市原ぞうの国坂本園長 トップモデルが切り開いた動物ファーストの園
戦後から4年後の1949年。米軍基地内で働く日本人の母と米軍人の父との間に坂本小百合は生まれた。高度経済成長期の真っ只中にトップモデルとして活躍する一方で2度の結婚を経験し動物業界へ転身。自ら開園した私立動物園『市原ぞうの国』を人気園に成長させ、道を切り拓いてきた。その人生はまさにドラマの如く。著書や映画でも描かれたその半生に迫る。
文・油井なおみ
貧乏を馬鹿にされた悔しさをバネに
トップモデルに昇りつめた20代
横浜・元町といえば華やかな街のイメージだが、坂本小百合が生まれ育ったのは細い路地の奥の借家。そこで曾祖母と茶道や華道を教える祖母と母と4人、倹しく暮らした。
それでも母は坂本にしっかりとした教育を受けさせるべく、幼稚園はカトリック系、小学校は私立の名門ミッションスクールに通わせた。同級生は裕福な家の娘ばかり。坂本は自らの貧しさを目の当たりにしたという。
「早く自分で稼げるようになりたいということは漠然と思っていましたね」
その思いを決定づけたのは、坂本の場合、初恋がきっかけだった。中高時代に交際した相手は苦労して財を成した一族の後継者。結婚を考えるほどの仲だったが、その実業家の母親から「家の格が違う」と反対されたという。
「『絶対稼げるようになってやる』と仕事にのめり込みました。今の私があるのは彼のお母さんのお陰でもあります。実際、その彼とお母さんとは彼らが亡くなるまで交流がありました」
雑誌の表紙やテレビCMで坂本を見ない日はないというほど売れっ子モデルに成長し、20歳でモデル仲間と結婚。一軒家を購入し母を呼び寄せた。
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