財務DXで変わる自治体経営 予算・執行・成果をつなぎ説明責任を果たす行政へ
トーマツは、財務会計事務の見直しを起点に予算執行、資源配分、成果の見える化をつなぐ「財務DX」支援を展開する。AI活用と業務再構築により、住民・議会への説明責任を支える。
佐久間 己晴(有限責任監査法人トーマツ
パブリックセクター・ヘルスケア事業部
シニアマネジャー 公認会計士)
国内の多くの自治体では、増え続ける業務の一方で、職員と財源の確保が年々難しくなっている。有限責任監査法人トーマツの佐久間己晴氏は、「自治体の仕事は、何かを抜本的に変える必要に直面しています」と指摘する。
全庁にインパクトを与える
財務会計事務のデジタル化
自治体業務を大きく変革する手段となるのがデジタル化とAIの活用。その中でも、財務会計事務の見直しを起点とする「財務DX」は、特定部署の業務軽減にとどまらず、全庁の業務プロセスや意思決定、住民・議会への説明責任に波及する取組である。
今、自治体に求められているのは、①予算執行を正確・適切に行うこと、②限られた財源を適切に配分し、必要に応じて見直すこと、③行政活動の成果を住民や議会に分かりやすく示すこと。財務DXは、この3つを支える基盤をつくる取組であり、全庁に共通する財務会計事務の見直しはその入口だ。
AIと効率化により、限られた職員数で住民に向き合った自治体サービスを実現できる
請求書入力や伝票起票、決裁、差戻し対応に、今も多くの時間が費やされている。自治体の財務会計事務の効率改善に向け、トーマツは人口10万人規模のある自治体と共同研究を行った。約1年かけて現場と課題を整理し、ルールの見直しや執行体制の再設計などの業務再構築(BPR)、AI活用の可能性検証を進めた。共同研究では、対象業務の一部について作業時間削減効果の試算も行っており、今後は実際の業務への導入を進めていく予定だ。
佐久間氏は「対象業務が複雑で負担が大きいほど、改善余地も大きく、効果試算は比較的示しやすい面があります。難しいのはその先です。工程を減らしつつ、信頼性や説明可能性をどう担保するかまで設計しなければなりません」と話す。例えば、5段階の確認でミスを防いできた処理を3段階で回す設計に見直すとき、「本当に大丈夫なのか」という不安をどう解消するか。システムやAIで補う部分と人が判断する部分を整理する必要がある。
財務DXにより、日々の財務会計データが蓄積されれば、決算を待たずに年度途中で事業進捗を把握でき、予算配分や見直しをデータに基づいて判断しやすくなる。さらに新年度の予算編成も、前年比の増減調整から、成果に向けて資源をどこへ配分するかを考える場へと変わる。財政課や会計課は、これまでのように処理の正確性を担保するだけでなく、全庁の財務データをもとに、庁内の意思決定、資源配分、内部統制、地域への説明責任を支える役割を担うことになるだろう。
「行政の説明責任は、住民から託された税金を適正に処理した、という報告から、成果をめぐる対話へ変わっていくはず」と佐久間氏は期待する。
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