電力ネットの高度化が追い風 電力機器・サービスを一体化して提供

電力ネットワーク機器を幅広く手掛ける東光高岳が、「SERAカンパニー」という新たなビジョンを掲げ、総額470億円の戦略投資による変革に挑んでいる。シームレスにエネルギーをつなぐ結節点として、次世代電力ネットワークをデザインする構想を同社では描いている。

一ノ瀬 貴士(東光高岳 代表取締役社長)

EV急速充電器の新ブランド立ち上げ
電力ネットワークを高度に運用する

東光高岳(とうこうたかおか)は、2012年に高岳製作所と東光電気が経営統合して発足した企業。前身の2社はそれぞれ1918年、1928年創業で、老舗の変圧器や開閉装置などの受変電・配電機器メーカーとして知られている。同社は2024年5月、EV用急速充電器の新ブランドとしてSERAを立ち上げた。

EV急速充電器「SERA」シリーズ。15kWから400kWまで、幅広いラインアップを展開。(写真は15kW、50kW、120kW、150kW)

「SERAは、フランス語で『未来の存在』を意味すると同時に、『Seamless, Energy, Relations & Activation』の頭文字でもあります。シームレスにエネルギーをつなぎ、社会を活性化させる存在でありたいという想いを込めました」と一ノ瀬氏は語る。

「改めて当社の製品群を俯瞰すると、変圧器は異なる電圧階級を、開閉装置はネットワーク間を、スマートメーターは電力とデジタルをつなぐ役割を担っています。これらはすべて社会インフラの中でエネルギーの『結節点』として機能している。シームレスにエネルギーをつなぐことは、我々の本質的な提供価値なのです」。

東光高岳の550kV断路器。世界最大級の定格を備え、変電所での安全な点検作業を支える要の装置

一ノ瀬氏は、このように価値を言語化・可視化することの重要性を強調する。「我々自身が提供している価値を改めて棚卸し、それを言語化することで、社内外に我々の存在意義を明確に伝えることができます」。

新ブランドは将来的には「エンジニアリングSERA」として、各電力機器やGXサービスをエンジニアリング力で統合した最適ソリューションの提供を構想。「デジタルグリッドSERA」では、IoT・AI・ビッグデータを活用した電力ネットワークの高度運用を目指している。

現場力を育む組織変革
転換点からの再生と成長へ

2021年8月以降の品質管理に係る不適切事案を経て、東光高岳は大きな転換点を迎えた。

「一連の事案の反省から、経営と現場第一線との距離を縮め、想いをひとつにする必要性を強く認識しました」と一ノ瀬氏は語る。

この認識のもと、2024年10月に「SQCファースト改革」を策定・公表。安全・品質・コンプライアンスを最優先する企業文化の確立を目指すとともに、新たな経営理念を制定した。

新たに制定したクレドには「Do the right things right(正しいことを正しく行う)」「圧倒的当事者意識」など5項目を掲げ、全社員との継続的な対話を通じて浸透を図っている。

「これは100年企業としての新たな成長基盤を築く転換点です。問題意識を持ってカイゼンに挑戦した人をきちんと評価する制度への転換も進めています」と一ノ瀬氏は強調する。

自らもCKO(Chief Kaizen Officer)として月に2~3日はカイゼン指導会を実施。「問題意識を持って継続的に進化していく現場力の構築が、私の最大のミッションです」。

470億円投資が創出する成長軌道
コア事業から新事業を展開

「2027中期経営計画」では、再出発に際して「SQCファーストの新生東光高岳として再生と成長へ」を掲げた。AIデータセンターや半導体工場の新設により国内電力需要が拡大基調に転じるなど、事業環境の追い風を最大限に活かす戦略だ。

事業ポートフォリオは、コア事業を中心とした三層構造で展開される。まず基盤となるコア事業(電力機器・計量事業)の再生と強靭化に140億円を投資し、生産設備の最適化・拡充や戦略的パートナリングによる生産能力の強化と品質向上を推進する。

コア事業で確保した利益は、その周辺領域である拡大分野へと展開。中でも大きいのが次世代スマートメーター関連事業で、50億円を投資する。「2026年度から本格導入される次世代スマートメーターのために、自動化率100%の革新的製造ラインを整備します」。新たに計器センター事業を立ち上げるが、これはスマートメーターを構成する各ユニット間のペアリングとセットアップを実施するものだ。通信システムの開発・保守を担う次世代AMI事業にも参画し、サプライチェーン全体での価値を生み出していく。

さらに外縁の成長分野として、EVインフラ事業と半導体検査事業に30億円を投資。国内累計販売台数No.1(約6000口。※2025年3月時点。東光高岳調べ)の実績を誇るEV用急速充電器では、2025年度内にCHAdeMO規格としては世界初の400kW次世代超急速充電器「SERA-400」を市場投入する。これらに加え、SQC確保のための工場DXや設備更新に200億円を投資し、生産性向上と品質管理の高度化を同時に実現する。

人的資本が牽引する価値創造
自律心を育む人財育成の仕組み

東光高岳では、「多様な人財が集い、挑戦・共創し続ける、活力ある組織の実現」を掲げ、3か年で60億円の人的資本投資を計画している。

一ノ瀬氏は人財育成の基盤として「自律心」を重視する。「みずから学ぼうとし、問題意識を持って挑戦する人財の育成が不可欠です」。

そのため2年前に人財育成センターを設立。体系的なOJTの仕組み構築と自律学習環境の充実を進める。「各職場で必要なスキルを可視化し、個々人の成長目標を明確にする育成カルテの仕組みを構築しています。仕事を起点とするOJTを基盤に、Off-JTや自己啓発環境も整備して、社員の成長を支援しています」。

さらに、タレントマネジメントシステムを活用した戦略的人財配置や、役割型人事制度の導入により、挑戦と成果を適切に評価する仕組みも整備した。

ダイバーシティ&インクルージョンも積極的に推進し、女性活躍推進で「えるぼし」認定、仕事と子育ての両立支援で「くるみん」認定を取得。多様な人財が集いイノベーションを生み出す環境整備を進めている。

同社の目標は2030年度に売上高1500億円、営業利益150億円(営業利益率10%)。今後の電力ネットワークは「ハイブリッド」「クリーン」「スマート」をキーワードに革新的な進化を遂げる。従来型の広域ネットワークと再エネ地産地消を実現する分散型ネットワークの融合、環境配慮型機器の本格普及、IoT・AIによるインテリジェント化の加速。こうした次世代電力ネットワークの結節点として、電力エネルギーの安定供給と高度利用を支え続けることが同社の使命だ。

「東光高岳の考えるSERA社会とは、人々がそれぞれの持つエネルギーを最大限に発揮しながら、互いにシームレスに連携し活躍できる社会です。社員一人ひとりが持つエネルギーをシームレスに連携させ、会社と社員自身の未来を活性化させていく。そんな組織文化も含めて、SERAカンパニーを実現していきます」。

 

一ノ瀬 貴士(いちのせ・たかし)
東光高岳 代表取締役社長