2021年6月号

地方創生の新機軸

中小企業の社内DXが進まない3つの理由 経営者と現場の参画を

本間 卓哉(IT顧問化協会 代表理事)

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12月に経済産業省が示したDXレポートでは、企業の約9割がDXにまだ取り組めていないとのデータが出された。いま地域の中小企業がDXに取り組むべき理由と、その進め方について、本学の「DX推進者養成オンライン講座」講師として多くの中小企業のDX支援を行う本間氏に聞いた。

本間 卓哉(事業構想大学院大学 事業構想研究所 講師 IT顧問化協会 代表理事)

経済産業省が2020年12月に公表した「DXレポート2(中間とりまとめ)」によると、デジタル変革に対する現状への危機感を持つ国内企業は増加しているものの、DXに関して未着手、あるいは散発的な実施にとどまっている企業が全体の9割にのぼるとのデータが出され、DXを推進している企業とそうでない企業の二極化が進んでいることがわかった。

コロナ禍で激変するビジネス環境下において、テレワークやクラウドツールの導入によって業務の生産性を上げることが重要だ。しかし、中小企業のなかには、これまでの業務・慣習から脱却ができないままコロナ・ショックによって事業継続に大きな打撃を受けている企業も多いのが実態だ。

全社的なDXへの意識改革が
企業を大きく変える

これまで多くの中小企業の社内DXを支援してきた本間氏によると、社内DXを進められない中小企業には三つの原因があるという。

「1つ目は経営者の意思で、単に業務の効率化を指示するだけで終わっている企業が多いと感じます。社内DXを進めるためには、大前提として、経営者自身がこれまでの企業文化(業務・慣習)に捉われずに、業務全体の変革を行う意思を社内に示すとともに、必要に応じてデジタルに対する投資を行うことが重要です。

2つ目は、企業の中のデジタル人材が枯渇している点です。多くの中小企業では、社内DXを進める上で、業務のグランドデザインを描くデジタル人材がおらず、社内の情報システムの担当者が少ない人数で対応するケースが散見されますが、本来、営業やバックオフィスも含めての全体の業務改革は、情報システム担当者だけでは進めることは難しく、まずは全体の業務の棚卸しから各部署と始めることが必要です。

3つ目は、クラウドサービスに関する理解不足が挙げられます。いまは勤怠管理・経費精算・情報共有など、次々と便利で安価なサービスが出ていますが、クラウドサービスは導入して終わりではありません。ほかのサービスとのデータ連携や、アップデートなどへの対応をする主体は導入企業であり、情報システム担当者だけでなく、社員一人一人がサービスを使いこなす必要があります。特にITベンダーから、システムとともに手厚いサポートを受け慣れている企業は注意が必要です」

逆にこれら3点を踏まえて全社でDXへの対応を進めている企業は、現状がアナログな業務環境下であれば、伸びしろが大きいという。

図1 社内DX実現に向けた推進ポイント


実現性の高い計画を作るためには、初期から外部の専門家の意見を取り入れる方が良いという。

出典:IT顧問化協会

 

例えばコールセンター業務。製品やサービス知識を十分に備えた人的資源と、建物や設備など物的資源の両方を必要としてきた業務だが、ビッグデータとAIを活用することで、チャットボットなどを駆使した業務の大幅な効率化だけでなく、経費削減やサービス向上が期待できる。

また工場のラインを持つメーカーにおいては、ライン自体は改善を重ねて生産性が高い場合が多いが、仕入れ業務においては相変わらず手書きの納品書やFAXなどでアナログな部分があると、大きく改善の余地がある。

ほかにも、営業・マーケティング手法として、営業個人の勘と経験に頼っている企業では、顧客管理システムや営業支援システム(SFA/CRM)を活用して顧客データを「見える化」することで、新規開拓営業と既存顧客への深耕営業の両面を強化することが可能だ。

ステークホルダーの「幸せ」を
基準にグランドデザインを描く

ここ数年であらゆる業務課題に対するクラウドサービスが出ているが、今後は各サービスのデータをいかに連携させるかがDXの最も大きなカギとなる。

例えば、異なる入退室管理システムと勤怠管理ツールの紐づけなどが例だ。規模の大きい企業では企業独自の基幹システムの存在によりクラウドサービスとの連携が難しい場合もあるが、AIを活用してデータのHUBとなるようなツールで対応する「ポストモダンERP」という考え方による対処法も行われてきている。

こうしたデータの連携を行うには、業務のグランドデザインを描く工程が必須であり、この工程が不十分だと効果が限定的になり、DXではなく単純な「デジタル化」に留まってしまう。特に、クラウドサービスのリリースが盛んな昨今では、勤怠管理ツール一つとっても80以上の選択肢から選ぶ状況になっており、自社の導入ツールとの連携・拡張性から、どのようなツールが自社にとって最適か、選び取る必要がある。

図2 変革に向けた知識と要件定義 従業員の軸


従業員の業務を軸にすると、それぞれのポイントでどのようなツールが必要なのかが見えてくる。

出典:IT顧問化協会

 

これからDXに取り組む企業がどのような点に注意して取り組むべきか。本間氏は、経営者サイドと現場サイドでそれぞれ留意点があると語る。

「まず経営者サイドの留意点ですが、環境づくりが重要です。例えば、社内DX変革を行うことをトップダウンで示し、横串の部署を立ち上げて権限付与する、といった内容になりますが、その際は、IT分野だからと言って安易に若手をアサインするのではなく、正確に業務全体を理解している人を抜擢し、ITの専門家は外部から招聘したほうが良いでしょう。他の企業の変革事例などを知っている専門家が入れば、変革の質とスピードが上がります。次に現場サイドの留意点としては、各部署の業務の棚卸を正確に行うこと、さらにその業務をシステム化して得られる投資対効果や、定性的な価値を示すとよいでしょう。経営者も現場も数字で語ることはもちろん重要ですが、変革によって従業員やステークホルダーがどれだけ幸せになれるかが、社内DXの重要な指標となります」


 

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