デジ田構想に基づく自治体の注力分野が判明 第3回アンケート調査結果

月刊事業構想は全国都道府県・市区町村の首長を対象に、3回目となる自治体DXに関するアンケート調査を実施した。今回は、デジタル田園都市国家構想を受けて自治体外部(住民や民間企業など)に向けたDXの取組を詳細に調査し、自治体の注力分野を明らかにした。

■ 調査サマリー
○ DXに関する全体方針の策定状況に関しては、8割近くが策定済みもしくは策定予定。
○ DX推進の専門部署を設置している自治体は56.6%と前回調査時よりも増加。未設置自治体の多くは予算や人員、人材不足に課題を抱えている。
○ デジタル田園都市構想に関する取組では、行政DXの推進に注力する自治体が多い一方で、医療・交通・産業振興などの分野は道半ば。

■ 調査の概要
○ 調査名:第3回自治体DX全国首長アンケート
○ 調査内容:自治体DX推進計画等の策定状況、DX推進体制、デジタル田園都市国家構想の取組等について
○ 回答対象:都道府県・市区町村の首長(送付数:1788件)
○ 回答数:550件(2023年7月11日現在)
○ 回答方法:郵送およびWEBを利用したアンケート調査
○ 実施期間:2023年5月〜6月
○ 調査主体:学校法人先端教育機構「月刊事業構想」、NTTコミュニケーションズ株式会社

 

1) DX推進に関する方針等の整備状況について

2) DX推進に関する専門部署について

3)外部人材活用の状況について

4)デジタル田園都市国家構想に関する各分野・取組項目についての注力・進捗状況

■ まとめ
▶ DX推進に関する全体方針の策定状況は、2022年の前回調査(以下「前回調査」)に比べ、策定済及び着手済・策定予定を合わせて76.9%(前回比15.2ポイント増)と着実に増加しており、国全体のDX推進方針に沿い、各自治体のDXについての認識向上及び政策的基盤の整備は順調に進んできている。
また、方針策定予定の自治体における策定体制に関しては、自治体職員のみで検討・策定をする自治体は35.1%(同5.2ポイント減)で減少傾向にある一方、外部専門機関の協力を得ながら自治体職員が検討・策定する自治体が51.3%(同11.8ポイント増)と増加していることから、特に民間との共創が必要となるDXのような専門的分野の政策形成においては、公民連携が拡大してきているものと評価できる。

▶ 全体方針の策定が大きく進むなか、具体的な推進に必要となる組織の設置状況を見てみると、DX推進のための専門部署を設置済みの自治体は56.6%(同18.3ポイント増)と増加した一方、今後設置予定がない自治体は96.1%(同17.8ポイント増)と明確に方向性が分かれてきている。
予定なしの理由について本調査の自由記述部分をピックアップすると、小規模自治体において、既存の政策部門等で推進できている場合も見受けられるが、多くの自治体で予算や人員、人材不足を理由としており、この点は今後の日本全体のDX推進においての大きな課題の一つになるであろう。

▶ 具体的なDXの取組状況について、今回はデジタル田園都市国家構想を受け、前回調査の自治体DX推進計画に挙げられている取組に加えて、特に自治体外部(住民や民間企業など)に向けた分野・取組について大幅に内容を拡充・詳細化して調査している。
各分野・取組のうち、現時点で自治体が注力している取組の上位は、前回でも調査した行政手続オンライン化やRPA活用等の庁内事務業務効率化など主に自治体本体のDXである。これは、従来から先行している自治体DX推進計画を受けた結果であると思われる。
今回拡充した、より住民や民間企業等に関するDX推進の分野・取組においては、GIGAスクール構想として進められた教育分野では一定の進捗が認められた。しかし、医療・福祉や一次産業、産業振興など自治体外部の住民や企業の利便性・サービス内容をDXで向上させるようなものは、注力度及び進捗度ともに低い傾向となった。

▶ 前々回より毎年、継続して3回の調査をした結果として、各自治体のDXに関する政策的基盤は整ってきており、自治体そのもののDXは徐々にだが着実に進んできていることが分かった。
しかしながら、住民や民間企業の利便性やサービスの向上に関する分野や取組、つまり地域DXについては、今後の課題であることが見えた。これら自治体外部が関わる分野や取組のDXの多くは、当然ながら自治体だけで進めることは出来ず、各分野の事業者や住民との積極的な連携を進め、共に新たな価値を創る「共創」を拡大していくことが一層期待される。
また、小規模自治体に見られる人員や専門人材の不足については、地域DXに関する大きな地域間格差を生む原因になることが推察されるところであり、各地域の住民や民間企業等が所在地に関わらずデジタル化の恩恵を受けられるよう、国や都道府県、民間企業・団体などによる、さらなるフォローが行われる必要があるものと考えられる。

(事業構想大学院大学 教授 河村昌美)

 

【調査内容に関するお問い合わせ】 学校法人先端教育機構
自治体DX全国首長アンケート事務局
Mail:media-survey@sentankyo.ac.jp

【記事内容に関する自治体からのお問い合わせ先】 NTTコミュニケーションズ株式会社
ソリューション&マーケティング本部 ソリューションコンサルティング部 地域協創推進部門
連絡先:support-municipal-sales@ml.ntt.com

 

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