価値創造ストーリーを学ぶ社内研修を開催 存在意義を社員に浸透

組織や社会で活躍する「広報・コミュニケーションの専門家」になりたい。そんな意欲にあふれる社会構想大学院大学・コミュニケーションデザイン研究科の修了生と、「知識社会学」の専門家でもある川山 竜二学監が語り合いました。

(左から)社会構想大学院大学 第4期 修了生 森 瑠衣子 氏、川山 竜二 学監。

「企業理念」が理解されない

川山 森さんは、損害保険会社で広報をされていますが、本学へ入学した動機を聞かせてください。

森 入学前は4万人のグループ社員に「グループ報」で情報発信を行う、社内広報を主に担当していました。入学のきっかけは、2018年の中期経営計画を浸透させようとした時のことです。まだ耳慣れなかった「CSV、レジリエント、SDGs」などの横文字が並んでいたため、「思った以上に社員に伝わらない」という課題に直面しました。現場が目の前の数字の達成に追われる中、全社員共通のベクトルである「価値創造ストーリー」を意識してもらうには、一体どうしたらいいのか?─そんな思いで入学を決めました。

「学びのサイクル」に入った

川山 働きながらの通学は、両立が大変だったと思います。工夫した点や、コツがあれば教えて下さい。

森 コロナ禍でオンライン授業がメインだったため、時間の融通が利いたことがありがたかったです。ただ、対面受講が可能な場合は、できるだけ学校に足を運ぶようにしていました。私の会社でも在宅勤務が増えたため、もし授業がなければダラダラと自宅で残業をしていたかもしれません。学び直しによって生活にメリハリがつき、結果的に自宅時間を有意義に過ごせたと思います。また、特に「オンラインならでは」のメリットを感じたのは、個別指導ですね。授業時間外にも関わらず熱心にご指導いただき、時間調整という点でも本当に助かりました。

川山 オンラインだからこそ、研究指導もフレキシブルに行えました。在学中に受けた授業の中で、特に印象に残っているものはありますか?

森 川山先生の「社会意識論」です。こちらは、一期上の先輩から受講をおすすめされたのですが、そこで教わったのは「これからの経済成長を牽引するのは“知識” である」ということでした。また、知識はそれぞれが単独で存在するものではなく、ネットワーク化が必要なことにも気づかされました。自分から学ぶことが楽しくなり、最近では知識をアップデートしないことに不安が生まれてくるほどです。

川山 森さんが「学びのサイクル」に入られた証拠だと思います。「リカレント教育を受けるのは、リカレント教育を経験した人」という言葉があるぐらい、一度学びの重要性に気づいた方は意欲的になるものです。

図1 コミュニケーションデザイン研究科での「学び直し」で身につくこと

今までの知識が結びついた

川山 卒業論文にあたる研究成果報告書は、「人的資本をどのように企業価値に結び付けたらよいか~人の価値を活かすための広報の役割を探索する~」というテーマでした。最初はだいぶ、苦労されていましたね。

森 インプットの段階で時間がかかりました。でも、12月に入ったらそれまでの苦労が嘘のように晴れました。今まで教わってきたことがいきなり全部結びついて、覚醒したんですよ!

川山 私もそれは今でも覚えています。最初は知識がバラバラだったせいか、計画書もデコボコしていたので「そこをならしましょう」という話はしていましたが、すごい成長でした。

森 私の研究は一言でいうと、「経営理念を軸とした、人と人との結びつきの見える化」です。実務上の課題から無形資産に注目し、人的資本と広報の関係性について考察を深めることが狙いでした。もちろん、最初から「伝えたいことの軸」はあったのですが、それをどのように学問と結びつけるか、が課題だったんですね。前進できたポイントは様々あるとは思いますが、最終的に大事なのは「学んだことを素直に取り入れること」だと感じています。

「知識を実践する場」をつくる

川山 修了後は、学んだことをどんな形で実務に活かされていますか?

森 2022年の4月にグループ新入社員約600人を対象に「価値創造ストーリー研修」を実施して、そこで講師を務めました。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは何か、自分と会社、そして社会、それから保険との関係性について考えてもらうという内容でしたが、「理念の浸透は企業価値を向上する」という事実に改めて気づかされました。今後は、役職別の研修なども企画していきたいと考えています。他にも、企画部門と共同でグループブランドの「アイデンティティ再構築プロジェクト」を開始する予定ですが、大学院で学んだ知識を実践する場ができたので、楽しみにしています。

川山 それは素晴らしいですね。学生同士の横のつながりについてはいかがでしたか。

森 入学してすぐ、一期上の方たちがオンラインで相談をする機会を設けてくださり、それ以降も面倒を見てくれたんですね。授業の取り方から学校の雰囲気まで教えてくれて、「オンライン飲み会」も開いてくれました。そこから連絡を取り合うようになって、同期を超えた縦の交流も生まれていきました。こうしたつながりは、今後の仕事にも活きてくると思います。

「視座を高めるため」に学ぶ

川山 コミュニケーションデザイン研究科に向いている人は、どんな人だと思いますか。また、どんな方に入学をおすすめしたいでしょうか。

森 「コミュニケーションデザイン」という言葉が含有する領域の広さからも分かるように、広報以外の方にも大いに役立つ内容だと思います。どこの部署にいても必要な、汎用性の高い知識を教えてくれますから。とはいえ実際のところ、現場の人たちは目の前のことで精一杯だと思います。でもだからこそ「社会の動きに敏感になる」など、今よりもう少しだけ目線を高くすることがとても大事だと思います。視座を高めるために学びに行く。それは私自身が成果を実感したことでもあるので、この点に課題意識を持っている方にはぜひ挑戦してみてほしいですね。

 

川山 竜二(かわやま・りゅうじ) 
社会構想大学院大学 学監
森 瑠衣子(もり・るいこ)
修了生

 

社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科
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