地元・奈良で見過ごされてきた価値 薬草ハーブを商品化

チアフル社長の松本梓氏は大手住宅メーカーに就職後、仕事で大都市と地方を行き来しながら故郷・奈良の持つ資源を生かして事業をしたいと思うようになった。経済や社会が効率を求める中で、見過ごされてきた自然や人の力に目を向け事業を展開している。

松本 梓(チアフル社長)

奈良市で2016年に創業したチアフルが展開するブランド「jiwajiwa」には、「日本古来の植物の恵みが、わたしたちにじわじわと染み入り、疲れた心とからだに調和をもたらしますように」との願いが込められている。主力商品は奈良県産の薬草ハーブ「大和当帰(やまととうき)」を使った入浴剤やせっけん、アロマスプレーなどだ。「『jiwajiwa』の商品に触れることによってゆったりとした時間を過ごし、奈良の自然のすばらしさや人の魅力に目を向けてもらうきっかけになれば」と、チアフル代表取締役社長の松本梓氏は思いを語る。

当帰の根は医薬品、葉・茎は食品や雑貨となる。奈良県では、大和当帰葉の特産品化を推進している

奈良市出身の松本氏は、神戸の大学を卒業後、大手住宅メーカーに就職した。多忙な日々を送りつつも、ずっとその会社で働き続けるつもりでいた。しかし30歳になる手前で、これから先の社会のありように思いを巡らせることが増えていったという。

「仕事で全国のグループ会社を回るうち、精神的に疲弊している都市部と、経済的に衰退している地方を目の当たりにしました。そして、より多くの人に地方の魅力に気付く感性がはぐくまれることこそが、持続可能な社会のあり方なのではないかと感じるようになったのです」。

その気づきはそのまま自身の生き方、働き方を考え直すきっかけにもなった。「地元奈良に関わり、自分がいいと思えることを仕事にできればいいな、と」。そんな折、テレビ番組の「カンブリア宮殿」でエイトワン(愛媛県松山市)の取り組みに触れる機会があった。

「愛媛県の資源や課題に目を向け、愛媛から日本をもっとよくしていきたいという考えを聞いて、私もそういう仕事にかかわりたいと思いました」。決心してエイトワンの社員起業家プロジェクトに応募したところ、1000万円の開業資金を得られた。

「このチャンスを逃したらいけないと思って会社を辞め、奈良にあるものを生かして起業しようと考えました」。

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