デキタ 古民家などの地域資源をフル活用し、宿場町を再生

江戸時代に栄えた若狭町の熊川宿。そこで空き家となった古民家を、シェアオフィスや宿泊施設などにリノベーションして運営しているのが、施設開発コンサルのデキタだ。東京で同社を起業し、2019年にUターンして福井県に会社を移転させた時岡氏に、地域活性化の取り組みを聞いた。

宿場町の空き家を改修し
新たな交流拠点に

若狭湾から京都にサバを運ぶ「鯖街道」最大の宿場町として栄えた、福井県若狭町の熊川宿。奉行所や番所の跡が保存され、その歴史的な町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。そんな熊川宿で今、官民連携のまちづくりが進んでいる。旗振り役は、改修した熊川宿の古民家でシェアオフィスや宿泊施設の開発・運営を手掛けるデキタだ。

代表取締役の時岡壮太氏は、福井県おおい町の出身。2011年に東京で同社を創業し、築地場外市場や震災復興施設などの施設開発に携わったのち、2019年から本社を熊川宿に移した。

「大学の卒業論文で越前市今立地区の集落で空き家調査を行うなど、以前から福井のまちづくりに参加して、地元に貢献したいという思いがありました。東京で事業を続けていく中で、委託事業として大規模施設の開発に携わるだけでなく、『自社でイチから物件を開発して運用したい』との思いが芽生え、38歳の時に20年ぶりにUターンしました」と時岡氏は語る。

時岡 壮太(デキタ 代表取締役)

熊川宿は歴史的な町並みが残る美しい景観が特徴だが、これは地域の人々が約40年前から熱心に保存活動に取り組んできた成果だ。しかしその一方で、熊川宿を含む熊川地区の高齢化率は6割に達し、時岡氏がUターンした当時は約140戸の家屋のうち40戸が空き家の状態だったという。

「建物は綺麗に保存されていくのに、観光客が立ち寄れるお店が少なく、空き家は増え続けていく。そんな状況に危機感を抱いた若狭町の職員の方から、『相続人が町外に居住し、10年以上空き家になっている物件が熊川宿にある』との話を聞いたことがきっかけで、初の自社案件としてこの物件のリノベーションを手がけました」

これが、2018年4月にオープンしたシェアオフィス&スペース「菱屋」だ。

「築140年になる炭問屋だった家屋で、熊川宿でも最大規模となります。当社が物件の所有者から借り上げて改修後、新たな事業者に転貸しています。地域外の人がいきなり外から入ってきて事業を始めるのは難しいので、地域の人との交流拠点をつくれたらと思い、個室のオフィス機能の他、イベントスペースも確保しました。現在はデザイン事務所の他、東京から進出したコーヒーショップなどが入居しています」

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