LEXUS(トヨタ自動車) vs メルセデス・ベンツ日本 高級車ブランドのEV戦略

トヨタの高級車ブランドLEXUS、ドイツのメルセデス・ベンツ。世界的な二つのプレミアムカーブランドは今、急速にEVシフトを進める。EV比率が低い日本での普及に向けて、この2ブランドはどのような戦略を展開するのか。

世界のEVシフトを加速する、二大プレミアムカーブランド

欧米でバッテリーEV(BEV)へのシフトが急激に進む。欧州では新車販売台数に占めるBEVの割合が1割を超え、米国でもテスラが市場を牽引して3%近くに拡大している。日本では、ハイブリッド車(HV)の普及が進んだこともあってBEV普及の動きは鈍いが、HVを主力としてきたトヨタも、2030年までに30種類のBEVを展開し、世界でも年間350万台の販売を目指すという方向に大きく舵を切った。

トヨタのプレミアムカーブランドとして、米国では1989年、国内では2005年に立ち上がったLEXUSも、2019年に「LEXUS ELECTRIFIED」と称する電動化ビジョンを発表し、既存モデルにEVを追加するのではなく、全ラインナップにEVを用意する戦略を進める。2030年までに全カテゴリーでBEVフルラインナップを実現し、欧州、北米、中国でBEV100%、世界販売台数100万台を目指し、2035年には世界でBEV100%とする計画だ。

1997年に世界初の量産HV「プリウス」、2014年に世界初の市販FCV(燃料電池車)を世に送ったトヨタは、言うまでもなく電池技術でも最先端を行く。2008年に電池研究部を設置して全固体電池などの次世代電池を研究、2020年には電池事業会社も設立している。LEXUSの電動化戦略でも、当然こうしたトヨタの総合力がフル投入される。LEXUS初のBEV専用モデルとなる「RZ」は、愛知県豊田市に新設された事業拠点「TTCS」でつくりこまれ、BEV専用プラットフォーム、新四輪駆動システムを採用するなど、LEXUSならではのBEVの方向性を指し示す。

一方、欧州のプレミアムカーブランド、メルセデス・ベンツは、2019年にカーボンニュートラル戦略「アンビション2039」を発表、2039年以降販売の乗用車をカーボンニュートラルとする方針を打ち出した。2021年の「テクノロジーアップデート」では、2030年までに全新車をBEV化すべく約5兆円を投資することを発表、2025年までに全モデルにBEVを用意し、PHEVを含めたEVの販売シェア50%、2030年までに全市場で100%電動化を目指すとした。

EV専用に立ち上げられた「メルセデスEQ」ブランドからは、日本でもSUVの「EQC」「EQA」が発売されている。EV第3弾の「EQB」は、テスラのモデルX同様の3列シートSUVで、今後はセダンの「EQS」「EQE」も続く。2024年には中・小型車向けプラットフォーム、2025年にはさらに3つのEV専用プラットフォームを導入するという。世界初のEV専門販売拠点を横浜に開設し、日本でのBEV拡販にも力が入る。

LEXUS、メルセデス・ベンツという二大プレミアムカーブランドによるBEV開発が本格化する今後、世界のEVシフトは急加速していく。

両社の概要

LEXUS(トヨタ自動車)

設立 1937年( トヨタ自動車工業)
本社 愛知県豊田市
代表 豊田章男(代表取締役社長)
資本金 6, 354億円(2022年3月)
従業員数 連結:372, 817名(2022年3月)

出典:ホームページ(会社概要、トヨタ自動車75年史)

 

メルセデス・ベンツ日本

設立 1986年(ベンツ、ダイムラー合併:1926年)
本社 東京都品川区
代表 上野 金太郎 (代表取締役社長)
資本金 156億円
従業員数 330名

出典:ホームページ(会社概要)

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