地方創生政策の向かう先は 改訂総合戦略の5つのポイント

コロナ禍の地域経済への影響や国民の意識・行動変容を踏まえ、政府は2020年12月に「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」を改訂した。地方創生のこれまでの経緯とコロナ禍の影響、新たに掲げられた地方創生重点施策について解説する。

2020年12月16日、「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」の改訂についてまち・ひと・しごと創生会議で発言 する菅義偉総理大臣。隣は坂本哲志地方創生担当大臣(首相官邸ホームページより)

地方創生の成果と課題
第2期は「関係人口」にフォーカス

人口減少・超高齢化社会の克服と東京一極集中の是正を目指して、2014年にスタートした地方創生への取り組み。司令塔として同年9月に内閣府にまち・ひと・しごと創生本部が設置され、同年12月には、目指すべき日本の将来像を提示した「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と今後5か年(2015年度から2019年度まで)の目標や施策が提示された「第1期まち・ひと・しごと創生総合戦略」がとりまとめられた。

図表1 第1期総合戦略の成果と課題

出典:内閣府資料

 

総合戦略では①地方における安定的な雇用を創出する(2020年までに地方での若者雇用30万人)、②地方への新しいひとの流れをつくる(東京圏への転入超過の是正)、③若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる(若者世代の経済的安定や妊娠・出産・育児支援)、④時代に合った地域づくりと、「まち」「ひと」「しごと」の創生に関する4つの基本目標が定められた。

国をあげた取り組みの成果はどうだったのか。地方の若者(15~34歳)の就業率は2014年の61.3% から2018年に64.9%に上昇。2014年に1,341万人だった訪日外国人旅行者数は2018年に3,119万人へと急増した。地域において成長産業化が期待されている農林水産物・食品の輸出額は2014年の6,117億円から2018年に9,068億円まで増えた。このように、「しごと」の創生については一定の成果が見られる。

一方で、2014年に10.9万人だった東京圏への転入超過は2018年に13.6万人となり、2020年の均衡目標に対してむしろ悪化。景気回復が続く中で好条件の仕事を求めて東京圏に人が集まる流れは止めることができなかった。合計特殊出生率も、2018年は1.42と2014年から横ばいが続いており、「ひと」の創生では十分な成果が得られなかった。

こうした結果を受けて、政府は2019年12月にとりまとめた「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン(令和元年改訂版)」と「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、「関係人口」の拡大を強く打ち出した。いきなり地方への移住・定着するハードルは高いため、まずは地方と都市在住者のつながりを強化して地方移住の裾野を広げよう、そのために観光客以上・定住者未満の存在である関係人口の創出・拡大を行おうという考えである。

具体的には、二地域居住や多地域居住の促進や、子どもの農山漁村体験や地域留学の促進、地域における関係人口の受け入れ体制づくりやプロモーション、マッチングなどの取り組みが挙げられている。新たな目標として「関係人口の創出・拡大に取り組む地方公共団体の数1,000団体」も打ち出されている。

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