南部鉄器をアップデート 伝統工芸を「暮らしに溶け込ませる」

岩手県を代表する伝統工芸、南部鉄器。長年生活に密着してきた暮らしの道具は、今世界に価値が認められ海外からの引き合いも増えている。一方で、現場を担う職人は減り、課題もある。ものづくりと人材育成の双方で南部鉄器のアップデートを目指す、田山貴紘氏に聞いた。

田山 貴紘(タヤマスタジオ 代表取締役社長)

Uターンの原点は社会の価値観の変化

田山氏が鉄瓶の製造・販売からアフターサービスまでを手がけるタヤマスタジオを設立したのは2013年。南部鉄器職人の父親のもとで技術を学びはじめたのは設立1年前の2012年、29歳のときだった。それまでは地元・岩手を離れて首都圏の大学・大学院へ進学、東京で就職という"定番"の道を歩んでいた。

「父は工房勤めをしていました。家業というわけではなかったので、"継ぐ"という進路はまったく考えませんでした」と笑う。

就職先の食品メーカーでは営業職に就いた。営業の仕事を通して世の中の流れがわかってきた20代後半、徐々に自分の価値観が変わってきていることを感じていたという。そんなとき、リーマンショックが起き、社会は転換期を迎えた。

「自分にしかできないことを見つけたいと思うようになりました。そこなら貢献できることも大きくなるはずだ、とも考えるようになりました」

東京で仕事を続けながら自身のあり方を問い直す日々を過ごすなか東日本大震災が起き、地元も被災した。田山氏は自分にしかできないことは南部鉄器にあると信じ、帰郷を決意した。

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