2021年2月号
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ヘルスケアビジネスの新戦略

医療・ヘルスケア領域における顧客対象・提供価値・マネタイズ

加藤 浩晃(東京医科歯科大学臨床准教授)

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医学・行政・ビジネスの3つの観点から医療・ヘルスケア業界における新戦略を考察する本連載。どのようなビジネスでも顧客設定や収益化の手段はまず考えるべき重要な要素だが、医療・ヘルスケア領域で多くの事業アイデアを見てきた加藤氏によると、この点が甘いものも多いようだ。

事業アイデアの着目点は
顧客価値とマネタイズ

今回は「ヘルスケアビジネスの新規事業の考え方」の導入編をお話ししようと思います。

筆者は年間200くらいの新規事業のアイデアの相談を受けています。相談者は大企業であったり、医師をはじめとする医療者であったりさまざまで、その新規事業もしっかり考えられたものから思い付きのものまで色々ですが、2日に1回は相談が持ち込まれます。この他にも、筆者は経済産業省主催のジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC)など種々のビジネスコンテストの審査員も務めているため、年間300近くの事業アイデアに触れているのではないでしょうか。

その事業アイデアが成功するか否か、筆者は大きく2つの視点から見ています。1つは“顧客価値の視点”、そしてもう1つは“マネタイズ”です。

粗すぎる顧客設定に注意

本連載では、日本には国民皆保険という素晴らしい制度があり、その費用が安いために医療・ヘルスケア領域でのビジネスはマネタイズが難しいと説明しました。まず、マネタイズの源泉である“顧客価値”のうち、「誰の何を、どのように解決しようとしている」のか、特に、“誰”に注目してみましょう。

医療・ヘルスケア領域の新規事業の話で「“誰”に向けたサービスなのか」を尋ねたとき、よく聞くのが「高齢者の~」とか「ビジネスパーソンの~」という答えです。

しかし、サービスの対象顧客として「高齢者」や「ビジネスパーソン」は存在しません。では誰がいるのか。いるのは「75歳の自分のおばあちゃん」や「加藤浩晃さん」などです。あくまでも“誰か”を具体的に想像できる特定の個人がいるのです。

サービス対象者として「高齢者」や「ビジネスパーソン」という表現は非常に抽象的です。「高齢者」といっても、病気に対する心配の具合や活発さはさまざまです。80歳でも、コロナ前は世界中を飛び回っていた方かもしれません。ビジネスパーソンも同様で、どのような勤務体制なのかはさまざまです。サービスとしてはわざわざ言うまでもないのかもしれませんが、顔が見えるような、具体的な“あの人”が課題として感じていることに刺さるようなサービスにしないといけません。そして、ある特定の個人に対してサービスが受け入れられれば、「その人と同じような課題を抱えている人」もそのサービスを使うようになります。逆に対象者がボンヤリした状態では、誰のニーズにもいまいちフィットしないサービスである可能性が高いといえるでしょう。

医療・ヘルスケア領域の新規事業では往々にして、この「特定の個人」をイメージせずに漠然と「高齢者」や「ビジネスパーソン」を対象者に設定しているケースが散見されます。これは、「日本は高齢化が進む」とか「ビジネスパーソンは忙しく、通院の継続がしにくい」といったようなかたちで医療の課題が語られるからかもしれません。

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