楽天、創業時から変わらぬ地域への貢献 データ活用で地域に革命を

オンラインショッピング、旅行予約、金融、通信、メディアなど幅広いサービスを持つ楽天グループ。自治体と協働し、それぞれのデータを活用して、地域課題解決を目指す。官民連携で結果を出す楽天の取組について、執行役員・野原彰人氏に話を聞いた。

野原 彰人(楽天 執行役員コマースカンパニーCOO&ディレクター)

70以上のサービスを持つ楽天
資産を活用した自治体との協働

――デジタル化のトレンドを反映し、楽天の自治体向けサービスにはどのような変化が生じているでしょうか。

野原 楽天の事業は、Eコマースを軸に、金融、通信、物流、メディア、農業支援からIoT、AI活用に至るまで、幅広い領域に広がっています。地域への貢献は1997年の創業時から変わらないミッションです。例えば、それまで全国的な販路を持たなかった地域を拠点とする事業者の方々が、ECを通じて販路を拡大する支援などです。

自治体との取り組みは、当初はCSR活動の一環に位置づけられることが多かったのですが、最近では協働事例が積みあがっています。楽天グループには幅広いサービスがあり、1億以上を誇る会員IDで紐づいています。サービスを通じて長年蓄積された消費行動などの分析データが、自治体に評価されるようになってきました。

政府は自治体のデジタル化を進める方針を打ち出しており、総務省は、その具体化に取り組んでいます。自治体が施策の結果を数値で示すことを、社会が求めるようになってきていると感じています。多様なデータを蓄積してきた楽天は、この面で自治体にとって有望なパートナーとなりえます。両者のデータを活用して、より効果的なアプローチで行政課題を解決できるようにしていきたいと考えています。

行政の事業はこれまで、成果の測定が難しいとされてきました。簡単かつ低コストに、対象の変化を計測する方法がなかったためです。しかし、今後は成果がデータで可視化できるようになりますから、結果に対する責任も負いやすくなります。データを活用してPDCAサイクルを回し、有効性を検証すれば、自治体の施策もより精緻化できるようになります。

楽天では、データを通じた顧客の理解とターゲット化を過去20年以上にわたって行ってきました。データ面での楽天の強みは、購買行動、金融関連、旅行やスポーツ観戦などレジャー関連やその他の趣味嗜好に関するデータを蓄積している点です。楽天では今後も、ユーザーを様々な切り口で分析していきます。切り口を多く持つことで、顧客のイメージ図をより正確に作成し、個人に合ったサービスを提供できます。

楽天データで地域の潜在顧客層を発掘

 

また、デジタル化により、スピード感のある対応が可能になることも利点だと考えています。例えば、台風などの被災地の観光業を支援する「ふっこう割」などの旅行割引クーポン。楽天トラベルではいち早く安全を確認できた地域への旅行に使えるクーポンを発行し、被災地の復興に貢献したい人を、機会を逃さず送客してきました。

全社組織で取り組む
自治体との官民共創

――自治体とのパートナーシップについてお聞かせください。

楽天の社内組織にとっての新規軸は、旅行事業とコマース事業を一緒に進める体制としたこと。楽天グループのサービスは多岐にわたっており、組織ごとに縦割りで事業を推進している事例もありました。そこで2019年夏に、自治体向けのビジネスでは観光領域と商業領域を一体化、また、データを活用した自治体の課題解決を強化するため、データ活用を専門に取り扱う部門を新設しました。これにより楽天としては観光・ふるさと納税・産品購買などのカテゴリを越えたデータの連携がすすみ、複数の切り口で地域の現状分析ができ、より幅広いご提案をできるようになりました。

例えば、愛媛県とは県産品のデジタルマーケティングによる消費拡大を、兵庫県とは将来的な移住に向けた関係人口の創出で、それぞれ連携しています。これらは一緒になった観光部門出身者や新設したデータ部門のメンバーも携わっています。

官と民がそれぞれの得意分野で更に強みを発揮することがこれからは必要です。官民が協力する場合、我々のような東京のIT企業と地方自治体では、文化やツール、仕事の進め方など違いが大きい場合があります。これを埋めるために、楽天では自治体向けのセミナーを開催し、お互いに気づきを得ながら学ぶ体制を築いてきました。

例えば、包括連携協定を締結している福山市において、自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)のためのワークショップを開催しました。DXとはあまり関わりがなかった方も、回数を重ねるうちに意識が変わってくる。このように自治体職員の理解を深めることは、行政上の重要性はもちろん、楽天グループのビジネスにとっても重要です。例えば、楽天モバイルでは、千葉市をはじめ自治体と連携し、基地局設置や各学校の通信ネットワークを整備する施策を実施しています。楽天グループのデータについても、地域の関係者とのネットワークがあって初めて行政の事業に生かせるものです。

福山市では、自治体DXのためのワークショップを開催

現在、楽天グループと連携協定を締結して地域産品のデジタルマーケティングや関係人口づくりを進めている自治体も、自治体独自でデジタルマーケティングを行える人材の育成や確保も必要になってきています。そのため日本全体のベースのレベルを向上する必要があると感じており、楽天としてもこれまで培ってきた経験を活かせるようであれば、最大限にお伝えしていきたいと考えています。

コロナ禍のネットの役割
社会の持続性とリスク分散

――コロナウイルス感染症は、社会にどのようなインパクトを与えるでしょうか。

個人的には、今回の件をきっかけに、一極集中の怖さを社会が理解したと考えています。企業・公共セクターが、人が集まって業務を遂行するリスクをどうやって最小化し、サステイナブルなものにするか。

このような状況下だからこそ、インターネットの良さ、ECの強みが改めて見直されています。外出の自粛が長期化するほど、実店舗を構える飲食店や小売店にとっては益々厳しい状況が続くでしょう。ところが、ネットを活用することで、近所のお客様だけではなく、遠方のお客様を含めた日本全国の方を相手にビジネスを継続することができます。この最大の強みにいち早く気づいた自治体からは既に観光関連や物産振興関連で多数のご相談を頂いています。

一方でデジタル化がすすむと、現状では世界のプラットフォーマーにデータが集中してしまう危険性もある。

楽天は、日本のデジタルプラットフォーム代表として国際的な舞台でも競争力を高めつつ、公の器の務めである社会還元を進めていきます。企業が社会還元する方法は、投資促進や雇用の創出などいろいろありますが、地域創生は、我々の創業時からの変わらぬミッションです。胸を張ってこれからも取り組んでいきたいと思います。

お問い合わせ


楽天株式会社 コマースカンパニー
地域創生事業 共創事業推進部

TEL: 050-5817-3600
MAIL:rev-co-innovation-info@mail.rakuten.com
URL: https://www.rakuten.co.jp

 

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