第1回 国際経済・政治の動きから読む、ビジネスの脱炭素シフト

今やビジネスの最重要キーワードとなった「脱炭素」。政府・産業ともに取り組みが加速しており、国際潮流も含めて押さえておきたい領域だ。本連載では環境領域の研究・政策提言を行う地球環境戦略研究機関(IGES)のメンバーとともに、脱炭素時代の事業環境を予測する。

COP26を見据え、加速する脱炭素

――昨年のカーボンニュートラル宣言以降、「脱炭素」が定着しました。一過性のブームのようにも見えますが、背景には長い経緯があるようですね。

高橋 健太郎 地球環境戦略研究機関〔IGES〕

1997年採択、2005年に発効した京都議定書の第一約束期間が始まる2008年前後に、今でいう脱炭素バブルのような地球温暖化関係のビジネスが活発になりました。しかし、リーマンショックとともに金融・ビジネスサイドの動きは大きく落ち込み、日本は米中等の主要経済国が参加する公平かつ実効的な新たな枠組みの構築が必要であるとの立場をとり、京都議定書第二約束期間に不参加を表明しました。その後、2015年にパリ協定が採択されて再び気候変動対策と脱炭素が重要課題となり、今に至ります。

2015年以降の動きで特筆すべきなのは、非政府主体、つまり企業や自治体などが参画し、気候変動に対する行動が強化されたことです。私も2011年頃から日本政府代表団の交渉支援に携わる形でCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)に参加していますが、パリで開催されたCOP21以降、非政府主体の参加が重要視され、COP会場内に非政府主体専用のブース・パビリオンエリアが設置されることも多くなっています。今年11月に英・グラスゴーで開催されるCOP26でも、登録すれば企業なども参加できる「グリーンゾーン」が設けられています。

日本でも2018年頃から多くの自治体における気候変動対策行動計画で脱炭素が議論されはじめたことで、自治体による「ネット・ゼロ宣言」の相次ぐ発表、そして、企業のTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応などが加速しています。投資サイドの要求に加え、昨年10月に菅首相が発表した「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」という日本政府の大胆な目標設定が国内での脱炭素バブルや、関連するビジネス等へのインパクトにつながっているといえます。

――脱炭素は大手企業中心の話題という印象もあります。中小企業へは影響があるのでしょうか?

今は投資家からの圧力で大企業が動かざるを得ないフェーズかと思います。今、大企業の「ネット・ゼロ宣言」が相次いでいますが、COP26まではこれが続くのではないでしょうか。同時に、先進的な企業では経営戦略と直結する脱炭素の部署を設置したり、社内で横断的なタスクフォースが立ち上がったりしています。さらに、2050年に向けた段階的な戦略の策定を進めているところもあるようです。こうした大企業の戦略が、サプライチェーンに連なる中小企業にも及びます。

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