宮城県は60%の業務効率化を実現 自治体DXは予算執行業務から

富士ソフトは、2012年からSAP Concurの導入支援パートナーを担っており、SAP Concurのクラウド型旅費・予算執行業務サービスの提案から運用保守までを提供。両社が連携し、複数の自治体で予算執行業務におけるDXの実証実験も行っている。その成果をもとに、自治体DXのポイントを解説する。

左より、富士ソフト株式会社 ソリューション事業本部 情報ソリューション事業部 クラウドサービス部 クラウドサービスインプリメンテーショングループ 課長 中村 裕氏、株式会社コンカー パートナー&カスタマー統括本部 公共営業本部 公共営業部 Public Sales Executive 岩屋 光一郎氏

身近な業務から小さく始めて
デジタルへの不信感を払拭

新型コロナウイルス対応を契機に、社会全体のDXが求められている。総務省が2024年4月に公表した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第3.0版】」では、自治体がDXに取り組む意義として、デジタル技術やデータを活用して住民の利便性を向上させること、業務効率化により人的資源を行政サービスの向上に繋げることの2点が挙げられている。

「これらの実現には、住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割が極めて重要です。自治体がDXを推進する意義は非常に大きいことから、当社は民間企業向けSaaS型経費精算ベンダーで国内シェア No.1の株式会社コンカー(以下、コンカー)と連携のもと、DX推進に力を入れてきました」と話すのは、富士ソフトでSAP Concur導入支援を担当する中村 裕氏だ。富士ソフトは横浜に本社を置く独立系ITソリューションベンダー。コンカーが日本で事業を始めて間もない2012年から導入支援パートナーを担い、SAP Concurの導入からアフターサポートまでを一括提供している。中村氏によれば、自治体業務の中でデジタル化が最も必要とされるのは財務会計であり、なかでも紙依存が高いのが予算執行業務だと言う。

「自治体の内部事務では、紙と専用ツールの併用も含め、紙を利用した業務が8割を占めます。そうしたアナログ業務をデジタルに置き換えることが、自治体DXの第一歩です」(中村氏)

一方、コンカー公共営業部の岩屋 光一郎氏は、定期的なパンデミックの発生や職員不足の加速といったリスクが内包するなか、「複雑化・多様化する住民ニーズに対応していくには、デジタル化の検討が欠かせない」と話す。

「現行業務を変えることへの抵抗感やデジタルへの不信感。こういったDXの阻害要因を払拭するには、少額予算の消耗品や備品購入、毎月定型的な科目などの身近な業務から着手することが鍵となります。その結果、職員全体が業務自動化による生産性向上、ヒューマンエラー防止によるガバナンス強化などの効果を体感でき、庁内の意識改革にも繋がります」(岩屋氏)

システムによる自動チェックが
予算執行の効率化に大きく貢献

コンカーは近年、公共機関へのDX支援を強化し、2024年度内に国内データセンターを設置する他、政府情報システムのためのセキュリティ認定制度「ISMAP」の登録準備も進めている。コンカーが公共機関向けに提供するのは、支出負担行為・支出命令の業務処理の自動化と請求書管理といった予算執行機能を代替する「Concur Invoice」と、旅費の立替精算を実現する「Concur Expense」の2つ。いずれも、今なお紙とハンコの文化が残る業務だ。

「そもそも予算執行業務は紙と人を前提としているため、各ステップでの業務負荷、属人的なスキル依存、データ収集に多くのリソースが割かれています。これらを電子化することで、決裁文書の自動作成、既存の会計規則チェックロジックに基づく自動のシステムチェック、集約したデータの可視化分析といった機能がクラウドサービス上で実現され、業務効率向上とコスト削減を実現できます(図)」(岩屋氏)

図 コンカーで実現する予算執行業務のプロセスイメージ

出典:富士ソフト、コンカー

Concur Invoice導入後の予算執行業務のフローとしては、まず電子見積書を受領して支出負担行為を処理する際、その承認行為はシステムによる自動チェックがなされ、承認者の承認負担を軽減する。請求書を受領した際は、その内容を自動反映し、支出命令書の自動作成、自動起案、電子決裁という流れで進む。予め設定した会計規則に沿って入力内容をチェックすることで、起案者・承認者・審査者それぞれの観点で効率化を図ることが可能だ。

「ただし、電子請求書の受領が難しい場合は、紙の請求書をAIで読み込んでクラウドにデータを送信するAI-OCR技術や、請求書のスキャニングや入力対応などを提供する当社独自のBPOサービスを駆使していただくことで、業務効率化の効果を担保いたします。なお、本サービスは財務会計システム内の歳出管理機能を担うものであり、財務会計システム自体はコンカー導入後も引き続きご利用いただく必要があります」(岩屋氏)

とりわけ大きな特徴は、システムによる規則の自動チェックだ。支出命令書の作成時に、財務会計規則・通達等に合っているかどうかや、入力必須項目の抜け漏れなどを自動でチェックするものだが、「支出の目的・用途が妥当かの判断、また専門性が高くシステムでの判断が困難な項目については目視での判断に委ね、承認審査業務のメリハリをつけるという点がポイントになります」と岩屋氏は付け加えた。

実証実験で得られた成果をもとに
自治体DXを強力サポート

富士ソフトとコンカーは、自治体での実証実験にも力を入れている。宮城県では、支出負担行為と支出命令を同時に行う兼命令業務を中心とした年間約19万5千件もの予算執行業務をConcur Invoiceで実施することで、年間約5万4千時間、費用換算で約1,700万円を削減。効率化効果は60%削減を見込めることがわかった。

こうした取り組みの成果から、自治体DXにおける効果を最大限発揮するためのポイントは2つあると中村氏は話す。1つは、現場業務においてあるべき姿を検討することだ。

「実証実験では現状の業務プロセスの分析から開始し、あるべき姿とのギャップ箇所を特定して課題を整理。その上で、コンカーデモ機を利用してサンプルデータによる兼命令・支払い処理の実証実験を行います」(中村氏)

2つ目は、DXで効果が出やすい業務対象から取り組むことだ。宮城県のように対象業務の30%を占める兼命令業務に絞って取り組み、成功体験を得ることで、DXによる変革が加速化し、その効果も大きなものとなるという。

最後に、中村氏は「富士ソフトとコンカーは民間企業で培ったベストプラクティスをもとに、今後も力強く自治体DXを伴走させていただきます。予算執行業務におけるシステム導入判断のための実証実験(PoC)のご相談も承っています。ぜひお気軽にご相談ください」と締め括った。

 

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