2020年6月号

地域特集 愛媛県

愛媛県知事が語る 5G・デジタル戦略を本格化、困難を克服へ

中村 時広(愛媛県知事)

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西日本豪雨災害、新型コロナウイルスなど数々の困難に直面しながらも、デジタル技術の活用による地域課題の解決や、交流人口・関係人口の拡大に力を注ぐ愛媛県。中村時広知事に産業・観光の活性化策や県の将来像について、話を聞いた。

中村 時広(愛媛県知事)

5Gを見据え、
「デジタル総合戦略」を策定へ

――5Gを活用した産業振興や社会インフラ整備など、デジタルシフトに対応した施策について、お聞かせください。

中村 人口減少や経済のグローバル化の進展等により、愛媛県を取り巻く環境が大きく変化する中、AIやIoT、ビッグデータなど、社会生活の利便性や産業の生産性向上等に重要な役割を果たすデジタル技術は、様々な地域課題を解決する上で大きな可能性を秘めていることから、県政運営においても積極的な活用を図り、その効果を最大限発揮する取組みを戦略的に進めることが不可欠であると考えています。

このため、県では、デジタル技術を地域課題の解決に積極的に活用する観点から、2018年度に、全国に先駆けて、デジタルマーケティングを活用した施策展開に着手し、インバウンド誘客では、動画2000万回再生という圧倒的な認知度を獲得したほか、昨年度実施した県産品販売のキャンペーンでも、当初想定3億円を大幅に上回る約4億円の売上げを達成しました。

また、5Gの本格運用も見据え、2019年度には、部局横断のプロジェクト・チームにおいて、課題対応の最前線に立つ若手職員の新鮮で柔軟な発想を活かした、新規施策の検討を重ねたところであり、これらを元に、高精細映像を使った遠隔医療のモデル事業の実施や、救急医療現場における迅速な患者情報提供システムの構築、4K画像のリアルタイム伝送による農家への普及指導体制の強化、県内企業による5G関連製品の開発を支援する研究施設の整備などに取り組むための経費を、2020年度当初予算に盛り込んでいます。

さらに、県政のより幅広い分野でデジタル技術の導入を図り効果的に活用していくため、デジタル施策展開の司令塔となる「デジタル総合戦略本部」を今年度に立ち上げ、産業や医療、教育、防災など、分野別活用方策や共通課題等について検討することとしており、今年度末には「デジタル総合戦略」を策定し、常にデジタルシフトに伴う社会の変化の一歩先を見据え、先取りするという姿勢のもと、外部人材の参画等も得ながら、県民ニーズや地域課題に即応した施策を積極的に展開していきたいと考えています。

観光を県の基幹産業に

――観光振興の取り組みについて、お聞かせください。

中村 観光は、地方創生の切り札・成長戦略の柱であり、本県は、自然・文化・気候・食という観光振興に必要な4つの条件を兼ね備えており、全国に誇れる豊富で多様な観光資源を真に開花させることにより、本県経済を支える基幹産業へと成長させたいと考えています。

そこで本県の「道後」「しまなみ」「いやしの南予」という観光トップブランドを強力に全国に発信するため、観光大使としても活躍中の人気お笑いコンビ「和牛」を起用した観光PR動画「疲れたら、愛媛。」を昨年2月から配信しています。

県の観光大使としても活躍中の人気お笑いコンビ「和牛」を起用した観光PR動画「疲れたら、愛媛。」を2019年2月から配信

これまでに動画再生は135万回を超え、全国カラオケ配信も開始されるなど県内外で大きな反響を呼び、実際に県内ロケ地を巡る旅行者も現れるなど本県観光のイメージアップと実需の創出に繋がっているところです。

今後も、昨年から新たに取り入れたデジタルマーケティングを本格活用しながら、確実に誘客層に届く訴求力の高いコンセプトで観光プロモーションを戦略的に仕掛けていきたいと考えています。

特に、しまなみ海道は、国内で唯一、供用中の高速道路を走行できる国際サイクリング大会の開催をはじめとした官民一体の取組みが実を結び、今や国内外から年間30万人以上のサイクリストが訪れる「聖地」となり、昨年11月には国からナショナルサイクルルートの指定を受けたところであり、海道沿線では、企業や移住者による宿泊施設や飲食店の創業等の民間投資も相次ぎ、地域活性化に結び付いているものと確かな手応えを感じています。

2019年11月、国からナショナルサイクルルートの指定を受けた「しまなみ海道」。国内外から年間30万人以上のサイクリストが訪れる「聖地」となっている

今後は、しまなみ海道最大の魅力である来島海峡大橋にスポットを当て、サイクリング、クルージング、登頂体験など地域の魅力の更なる磨き上げやプロモーション強化に取り組むとともに、県内の優れたアクティビティとの連携も視野に本県側への誘客促進のための仕組みなど、しまなみ海道がサイクルツーリズムを核とした世界にも通用する観光交流エリアにステージアップできるよう全力で取り組みます。

また、観光の原点は、地域の人の「誇り」と県外から訪れる人の「憧れ」が重なり合い、それが循環・継続していくことにあり、知事就任以来、プレミアム感等も演出しながら、本県が誇る歴史的・文化的建造物や自然景観などの資源を有効活用することにこだわって、観光集客イベントの実施等に取り組んできたところです。

昨年4月から約7か月間にわたって開催した東予東部圏域振興イベント「えひめさんさん物語」では約81万人が参加するなど西日本最高峰の石鎚山をはじめとした当圏域の観光ポテンシャルを引き出すことに成功したほか、2021年には、西日本豪雨災害からの創造的復興を目指す南予地域での復興イベント開催により、復興半ばの被災地を元気づけたいと考えています。

今後も、愛媛DMOとも連携しながら、コト消費を重視した観光資源の磨き上げと観光ブランドを繋いだ流動促進に取り組み、更なる国内外からの観光客誘致による観光振興につなげていきたいと考えています。

オール愛媛の体制で
「スポーツ立県えひめ」を実現へ

――スポーツ振興への施策や各種競技大会・スポーツイベントを契機とした地域の活性化策について、お聞かせください。

中村 本県には、愛媛FC、愛媛マンダリンパイレーツ、愛媛オレンジバイキングスのほか、今シーズンからJ3に昇格するFC今治を加えた4つのプロスポーツ球団が存在しており、中四国で唯一、同一県内にJリーグクラブを2チーム有する県となりました。

プロスポーツは、子ども達に夢や感動を与えるとともに、地域イメージの向上やスポーツへの参画意識の高揚、試合開催に伴う経済効果など、地域振興やスポーツ振興に果たす役割が大きいため、4つのプロスポーツ球団を有効活用し、これまで以上に交流人口の拡大や地域の活性化に取り組んでいきます。

また、2018年度から「愛・野球博」に取り組んできた結果、本県の熱い思いを野球界に受け止めていただき、愛・野球博の一環として、7月にはプロ野球フレッシュオールスターゲーム、8月には東京六大学野球オールスターゲームの誘致に成功したほか、12月には、本県独自の大規模野球イベント「愛媛ベースボールEXPO」を開催する予定です。今後も野球イベントの開催等を通じて、野球の普及と振興を加速させるとともに、先人が築き上げてきた本県の野球文化の継承に努めていきたいと考えています。

さらに9月には、シニアの国体と呼ばれる「日本スポーツマスターズ愛媛大会」が県内16市町で開催されます。選手・監督等が約8000人、関連スポーツイベントを含めると約1万5000人の参加が見込まれる大規模な全国大会のため、えひめ国体のレガシーを活用した大会運営はもとより、愛媛らしさあふれる心のこもったおもてなしにより、愛媛ファン獲得に努めたいと考えています。

愛媛県は2018年度から、全国初の「野球」をテーマとしたスポーツ・文化両面にわたるイベント等を行う「愛・野球博」を開催。数々の大会を誘致し、地域の活性化につなげている

このほか、10月には、高速道路や瀬戸内の美しい島々を舞台に、国内外から約3500名が参加する「サイクリングしまなみ」が開催されるなど、今年1年、様々なスポーツイベントが県内各地で実施され、県内が再びスポーツの熱気に包まれることが期待されることから、市町や競技団体・支援企業等が緊密に連携したオール愛媛の体制で「スポーツ立県えひめ」の実現に取り組んでいきたいと考えています。

長期的な視野に立ち、
人口減少対策の取組みを加速

――2019年度までの第1期「総合戦略」の成果をどのように評価されているかについて、お聞かせください。また、第2期「総合戦略」の方向性や、これから力を入れたい取組みについて、お聞かせください。

中村 全国より早く少子高齢化が進む本県では、人口減少対策を県政の重要課題と位置付け、2015年に策定した第1期県版総合戦略のもと、結婚や子育て環境の充実による出生率の向上、就労の場の確保や移住促進による社会減の抑制など、様々な視点から積極的な取組みを推進しています。

この内、出生率に関しては、ビッグデータを活用した結婚支援や、地元企業とタイアップした紙おむつの無料支給などに取り組み、本県の合計特殊出生率は、2014年の1.50から2018年は1.55と上昇傾向にあります。

また、移住者誘致についても、コンシェルジュの設置や本県単独の移住フェアの開催、他県の水準を上回る住宅改修支援など、積極的な取組みが奏功し、2018年度の県内への移住者が1715人と過去最高を記録するなど、徐々に成果が現れ始めているものの、ここ数年の本県の人口は、毎年ほぼ県内人口の1%弱に当たる約1万2000人が減少するなど、依然厳しい状況に変わりはありません。

このような中、県では、第1期の取組みの検証を踏まえ、「継続は力なり」という基本姿勢のもと、人口減少対策の取組みを更に加速させるため、2020年度から2022度までの3年間を期間とする第2期総合戦略を策定しました。

第2期戦略では、

❶ 深刻化する労働力不足や生産性の向上などの諸課題に対応し、地域社会を持続的な発展に導いていくため、「デジタルシフトへの迅速かつ的確な対処」を掲げるとともに

❷ 東京一極集中等に歯止めがかからない中、地方移住のきっかけとなる「関係人口の創出・拡大」や

❸ 経済・社会・環境を巡る広範な課題に統合的に対応することで、政策全体の最適化と地域課題解決の加速化を図るための「SDGs(持続可能な開発目標)の推進」

の3つを新たな視点として取り入れました。

第2期の新たな施策として、県内企業の5Gなど次世代通信技術関連産業への参入促進や「えひめジョブチャレンジU-15」等のキャリア教育の充実、2019年8月に創設した官民共同の「子どもの愛顔応援ファンド」による子どもの居場所づくり、貧困・不登校支援や子ども医療費無償化の取組みの底上げなどに取り組みますが、人口減少は全国的な課題であり、息の長い取組みが必要であることから、長期的な視野に立ち、県内人口の減少に歯止めをかけるための取組みを、粘り強く進めて参ります。

安心して暮らしていける
「愛顔あふれる愛媛県」を目指す

――長期計画「愛媛の未来づくりプラン」で掲げる県の将来像や、その実現に向けた意気込みについて、お聞かせください。

中村 今日、我が国が直面する急速な人口減少や、それに伴う経済・産業活動の停滞、頻発する大規模自然災害等の問題は、本県においても、地域社会の存立に関わる極めて深刻な課題であり、県政の舵取りを担う者として、これらの困難に真正面から向き合い克服していくため、人口減少対策や地域経済の活性化、防災減災対策を県政の重要な柱として位置付け、地域のポテンシャルを活かした実効性のある独自施策を積極的に展開しているところです。

また昨今、急激な進化を続けるデジタル化への対応や、人類の脅威ともなっている新たな感染症の拡大等、県民の暮らしや経済に大きな影響を及ぼす新たな課題も顕在化する中、県民一人ひとりの前向きな気持ちと思いやりの心を結集し、共に力を合わせて困難を克服することで、誰もが将来にわたって安心して暮らしていける「愛顔あふれる愛媛県」を実現することが、本県が追い求めるべき将来の姿と考えています。

このような思いのもと、まず最優先の課題である西日本豪雨災害からの創造的復興に、引き続き私自身が先頭に立って全力で取り組むとともに、地域社会に大きな変革をもたらすデジタル技術について、県民の幅広い層がメリットを享受できるよう、様々な分野で社会の変化を先取りした実効性のある施策を展開する他、新型コロナウイルスへの対応についても、関係機関との連携のもと、県民の安全・安心の確保に万全を尽くすなど、直面する重要課題にも、現場の感覚を大切に、スピード感を持って取り組むこととしています。

また、地方が様々な地域課題に責任と覚悟を持って向き合える体制を確固なものとするため、国に対し、真の地方分権改革の実現を強く働きかけると同時に、県自らも、職員の意識改革など不断の努力を通じて政策立案型行政への転換を図るとともに、本県の強みである「チーム愛媛」や「オール愛媛」の体制をより強固なものとすることで、様々な困難にも打ち勝てる活力と希望あふれるふるさと愛媛づくりに果敢にチャレンジしていきます。

(※掲載している内容は、取材(3月下旬)時点のものです。)

 

中村 時広(なかむら・ときひろ)
愛媛県知事

 

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