を起点に、気候変動対策や農業、観光、医療など他分野への貢献による森林の新たな可能性の開拓を進めていきます。こうした活動を通し、地域創生Coデザイン研究所は、地域の特色を活かした産業を起点とした地域活性化に取り組んで参ります」と赤阪氏は意気込みを語った。

 

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