なぜ「未来対応型人財」が必要なのか アデコの描く日本の労働市場

世界60以上の国と地域で人材サービスを展開するアデコグループ。その日本法人であるアデコ株式会社は、少子高齢化を背景とした深刻な人材不足に直面する日本の労働市場を見据え、「2030年成長戦略」を発表した。同戦略の中核として「未来共創人財プロジェクト~Future Talent Project~」」を推進し、グループパーパスである 「Making the future work for everyone」の実現を目指す。AIの進展により働き方が大きく変容する中、人とテクノロジーはいかに共創し、新たな価値を生み出していくのか。その鍵となる「未来対応型人財」のあり方とは何か。代表取締役社長・平野健二氏に、その構想と展望を聞いた。

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平野 健司(アデコ株式会社 代表取締役社長)

多様な人材サービスと
「人の力」で築く、競争優位性

平野氏は2004年の入社以来、営業の最前線で経験を積み、執行役員を経て、2024年4月に代表取締役社長に就任した。現場と経営の双方を知るそのキャリアは、同社が進める組織変革の方向性にも反映されている。

アデコの強みの一つは、人材派遣、人材紹介、アウトソーシング、HRコンサルティングまでを網羅するサービスの幅広さにある。Adecco、LHHといったブランドを軸に、クライアントの多様なニーズにワンストップで応えられる体制を構築してきた。

しかし、平野氏が最も重視するのは、こうした事業基盤を支える「人」と「文化」だ。「『アデコの人は本当に人がいい』と言われることが多いです。社風はとてもオープンで、多様性を受け入れる文化があり、人の温かみを感じられる組織です。AIなどのテクノロジーが急速に進化する時代だからこそ、こうした人間的な価値がより重要になると考えています」と平野氏は語る。

AI時代の労働市場を切り開く
「未来対応型人財」

アデコは、2030年を見据えた中期経営計画を発表。その中で「未来対応型人財」の育成を推進していく方針を掲げている。「未来対応型人財」とは、アデコグループが発表したレポート『Global Workforce of the Future 2025』で示された概念で、AI時代においてテクノロジーと共創しながら、新たな価値を生み出せる人材を指す。テクノロジーへの深い理解を備え、変化に柔軟に対応できる高い適応力を持つことが前提となる。さらに、自らのリスキリングに主体的に取り組み、キャリア形成を自律的に進めていける点も、重要な要素と位置づけられている。「今後、日本ではさらなる人手不足が見込まれるとともに、シニア層が一層増加すると想定されます。そこで、日本人がテクノロジー、特にAIを活用しながら、自身のキャリアをどのように描き、そのために何を学び直すのか。そうした問いに応えるリスキリングの環境づくりや研修の提供を、今後さらに進めていきます。」と平野氏は展望を語る。

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地方自治体とともに社会課題を解く
パブリックセクター支援の進化

中期経営計画における成長戦略の一つとして、アデコは地方創生への貢献を明確に位置づけている。2024年には、自治体支援に特化した「パブリックソリューション本部」を設立し、体制を強化している。

「地方自治体では、職員不足に加え、政策提言や事業構想に関するノウハウ不足など、複合的な課題を抱えています」と平野氏は語る。

アデコはグループのスケールと知見を生かし、首都圏で担われてきた業務を地方へ移管。各地のBPO拠点を通じて雇用を創出するとともに、首都圏人材や外国籍人材を地方の業務につなげることで、人材不足の解消と地域活性化の両立を図っている。さらに、自治体へのコンサルティング支援を提供し、新たな価値創出やビジネス創出を後押しする。近年では、データセンター誘致や介護人財育成構想など、首長や中央省庁からの相談も増えているという。「地方創生はまだ道半ばではないかと感じています。だからこそ、具体的な成果を生み出していきたい」と、平野氏は力を込める。

社員の自律的成長が組織を強くする
人財育成とキャリア支援

 アデコの最大の強みは「人」にある。同社では、その価値を持続的に高めるための取り組みを進めている。根底にあるのは、「社員一人ひとりが主体的にキャリアを描くことが、結果として組織全体の力を高める」という考え方だ。

 アデコでは、社員が自らの将来像や身に付けたいスキルについて、上司や周囲と率直に語り合える機会を意識的に設けている。「自分が将来どうなりたいのか、どのようなスキルを身につけたいのかを話し合える場を大切にしています」と平野氏は語る。

 こうした対話を支える基盤として、組織としてウェルビーイングを推進し、業務やキャリアに関する意見を安心して共有できる関係性づくりを進めている。さらに、多様な業界の顧客との接点を通じて、社員が自身のキャリアを多角的に捉える機会も後押ししている。

 こうした環境の中で育まれているのが、社会や市場の変化を捉えながら学び続け、明確な目的意識を持って行動する人材像だ。「お客様やチーム、さらには社会全体への貢献を意識している点も共通しています」と平野氏は語る。

 自律的なキャリア形成を後押しする仕組みと、一人ひとりがビジョンを持って行動する文化が、結果として顧客への提供価値を高めている。

2030年、その先を見据えて
人とAIで「共創」する未来の働き方

2030年に向けて掲げた計画の実現は決して容易ではない。だが平野氏は、社会構造の変化を見据えれば、取り組み次第で新たな可能性は十分に開けると語る。
「2030年にはシニア層がさらに増加し、定年は70歳、場合によっては80代まで働く時代が到来するでしょう。日常的にテクノロジーに触れてきた現在の50〜60代が継続的にリスキリングを重ねることで、10年後にはAIやテクノロジーを使いこなす70代として、活躍の場は確実に広がっていきます」
 アデコは今後5年間、「未来対応型人財」を軸に、地方との連携強化、外国籍人材の活用、デジタル人材の増強といった施策を通じて、日本の労働市場の変革に取り組んでいく。AI時代における日本の労働市場の変化を見据えながら、グループパーパスである「Making the future work for everyone」の実現に向け、同社は挑戦を続ける。

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