21世紀における在り方を探る百貨店 伝統を守りつつ、新たな価値を共創
江戸時代に創業した老舗の合併で、2010年に誕生した大丸松坂屋百貨店。リアルとオンラインを組み合わせた新しい形の外商や伝統芸能のメタバース化など、伝統を守りつつ新たな価値を創出し、「価値共創リテーラー」として独自のポジションを築くことを目標にしている。
宗森 耕二(大丸松坂屋百貨店 代表取締役社長)
社是は「お客様や社会への
貢献を最優先に考える」こと
大丸松坂屋百貨店は2010年に、大丸と松坂屋の合併によって誕生した。これに先立ち、2007年には共同持株会社「J.フロントリテイリング」が設立され、大丸松坂屋百貨店は現在、その中核を担う子会社となっている。
大丸は1717年(享保2)に京都伏見で創業「先義後利」(義を先にして利を後にする者は栄える)を社是としてきた。1611年(慶長16)創業の松坂屋は、名古屋本町で創業、「諸悪莫作 衆善奉行」(諸悪をなすなかれ、多くの善行を行え)を社是としていた。
「『お客様や社会への貢献を最優先に考える』という精神に基づく、これらの社是を受け継ぎ、お買い物を通じて人やその暮らしを豊かにする価値を提供しています」と、大丸松坂屋百貨店代表取締役社長の宗森耕二氏は話す。
現在は大丸11店舗、松坂屋4店舗を中心に全国で15店舗を運営。各店舗の立地特性に応じた品揃えとサービスで、顧客のニーズに応えている。今の中期経営計画(2024~2026年度)でも、これまで培ってきた百貨店の「店舗」と「人」が持つ強みが基盤となる。デジタルを活用したタッチポイントの拡充を図りながら、顧客の心を動かす新たな価値の創出を目指しているが、J.フロントリテイリングが特に支持を集めたいと考えている顧客層は、自らのこだわりや価値観を満たす、高質で心が高揚する消費や体験を嗜好する「高質・高揚消費層」だ。
「色々な百貨店がある中、今後は『我々らしさ』が大事になると思います。人口減少が進む一方で、消費は多様化しています。このような中、当社はラグジュアリーブランドやハイブランドだけでなく、お客様にとって価値が高いものを提供する『価値共創リテーラー』を目指しています」。
「価値共創リテーラー」は、J.フロントリテイリングが掲げる「2030年の目指す姿」だ。そこではリテール事業を中核にステークホルダーと「共創」の輪を広げ、「感動共創」、「地域共栄」、「環境共生」という3つの共創価値を提供していく。
オリジナリティの高い
コンテンツで他社と差別化
一方、国内でも地域によって求められる価値は異なることから、全国各地にある店舗では、地域ごとの価値を見出すことに取り組んでいる。例えば、大丸福岡天神店では、伝統工芸「久留米絣(かすり)」のもんぺを現代の日常に溶け込むよう進化させた形で提案し、その魅力を伝えるイベント「THE MONPE」を2022年から毎年開催。さらに2023年からは、久留米絣の織元と問屋が一堂に集結する「久留米絣大博覧会」も毎年開いている。
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