戸田建設の地域創生まちづくり事業 連携で地域の活性化を目指す

戸田建設は、社会課題を解決する新事業の創造を目指す「戦略事業推進室」を2017年度に新設した。茨城県常総市では公民連携の「アグリサイエンスバレー構想」を通じ、産業団地の整備を通じた農業の課題解決や地域創生まちづくりへの取り組みを進めている。

今年、創業140周年を迎える総合建設会社の戸田建設は、総合建設業の枠組みにとらわれない「新たな領域」での価値創出に挑戦を続けている。

「当社では本業の建築工事、土木工事以外でも、様々な取り組みを行っています。戦略事業推進室は、事業の多様化やグローバル化に対応し、挑戦によって社会に新しい価値を提供する役目を担っています」。

飯田 勝 戸田建設戦略事業推進室 国内投資開発事業部
地域価値創生部部長

戸田建設戦略事業推進室国内投資開発事業部、地域価値創生部部長の飯田勝氏はこう語る。その具体的な取り組みには、例えば、本社の建替を通じた都市再生事業がある。この事業では、他の事業者と共に東京都中央区の京橋一丁目東地区開発事業を実施。現在、2024年に完成予定の本社ビル建替とあわせ、地域の防災対応力強化や芸術・文化の拠点づくりも進めている。

一方、再生可能エネルギー事業では長崎県五島市において、海に浮かぶ浮体式洋上風力発電施設の活用を進めている。国内初の商用運転の浮体式洋上風力発電施設で、あわせて水素燃料電池船の実証も行っている。これらを通じ、地域資源の利活用による脱炭素社会の実現を目指す。さらに、離島におけるRE100 Island and Village構想では、余剰エネルギーの島外への販売で、エネルギーの「地産外消」にも挑戦していく。

五島市椛島沖の浮体式洋上風力発電(撮影者:西山 芳一氏)

地域が活躍する持続可能な
事業の推進を目指す

「当社では環境保全への取り組みには、いち早く力を入れてきました。私たちが目指しているのは、地域が活躍する持続可能な事業の推進です」。

戸田建設では数多くの土地区画整理事業にも取り組んでおり、その中には農地を転用する事業が多く含まれる。農家を取り巻く状況は地域ごとに様々だが、全国には地権者の高齢化や担い手・後継者不足が深刻になっている地域が多い。

「農家の担い手がいなくなり、優良な田んぼや畑が少なくなっていく中、私たちも一抹の寂しさを感じ、『本当にそれで良いのか』と疑問を抱いていました。そこで農地を転用するだけでなく、逆に農業に活かす開発ができないかという発想に至ったのです。このような中、常総市の『アグリサイエンスバレー構想』に関わる機会に恵まれ、2014年には市と公民連携(PPP)協定を締結しました」。

アグリサイエンスバレー構想では、農業の6次産業化が1つのキーワードとなっている。その中で戸田建設は官民連携パートナーとして、産業団地の整備やにぎわいの創出、農業や再エネ事業、社会貢献という様々な領域で、従来のゼネコンの業務にとらわれない事業を展開している。

常総市では特に、農業や産業の振興、2015年9月の鬼怒川決壊による水害からの復興、人口減少への対応、という課題があった。これらの課題に対し、市と戸田建設はPPP 協定に基づき、協力して取り組みを進めてきた。

アグリサイエンスバレー構想には、土地区画整理事業で産業団地を生み出す「産業団地エリア」と、土地改良事業で生産性の高い農地を生み出す「農業生産エリア」がある。また、常総市はその拠点となる公共施設として道の駅を整備している。この道の駅と隣接して、戸田建設が運営する民間商業施設が造られ、公民連携で事業全体が盛り上げていく計画だ。

「産業団地エリアでは産業団地への企業誘致によって、地域の雇用創出や企業立地による税収確保といった大きなメリットが生まれます。一方、にぎわいの創出に向けては、道の駅と連携する商業施設の整備・運営を戸田建設が担います。そして幅広いエリアから集客を図れる施設にすると共に、地域の新たなブランドも創出していきます」。

実証研究施設「TODA農房」
自ら農業にも参入

事業に使用する電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ「RE 100」にも加盟している戸田建設は、アグリサイエンスバレー構想でも、産業団地や商業施設で積極的に再エネ事業を検討している。さらに参画企業と連携し「省エネ・蓄エネ・創エネ」という3つの領域で、地域への貢献を目指す。

一方、農業に関する取り組みでは、農地を集約し、大規模施設園芸の実現を支援すると共に農業への新たな参入を促す。農業生産エリア内の大規模施設園芸ゾーンでは、パートナー企業と新たな雇用を創出する地域農業を検討し、地域の農業課題の解決に取り組む。

また、この事業では戸田建設も自ら農業に参入している。2017年に建設した実証研究施設「TODA農房」では、IoT施設園芸の実証・実践に加え、地域への普及を進めている。養液を与えながら高い位置で栽培を行う「高設養液栽培方式」を採用し、イチゴ栽培を行っている。温度や湿度、二酸化炭素(CO2)濃度などは IoT(モノのインターネット) を駆使してデータで管理し、それらのデータを将来の栽培にも活かしていく。

TODA農房内の園芸ハウス「SORAリウム」。内部の日照量を従来型施設よりも増やせる構造になっており、データでも確認した

TODA農房で使用されている園芸ハウスは、自社開発の「SORAリウム」だ。SORAリウムには、採光性を高める様々な工夫とハウス内環境の自動制御等の技術が集約されている。

これによって、従来のハウスに比べて、ハウス内の温度を変えることなく高い日射量を得ることができる。

TODA農房では、国際的な農業認証の「ASIAGAP」も取得しているほか、農業の6次産業化に向けた加工品の商品開発も進めている。農房で実際に作業に従事しているのは、市や地元の人々だ。「戸田建設はTODA農房で『地域雇用+ IoT』として、誰でもできる農場運営の実践を標榜しています」。

戸田建設では今後、アグリサイエンスバレー構想に代表されるような地域創生事業を「地方分散型社会実現モデル」として、全国の他の地域にも展開していく方針だ。

 

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戸田建設株式会社 戦略事業推進室
〒104-0031 東京都中央区京橋1-18-1 
八重洲宝町ビル8階
URL:https://www.toda.co.jp/
TEL:03-3535-6311
MAIL:info@toda-noubou.com

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